↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者: 舞
第三章 異世界で子爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
748/810

第745話 お米一粒一粒に神様が宿っています

「うん。大分軽くなったし、音も軽くなった」


 稲掛けしていた稲を振ると、乾燥した藁がさらさらと、稲穂が少し重めのちらちらとさんざめくように鳴る。今日は九月の二十三日。稲の刈り入れから一週間が経過し、他の作物達も順調に収穫されている。小麦も既に税収分は徴収し終わっているし、後は刈り入れ分を農家の皆さんに配分するだけのところまで来ている。あと半分ほどだが大変な作業と言う事で、ここいらで小休憩の収穫祭を行う。この一週間は農作業と収穫祭の調整に明け暮れていた。


「リーダー、フェンドリクスさんから潰す牛の決裁がまだって、催促が来ているわよ」


「あぁ……。あぁ!? そうだ、現場を見て決めようと思ってたんだ。ありがとう、後で伝えるようにするよ」


 ティアナのジト目に苦笑を返しながら、稲掛けから束を下ろしていく。リズやティアナ、カビアと手分けして対応しているが、対外的な部分もあって優先順位がぐちゃぐちゃになった辺りからかなり忙殺されている。親と言う事でノーウェやロスティーが来るのは予想していたけど、ダブティア側まで表敬訪問をねじ込んでくるとは思っていなかったので、その対応でてんてこ舞いになっている。これが戦略的行動なら余程の狸だなと思うけど、嫁に行ったベティアスタ辺りが企んでいるような気がする。テラクスタも来ると言っていたので、絞ってもらったら良いのに。


「よっと。じゃあ、脱穀を済ませようか」


 麦と同じように足踏み脱穀機で籾を散らし、唐箕(とうみ)で藁やごみと分離していく。もう慣れた手つきで装置を動かす農家のお姉さんや娘さんを微笑ましく眺めながら、さらさらと唐箕から落ちる籾を眺める。


「ん。麦よりも……重いんだね」


 そっと横に寄り添いしゃがんだリズがさらりと掬った籾をくいくいと持ち上げながら呟く。


「そうだね。調理方法がちょっと違うけど、栄養価も高いし、少しずつ置き換えられたらって思う」


「ふふ。刈り入れの時からずっとお米、お米っていってたよね。どんな味なのかな……。んー、なんだろう……新しい家みたいな匂いがする……」


 そっと鼻を近付けて、籾の香りを嗅いだリズが小首を傾げながら言う。


「家……かぁ……。調理の時、慣れないとちょっと嫌な香りがするかもしれないけど、食べれば美味しいよ」


 そう呟き、立ち上がりながら頭を撫でる。唐箕の作業まで終わったら麻袋に籾を詰めていく。俵を作る事が出来れば良かったけど、ちょっと調べる気力が無かった。縄の結い方は分かるので、先に縄だけ作っておいて、日本に戻った時にでも調べようかなと思う。何はともあれ、これで稲藁をゲット出来た。麦藁は加工品やストローに使っていたけど、稲藁は縄や草履など色々使い道が多い。『フィア』用に草履を大量に作っても良いなと思いながら、麻袋を一つ担ぐ。


「これって、臼だよね。でも、木だと軽くないの?」


 リズが寸胴な木の塊を指さして言う。


「あぁ、これは木製で大丈夫」


 まだ木の香りがする木摺臼(きずりうす)。ネスと大工さん達と喧々諤々に議論しながら作った試作品だ。将来的には水車動力で自動回転にする予定だけど、今は手で回す。天井部分に麻袋からざらりと籾を注いで、ハンドルをぐるりぐるりとゆっくり回す。あまり早く回すと摩擦で熱を持つ。


「あ!! 出てきた。へぇ……殻の中は白いんだ……」


 ぷつりぷつりとした手応えを感じながら回していると、茶ばんだ玄米が少しずつ出てくる。


「まだこの状態だと美味しくないから、もう一工程だね」


 玄米のまま食べた方が栄養価としては良いのは分かっているが、糠を欲しいというのもある。やはり米と言ったら糠漬けが無いと悲しい。折角夏野菜もたっぷり収穫出来たし、秋野菜もこれからだ。一人暮らしの独身住まいといっても、糠床は自分で作って漬けていた。やはり、酸っぱ旨いお野菜を食べたい。


「麦に比べて、手間がかかるな。挽くだけならこの工程で終わりだろう?」


 ドルが交代してくれたので、速度を調整する。


「うーん、増粒数や調理の簡単さを考えると利点もあるんだ。保存性も高いし。まぁ、味を試してみてからね」


 炊いた米が食べられなくても、おじややパエリアなど色々試してみても良い。大麦が食べられるんだ、大丈夫だろうという気もしている。真剣な表情で仲間や農家の人が見守る中、もみすりが終わる。再度唐箕で籾殻を飛ばして精米となる。籾殻は火種として優秀なので、これも無駄にしない。後は米搗臼(こめつきうす)に注いでシーソーの端を踏む。米粒が砕けない程度の高さを調整しながら交代で気長に踏んでいく。


「ちょ……リーダー、これ、何気にきついー。超、足だるいー!!」


 交代したフィアが音を上げると、皆が微笑ましそうに笑いながら次は私、いや俺がという感じで交代していく。目新しい物に興味津々なのだろう。フィアには悪いけど、日頃使う筋肉とはまた別の筋肉なので辛いだろうなと。私も明日は筋肉痛で足が上がらない気がする。


「おぉぉ、白うなってきましたやん」


「本当……綺麗です」


 じーっと子供達と一緒に臼の中を覗き込んでいたチャットとロッサが声をあげる。どれどれと見に行くと、結構白くなってきている。力加減が分からないので少し弱めにしていたので、昼から夕方近くまでかけて精米していた事になる。


「じゃあ、もう暫く頑張ったら終わりと言う事で」


「えー!? まだやるの!?」


 フィアの声に皆が大爆笑を起こす。まぁ、自動化はするから今日は諦めて欲しい。その代り、夕ご飯は頑張るから。家に帰る前に牧場に行くのを思い出しながら、ふわりと広がる炊き立てのお米の香りを鼻の奥に幻臭として感じる。あぁ、白米だ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブックマーク、感想、評価を頂きまして、ありがとうございます。孤独な作品作成の中で皆様の思いが指針となり、モチベーション維持となっております。これからも末永いお付き合いのほど宜しくお願い申し上げます。 twitterでつぶやいて下さる方もいらっしゃるのでアカウント(@n0885dc)を作りました。もしよろしければそちらでもコンタクトして下さい。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。