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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第三章 異世界で子爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第771話 海に到着しました

 天気も秋らしく穏やかで仮に雲が出ても薄曇り程度だ。こんな抜けるような青空の下なら竜さん達に乗るのも楽しいだろう。

 当初は竜さん達にピストン輸送で運んでもらおうかという話も出たのだが、結局は止めた。学校に通う竜さん達がキラキラと楽しそうだったし、緊急の時以外に利用すると堕落しそうな気がした。


 でも東に訪問する際には連絡要員として着いてきてもらう手筈になっている。こちらのエゴで申し訳ないなとは思うが。


「ふふ。遠出も久しぶりやから、楽しいです」


 チャットがぽふっと窓から顔を出して外を眺めながら叫ぶ。

 最近は学校に通い詰めていたから、どこか羽根を伸ばしているようにも見える。


「学校の方はどうかな?」


 戻ってきたチャットに聞くと、居住まいを正す。ちょっと子供みたいで恥ずかしかったようだ。


「楽しいですよ。研究の方も進んでますし。子供達も可愛いです」


 にこにこと微笑む。


「研究と言えば、あれの状況ってどうかな?」


 永遠に灯り続ける灯りや風を吹き続ける送風機、水を生み続ける水筒など実用化出来るなら、実用化したい。


「あきません。成功例はありません。誰がやっても、枯渇します。あんなに省力化出来るんはリーダーだけです」


 チャットが残念そうに(かぶり)を振る。それは残念だ。あれが実現化するなら、水魔術士の苦労がぐっと減るし、従軍に必要な数も減るのに。


「私が延々作り続けるのは本末転倒だしね」


 私の言葉に、チャットが曖昧な苦笑を浮かべる。でも、もしもの時のために水筒だけは量産しておきたくはある。あれは地味に破格な物だ。



 最近はこのメンバーで揃って何かをする機会も少なくなっていたので、馬車の中は寛いだ雰囲気になっている。

 タロとヒメは最近アンジェに任せきりになっていたけど、久々にずっと一緒と言う事で興奮しきりだ。今は二匹とも落ち着いて、膝に頭を乗せて居眠り中だ。

 ロッサは明るい表情でリズと一緒にリバーシで遊んでいるし、ロット達はトランプに興じている。ティアナがいないのが少し寂しいなと思いながら、感傷かと手元の書類に目を向けなおす。


 旅程は順調そのもので、予定より若干早く海まで到着した。道の整備も進んだし、地味に馬車も改良されている。日進月歩だなとつくづく実感する。



「ふわぁ、やっぱり暖かい。というか、暑い!!」


 フィアが叫ぶと、皆が上着を脱いで薄着になる。体感では真夏よりも少し温度が低い程度だが、秋が深まりつつある場所から移動してくると覿面に暑さを実感する。

 馬車で『フィア』の方に近づくと、リゾートホテルの外観が見え始める。リゾート地らしく白を基調にした作りになっているが、南国らしい青空とマッチして美しい。雲と混じり合って、雰囲気の良い景観を作り出している。


「もう少しでオープンか。台風の時はどうなるかと思ったけど」


 寒くなってから、常夏を味わってもらうというのがコンセプトだ。ロスティーはともかく、ノーウェは爆笑するだろうなと。

 緩やかな常足(なみあし)で馬車はゆっくりと『フィア』に入る。


 暫く進むと、村長達が揃って待っていてくれた。鳩で訪問は伝えてある。


「お久しぶりです。領主様」


「お世話になります。ベルヘミアもお元気そうで」


「領主様もお変わりないようで良かったです」


 にこにこと微笑む人魚さん達。パートナーが増えている人が着々と増えているようだけど、ポリミリアもガディミナも含めて結婚はまだだ。色々気を遣われている気もする。


 久々に遠出と言う事で、ここでも野営の感覚を取り戻そうとテントをさっさと張って拠点化する。皆でわらわらと作業していると、タロ、そしてヒメがワフワフウォフウォフと嬉しそうに鳴きはじめる。くいっと頭を上げて遠くを見つめると、見慣れたフォルムがのっしのしと歩いて向かってくる。後ろからはぴょんぴょんと子供達が楽しそうに付いている。


「あぁ、虎さんも久々だね」


 くんくんとこちらを嗅いできた虎さんが、大興奮の二匹とじゃれはじめる。べろんと舐められると、もう嬉ションせんばかりの勢いで飛びついている。

 そんなタロとヒメも子供達にはマスコットだ。


「おおかみ!!」


「たろとひめだー!!」


 子供達に集られて、もう、ヘヴン状態になっている。はふはふが止まらない。


 私とリズは一緒にまずはご挨拶と、浜辺の海水プールに向かう。そこでは井戸端会議ならぬプール端会議をしている人魚の皆さんがいる。プールを覗くと、新しく生まれた子供達を含めて、元気よく泳いでいる。


「うわぁ。数が増えましたね。可愛い」


 手を差し入れると、やっぱり興味深そうに眺めてから、しがみ付いてくる。わらわらと寄ってくると、ドクターフィッシュみたいでちょっと可愛い。リズもくすぐったくてひゃーひゃー言いながら手を差し入れている。


「病気などは大丈夫ですか?」


 奥様方に話をしてみるが、至って元気なようだ。台風の時はちょっと大変だったみたいだが、男衆の頑張りに惚れ直したと惚気られる。

 ただ、子供の数が増えて増設したプールでも手狭になっているようなので、幾つかプールを増設しておく。


「りょーしゅさまだー!!」


「おいしいひと!!」


 と、色々していると、子供達が集まってきて、大騒ぎになる。やはり『フィア』は元気だなと。と、後ろから肩をとんとんと叩かれて振り返ると、(たお)やかな笑顔。ほぅっと目が覚めるような美貌だが、どこか記憶に残った顔だ。平坦な胸から、下に目線が移動すると、ぱおーんが。


「うわ……。えらく成長したね」


 この前まではまだまだ子供と思っていたけど、今は少し大人な雰囲気も出てきている。でも、出てきたのが色香というのはどういう事なんだろう。男の娘度は桁違いに上がっている。後、男性用の下着を開発してあげてほしい。


「運動しているの!!」


 細腕をふんすといった表情でみせつけてくるが、きめ細かな肌はキラキラ輝き、滑らかですらりとしたラインを強調しているだけだ。


「りょーしゅさま!! ぶーんやってー!!」


「ばしゃーん!!」


 わらわらと縋りつく子供達に引っ張られて、しょうがなく飛行遊具にクラスチェンジする。


「んじゃ、リズは先に戻る?」


「ううん。見てる。楽しそう」


 ぽすんと座り込んでニコニコしているリズを残して、子供達を抱きかかえる。後は延々沖まで飛んで放り込み続けた。明日、絶対筋肉痛だろうな。とほほ。

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