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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第三章 異世界で子爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第793話 竜の助力をここで止める理由

「想定される兵数は?」


 ノーウェが生半な情報でこんな重要内容を送ってくるとは思えない。根拠があるはずだ。


「南西部より発した部隊が西部の保守派所領を通過するごとに増えているとの事です。現状での最終予測は……」


 詳細を確認しているのか、竜の子が黙る。部屋に落ちる重い沈黙を裂くようにぽつりと報告が上がる。


「二千超。その辺りが補給の限界のようです」


 その言葉に、ロットはじめ部隊を率いている皆が天井を見上げ、溜息を吐く。


「彼我の戦力差は五倍か……」


 勝ち負けでいえば間違いなく勝てるが、負傷者、死者が出そうな比率だ。溜息も吐きたくなる。


「ロスティー様の判断は?」


「少々お待ちを……」


 すぐにロットが主軸になって、迎撃を想定した議論が始まる。会戦は無謀。防衛戦それもクロスボウを中心とした塹壕戦に話が落ち着きそうなのは流石と考える。


「まだ確実な話ではないとの事ですが……」


 少し首を傾げながら、竜の子が報告をしてくれる。


「今回の構成に斥候を組み込んでいないとの事です。よって王家側の統制外の勢力と判断しても良い。現在国王との会談中だが……」


 そこで報告を切って、息を吸い込む。肩で吸い込む感じがちょっと可愛い。


「最終的には保守勢力を反乱として認定。鎮圧を命ずる方針だという事です」


 その言葉に、私は即座に立ち上がる。国を分ける戦いとなるなら、時間との勝負だ。


「ここからノーウェティスカまでの所要時間はどの程度かな?」


 竜の子達が顔を見合わせてもにょもにょ相談する。


「四時間弱です」


 その答えに、私は皆を見つめる。


「ここからは竜に頼るのは厳しい。人間同士の戦いだからだ」


 私の言葉に、皆が深く頷く。


「私と……」


 じっと内包した熱を抱えた皆の瞳を見渡す。


「リズは先に『リザティア』に戻る。竜の皆さんを群れに返す名目での行動だ。ここまでは了承して欲しい」


 その言葉に、竜の二人がこくりと頷く。


「リズに関しては、私に何かあった場合の全権委任者になる。そのため、必ず『リザティア』にいてもらう必要がある」


 少し迷った様子のリズが、何かを決したように力強く頷く。


「一旦軍司令に関しては、ガディウスに任せる。皆に関しては馬車で『リザティア』に急行して欲しい」


 その言葉に、不満げなフィアをロットが宥める。


「各部隊への指示を預かってもらえますか?」


 ロットの言葉に、頷きを返すと渋々と言った感じでフィアも引き下がる。自分が手塩にかけて育てた兵達だ。気になるのだろう。


「どんなに急いでも西の果てから進軍してくるんだ。しかも最終的には二千からの兵士。間違いなく二週間以上はかかる」


 その言葉に、ティルトが保証するように頷く。


「皆の出番は戻ってからだよ。それまでに準備と名目立てだけはきちんとしておく。だから……」


 ふぅっと息を吐いて、姿勢を正す。


「無事に『リザティア』まで戻る事。そして、『リザティア』を守るべく共に戦って欲しい!!」


 皆が歓声を上げる中、ティルトを呼ぶ。


「すまないが、このまま出張をお願いしたいのだけど……」


「と、仰りますと?」


「ワラニカの内乱の欺瞞化、そして経済侵略の生地作りをお願いしたい」


 そう告げて、持ち帰りの荷物の箱から二、三を選んで差し出す。それと皮袋を一つ開け、ざらりと金貨をテーブルに開ける。


「やりたいようにやっていい。切り取り放題だよ」


 その言葉に、ティルトが破顔する。


「戦績は残せませんが、こちらも重要ですね。委細承知しました。ご武運を!!」


 その言葉に頷きを返し、リズと一緒に荷物をまとめ始めた。ユーサルに挨拶だけして、私とリズは早馬で帰った体にしないと駄目だし……と色々考えていると、リズと目が合う。


「きっと大丈夫。だから、守りましょう、皆を」


 リズが告げた瞬間、皆の視線が私に集まる。


「そりゃそうさ。皆が帰る場所を、『リザティア』は、私が守る」


 さぁ、三千世界の烏を落とす時が来た。リズとの朝湯を守るため、私は私の意志で人を、二千からの意志を殺す。だけど、それは……。


 そう思いながら、皆の顔を見渡す。誰もが、少しの不安と私達を送り出すための笑顔を浮かべている。


 この笑顔を守るためだ。そう心に決めて、旅立ちの準備を進めた。


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