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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第三章 異世界で子爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第751話 収穫祭1日目 再会

「忙しいだろうに悪いね」


 久しぶりの笑顔。


「この期間は『リザティア』が主役だ。儂等の事は気にせずとも良いものを」


 若干の呆れを内包しながらも、温かな微笑み。


「ご無沙汰をしております。ロスティー様、ノーウェ様。お体は如何(いかが)ですか?」


 そう尋ねると、ぷふっとノーウェが噴き出す。


「君は本当に変わらないね。うん、父上も私も元気だよ」


 変わりない表情でノーウェが返してくる。


「テラクスタ様もご一緒かと思いましたが……。どうなさったのでしょうか?」


「あぁ、行きしなに鳩が着いたよ。収穫に手間取っているので、一日程遅れるそうだよ。あそこも農地を広げているでしょ? 収穫量が見積もりにくいみたいだね」


「うむ。ただ、今年は天候も良かったのか、どこも収穫量は良いと聞いておるしな。良い事だ」


 ロスティーのいう『どこ』の部分は、開明派の領地に限られそうな気もする。まぁ、何にせよ身内が問題無いようなら良かった。


「ペルティア様もラディア様もお加減は如何(いかが)です?」


 リズが尋ねると、二人の横に寄り添う女性達もにこりと微笑む。


「えぇ、快適でした。やはりここまで南に下ると本当に温かい。楽しんでいますよ」


 矍鑠(かくしゃく)と答えるペルティアの腕にラディアがそっと手を添える。


「お加減も良いようで。ふふ、『リザティア』に訪問出来ると、それはそれは楽しみにされていましたよ」


 ラディアの言葉に、私達も喜びが表情に出てしまう。


「前の頃はまだ少し肌寒かったでしょうが、この時期になれば露天風呂も暖か……暑いくらいです。火照った体を風に任せるというのも気持ちの良いものですよ」


 結婚式の頃は大事を取って露天風呂は様子を見ただけと聞いていた。晩夏ともなれば十分に過ごしやすいだろうし、楽しんでもらえればと思う。


「ふふ。楽しみねぇ。あぁ、そうよ、竜様はいらっしゃるかしら。ご挨拶だけでもと思うのだけど……」


 ペルティアが告げるのに合わせて、扉の前で待機していたベルフがすっと腰を曲げ、部屋を出ていく。カビアがいない間は執事長のベルフが傍に付いてくれる。


「少々お待ち下さい。アーシーネが学友と祭りを楽しむと言っていたので……。まだ出ていなければ良いですが……」


「あらあら、お友達も出来たのね。嬉しいわ……」


 ペルティアと話をしていると、部屋の外ががやがやとしてくる。目を向けると、フリルがついたワンピースを着込んだ天真爛漫な女の子達が現れる。竜達も学校生活に馴染んだのか、少しずつ人間らしい闊達さを身に着けている。もう、普通の女の子と変わりない。


「お久しぶりです。ペルティア公爵夫人」


 前回のロスティスカ行きの際に面識のあったブリューが目敏くペルティアを見つけて頭を下げると、ペルティアが跪き、こくりと(こうべ)を垂れる。


「ご無沙汰をしております、竜の方」


 ペルティアに合わせて、他の皆も跪こうとするが、ててっと駆けよったアーシーネがそっとペルティアの肩を抱き、立ち上がらせる。


「ばーば!!」


 ペルティアがこちらを確認するように目線を向けてくるので、こくりと首を振る。


「はい。ばーばですよ。アーシーネ」


「うはぁ!! ばーば、ばーば!!」


 満面の笑みを浮かべて、アーシーネがペルティアに抱きつく。ぐりぐりとお腹に頭を押し付けるアーシーネをペルティアが愛おしそうに抱き返し、撫で始める。


「あらあら。本当に。可愛らしくなって」


 その様子を見守るロスティーが破顔すると、竜達とロスティー達の会話が始まる。ロスティー夫妻にとっては曾孫もどきが目の前にいると言う事で、爺馬鹿な一面を見せている。退出の挨拶と共に竜達が出ていった後も上機嫌は続く。


「珍しいですね、そこまで表情をお見せになるのは」


 私が聞くと、ペルティアがふふと笑いながら口を開く。


「それはそうよ。貴方という孫が出来て、リズという孫が出来て、そして、貴方が慈しむ曾孫のような子が出来たのですもの……。会えるだけで嬉しいわ」


 そんな優しいゆるりとした時間を過ごしながら、久々の出会いと時間の間隙を埋め合わせていく。お茶を楽しみ時を忘れて話していると、ベルフから声がかかる。


「そろそろ昼食のご用意のお時間ですが」


 その言葉に合わせて、皆に向き直る。


「さて、話は尽きませんが、そろそろ『収穫祭』に向かいましょうか」


 そう告げると、皆が揃って立ち上がった。

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