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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第三章 異世界で子爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第780話 一般的な兵の考え方

 ほわほわとリズの唇の感触を思い出しながら、夜警の兵と静かに話をする。先程までは王都で近衛をやっていた経験者で、引退と共にノーウェ領に士官として入ってそのままこちらに移籍してくれた人だった。

 経験も豊富で、王都の美味しいお店やノーウティスカの遊ぶ場所なんかを面白おかしく教えてくれて、時間が経つのも忘れていた。

 次の番は『リザティア』で募集をした新人だ。ただ新人といっても、地獄の訓練を抜けてきた猛者だし、元々それなりに有名な冒険者のグループでリーダーをしていた人材らしい。


「私も元々は冒険者だし、今でも資格は失っていないけど。実際に冒険者から兵に変わる心境ってどうなのだろう」


 私の言葉に、若干緊張した二十代前半の男性が軽く瞑目し、言葉を紡ぐ。


「元々、結婚を考え始めたのがきっかけっすね……。ダチも商家に入ったり、農家を継いだり。それなりに自分の人生を見つめて、先を探ってたみたいっすから」


 それを聞いた私はぽんっと焚火に細い枝を投げ込む。


「結婚かぁ……。給料に関しては他より良いというのは自負しているけど、奥さんは反対しなかった?」


 その言葉に、照れくさそうに、軽くはにかむ。


「いや、金払いが良いのはやっぱり重要っすよ? あいつも少し悩んでたみたいっすけど、この世の中、命の危険の無い仕事なんて無いっすから。町の中だけで生活出来るような身分なら良いっすけど、そんなん一部っしょ。今からじゃ商隊に入ったり、開拓村に行ったりの仕事しか無いっすから。それじゃあ、兵でも一緒じゃんって感じっすね」


 その言葉に、この世界の命の軽さと、それでも人生を謳歌しようとする強かさを感じて、少しだけ今日の出来事で刺さった心のとげが小さくなる。


「村人というなら、『フィア』っていう手もあったと思うけど……」


「あぁ、駄目っす。あいつから、絶対浮気するから人魚とか無しって言われたっす」


 その言葉に、目を丸くして噴き出すと、彼も釣られるように笑い出す。そんなこんなで楽しく話をしていると、ロッサが出てきて交代となる。


 そっと起こさないようにリズが眠っているテントに入り、毛布に包まる。ある程度温もってからリズの毛布に潜り込むと、高い体温を感じる。その温かさに心が温まりそうだなと思いながら、くわっとあくびを一つ。そのまま眠りについた。



 明けて朝から、旅路は順調だった。大きな盗賊がいる地域を通ったためか、盗賊も襲ってこなくなった。


「『警戒』には引っ掛かりますが……。散らばって遠巻きに見ている感じでしょうね。襲われて既に金目の物を盗られたと思っているのかも知れませんが……」


 レイの言葉に、盗賊も色々生活が懸かっているんだなと、乾いた笑いしか浮かばない。

 レギーも特に何も報告は無いようだ。ラーズの高度ではばらばらの人間では見分けがつかないようだ。


「このまま深入りして掃除をしても、いたちごっこになりそうだし。帰ってから、討伐隊を出す事にしようか。ユチェニカ伯爵側とも協議が必要だろうし」


 私がそう告げると、皆も銘々に頷く。別に血に飢えているわけではないので、積極的に襲いたい訳ではない。ただ、手を出された場合は全力で対処すると方針を決めて、先を急ぐ。


 旅程の方は予定よりも早まり、一日弱の余裕をもって、ダブティア側へ入った。このまま森まで一日、そこから三日も移動すればユチェニカ伯爵の領都のフェイゼルだ。



 ちなみに、馬車の中の生活に関して人間も竜も困っていないのだが、若干困ったのがタロとヒメだ。


「食っちゃ寝している……」


 日頃だとアンジェに連れられて運動をしているのだけど、移動中は中々運動出来ない。外に出して馬車を追わしてもいいのだけど、馬が怖がりそうなので止めた。どちらも変な怪我をしたら嫌だし。


 という訳で。


『うでー。おなかすいたの。それか、あそぶの!!』


『ゆうぎ!!』


 ストレスを溜めた二匹に襲撃される毎日であった。ちなみに、ちょっと横腹がぷにぷにし始めたので、食べさせる量を減らさないと。夕方に少しでもと運動はさせているけど、獲物の残りとか勿体無いとあげていたら、いつの間にかメタボになっていそうだ。


『ふぉ!! ほねなの。はむはむ』


『かむうんどう!!』


 取りあえず身ではなく、骨を多めに上げる事にしたけど、今度は結石が怖いなと。リズにそんな話をしてたら笑われた。まぁ、自分の体形も維持出来ない人間ですよっと。


『ままといっしょ、おおいの』


『しふくのひととき』


 今日も今日とて二匹がぺとりとおしりを仕事をしている私の膝にくっ付けて、うたた寝をしながら、ひゃふひゃふわふわふと楽し気に話し合っていた。

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