第792話 良くない知らせ
ふわっと目が覚めると、横ではふはふするものありけり。
目を開くと、タロとヒメがベッドの横でお座りしてはふはふしていた。どうも慣れない環境で早く目が覚めてしまったようだ。
『まま、あそぶの!! まだかな』
『おすわりたいき!!』
緩やかに揺れるしっぽを眺め、ベッドを降りそっと頭を撫でると嬉しそうに前足で抱き着いてくる。体重もずっしりして、もう大人だ。腰に来る。
『待ってて。ご飯を用意するから』
そう伝えて、ダイニングに向かい、呼び鈴を振る。すぐに扉から御用聞きの旨が返ってきたので、タロとヒメの食事をお願いする。
ふわぁと欠伸を一つ。木窓を開けると朝日が顔を出し始めているタイミングだった。木々の緑と紅葉のコントラストが美しく、少し早い秋を感じさせる。随分と北に来たんだなと改めて理解する。
ノックの音に扉を開けると、皿に盛られた肉と骨。匂いを嗅ぎつけたのかててーっと二匹がダイニングに現れる。
待て良しで上げて、寝室に戻りリズを起こす。昨晩は少し暑かったのか、寝崩れた姿も可愛らしい。片方の肩をちらりと覗かせながら上体を起こした。
「ふわぁ。おはよう、ヒロ。むー、やっぱり体が重いー」
ぐりぐりと首を回し、腰を捻って、ぱたりと倒れながらリズが呟く。
「重いよね、布団」
「うー、『リザティア』が恋しい……」
同意しながら、朝の準備を進める。
侍女に先導され食堂に向かう。見慣れない廊下だったので昨日とはまた別の部屋なのだろう。そう考えていると立派な観音扉の前に到着する。
開かれた部屋はそこそこの大きさの広間だったが、夕食の豪奢な場とは違い落ち着いた雰囲気だ。朝からけばけばしいのは辛かったのでありがたい。
テーブルには皆が着いていて、後はユーサル達を残すのみだった。
「おはよう、昨日はよく眠れたかな」
私達がテーブルに着いたのを見計らったかのように扉が開き、ユーサル夫妻が入ってくる。
朝の挨拶を交わし、食事を始める。ワラニカと違い、朝は質素なのかパンと主菜、それにサラダといった内容だ。ただ、品質は高く非常に満足出来た。特に牛乳の味は濃厚で癖が無く、驚きを感じたほどだった。
「書面は完成したよ。国交文書になるから王都にて捺印後、届けるようにする」
食事が終わって書斎に連れ立った私とリズは昨日決まった内容が書面に記載されているかを確認し、ユーサルに微笑みかけた。
「内容は問題ありません。今後の友好と通商を期待します」
「こちらこそだ」
お互いに頷き合い、握手を交わし、今後を旅程を話題に話をしようとした時だった。
慌ただしいノックの音が部屋に響く。領主間の会談を中断させる内容とはと思いながら、ユーサルが扉の前で誰何するのを見守る。
初めは強い口調で怒りを露わにしていたユーサルが戸惑い、悩むような態度に変わっていくのが見えた。
「問題が無ければお伺いしたいのですが、何か起こったのですか?」
再度ソファーに戻ってきたユーサルに尋ねる。その表情は困惑に彩られていた。
「北部の都市が三か所、オークに攻められている……。劣勢との情報が王都から入ってきた」
その言葉に、私達も驚く。殆ど自分達には関係ないという感じでオークの件に関わっていたダブティアが劣勢と判断する程に押し込まれる。何があったのかと……。
「詳細はまだ入っていないが、後詰の依頼が来ている。国内の巡遊を予定していたと思うが……」
申し訳なさそうな表情のユーサル。
「今は時期が悪い。改めての機会にされるのが良いかと考える」
そう言い残すと謝辞の後、会談の切り上げを告げた。
「ふむ。オークか……。厄介なものだな」
改めて私の部屋に皆で集まり、今後の方針を決める事にした。折角ここまで来たのだが、ダブティア巡りはまたの機会になりそうだ。
「出来るならば、協力をしたいとも考えますが……」
ロットの言葉に、ティルト達が渋い顔を見せる。
「ずるずると巻き込まれる形になるのも辛いね。一旦ロスティー様達と相談して、ワラニカとしてどういう支援をするべきか調整しよう」
そんな話をしている時だった。
ノックの後に誰何の暇も無く扉が開く。入ってきたのは竜の皆。どうしたのかと私が目を丸くしていると、きっと決心したように口を開く。
「定時の連絡が入りました」
その言葉に、皆が目を向ける。いつも異常無しだったが、この様子は何だろう。
「ノーウェ様より伝令。西部保守派の領より進軍を確認したとの事です」
「……目的地は?」
「『リザティア』です」
その言葉に、私は溜息を一つ。額を覆って、俯くしかなかった。
リハビリ期間に、新作を投稿しております。
■TRPGみたいな世界で僕は運命のダイスを振り続ける!
テーブルトークRPG好きには堪らないかと思います。
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