表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第三章 異世界で子爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
797/810

第794話 作戦成就のために

 ちょっと困ったのが……。


『まま、どこいくの? いっしょにいくの!!』


『さんぽたいき!!』


 タロとヒメの二匹の処遇だ。本当は馬車で帰ってもらおうかと思っていたのだが、最近ちょっと忙しくてあまり構えなかったのが裏目に出たのか、ひしっとしがみ付いてくぅんくぅん鳴いている。

 もう体長も大人並みなので立ち上がると、肩に顎が乗る。前足と顎を肩にかけて、ふんすふんすともみあげに鼻を当てながら、哀願染みた声を上げる二匹に皆も苦笑を浮かべている。


「あの……」


 竜の一人が手を上げる。


「風で覆いますので、きちんと縛ってもらえれば大丈夫だと思います。落ちても風で拾えますし」


 その言葉に、リズを顔を見合わせてうーんと悩む。ヒメはともかくタロは好奇心旺盛だ。空中でダイブとかやられると心臓に悪い。でも、両肩に乗る重さに諦めて同行を決める。


「じゃあ、皆、準備よろしく!!」


 掛け声と共に、皆がそれぞれの目的地に散らばった。



 日が明けて、まだ間もない時刻。太陽はフェイゼルの町の果てからやっと顔を出した程度。徐々に白み始めた空を横目に見つつ、ユーサルと強い握手を交わす。


「慌ただしい出立で申し訳ないです」


「いや、国の問題とは言え折角の機会に恐縮だ。しかし、本当にその軽装で先行するのか?」


 私とリズの跨る筈の馬に乗せた荷物は最低限。どう考えても『リザティア』まで走破出来る量じゃない。


「途中で狩りもしますし、水は……」


 ぱちりと指を鳴らし、面前に水の塊を浮かべ、ぽとりと落とす。


「魔術でどうにか出来ます」


 私の言葉に微笑んだユーサルがそっと抱き着き、離れる。


「また、騒動が済めば懲りずに訪問して欲しい」


 笑顔のユーサルに見送られながら、私達は出立する。馬車も同行させているが、これは途中までの見送りという形になっている。

 三十分程馬を走らせ、路肩に止まった。ここまでくれば、飛び立っても町からは見えない。


「じゃあ、お願い出来るかな」


 馬車に乗っていた竜達にお願いし、竜身を顕現してもらう。馬車から荷物を運び出し、リズの乗る竜に縛り付ける。私の方は……。


『ふぉ。ふわってしたの』


『かんきんちょーきょー?』


 ヒメはどこにアクセスしているのか。まぁ、タロとヒメを詰めた木箱をしっかり竜に括りつけた。


「じゃあ、後は頼むね。『リザティア』の方は何とかしておくから」


 馬車に乗った仲間達に告げ、竜に跨る。

 仲間達の声に後押しされるように、ふわっと竜達がゆっくりと舞い上がる。そのまま一気に高度を上げて、一路『リザティア』に向かって飛び出した。


『ふぉ、ふしぎなにおい。ふわふわするの!!』


『ようとう……ふらふら……』


 箱の隙間から鼻を突き出した二匹が、くんくんと空の空気を浴びながら好き勝手な事を考えている。流石に四時間も閉じ込めるのは可哀そうなので、蓋を開けると仲良く顔をぴょこっと出す。


『ままなの!! ふぉ、へんなの? くんくん!! へんなの!!』


『ちゅういじゅうよう』


 飛び出さないように手を当てていると、にじにじ避けて二匹が箱から出て、こちらに寄ってくる。個人的には怖いので体を縛り付けているが、二匹にとっては普通の足場なのだろう。怖いもの知らずだ。


『りゅうなの。ふぉ、つちないの? くんくん、ふしぎ』


 タロがてしてしと竜の背中を叩き、ヒメは私の体の腹側に潜り込んで丸まる。パニックを起こすかと思ったが、案外冷静だ。


 そんな感じで、一時間程度ごとに休憩を取り、『リザティア』に急行する事になった。

 ちなみに、慣れた段階で箱を開けたまま飛び立ってみたのだが……。


『ふぉ、びゅーなの!! はやいの!!』


『くうちゅうゆうえい!!』


 人間よりも豪儀だなと、改めて感心した。


『見えてきました!!』


 最後の休憩を終え、一時間が経とうとする頃、見覚えのある道が見えてきたと思ったら、竜から念話が入る。眼下に小さく見える、升目と五芒星。

 多くの敵を屠らんと……守るべき民の安寧の証のために。『リザティア』よ、私は帰ってきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブックマーク、感想、評価を頂きまして、ありがとうございます。孤独な作品作成の中で皆様の思いが指針となり、モチベーション維持となっております。これからも末永いお付き合いのほど宜しくお願い申し上げます。 twitterでつぶやいて下さる方もいらっしゃるのでアカウント(@n0885dc)を作りました。もしよろしければそちらでもコンタクトして下さい。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ