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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第三章 異世界で子爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第739話 入学式当日

 吹っ飛ばされた後に、はふはふと顔を舐められたので、もう大きくなっているんだから注意しなさいと伝えると、タロがちょっとしょんぼりとする。その隙にちゃっかりとヒメが近付いてきて寄り添ってくるとタロも羨ましそうに視線で訴えてくる。


『タロもヒメも無茶はしちゃ駄目』


『しないの!!』


『じゅんしゅ!!』


 こくこくと頭を動かすので、よしと伝えると、塗れてくる。もうしょうがないかと脱力して、あるがままに任せる。ある程度遊ぶと興奮が冷めたのか、てーっとこちらを窺っていたアーシーネの方に戻る。


「アーシーネも明日から学校だから、あまり夜更かししたら駄目だよ」


「あい!!」


 このまま工場に預けていても良いかなと思っていたが、予想以上に吸収が早いので、学校の方に編入させる事にした。本人も、仲の良い友達が学校に入ると言う事で納得して楽しみにしている。筆記用具だけは各家での負担という事になっているが基本は石板に石筆という形だ。使い捨てるのに紙とインクでは負担が大きすぎる。石筆に関しては、ロスティー領でろう石が豊富にあるので安価に出回っている。耐熱煉瓦にも使われており、鉄鋼業がある程度成り立っているのもこれのお蔭らしい。

 ただ、純鉄を取り扱うにあたって現行の耐熱煉瓦では温度上昇に耐えられないケースがあるという話をネスから聞いているので、製造工程の見直しか新しい素材を探さないといけない。ワラニカの鉄鉱石はどうもリンを含まない鉄鉱石なのでろう石でも問題無かったけど、今後製鉄業を全体的に向上させるなら、煉瓦から見直さないと駄目かなとも考える。

 ぼへーっと座り込みながら二匹と戯れる幼女を眺めていると、そっとリズが背中から抱きしめてくれる。


「ふふ。ぼーっとしているよ」


「あぁ、ごめん。ネスに頼まれた事を少し考えていたんだ」


「扉のそばで座り込んで?」


 そう言われて、タッチダウンされたままだと気付き、立ち上がる。ソファーに落ち着いて、今日をリズと一緒に振り返る。話は学校の事になり、収穫祭の事となる。学校の方は取り敢えずオリエンテーションを済ませたら、まずは刈り入れの手伝いで集団意識の醸成を図るという方針で決まっている。元々、この辺りが曖昧なまま子供達が作業に駆り出される事が修学の妨げになっていたので緊急に人手が必要な春と秋には明示的に人手として採用しようという話でまとまった。きちんと働いた分の賃金も予算で用意している。この金額を家庭に還元させる事によって、教育資金や家庭維持に使ってもらえればと考えている。その内、国内国外の行き来がもう少し楽になったら、修学旅行とかも出来るようになりたいなとは考えている。まずは親元を離れると言う事で、『フィア』辺りへの旅行から始めようかな。

 そんな未来をリズと一緒に語っていると、正に明日から学校に入るアーシーネがキラキラした瞳で未来を想像してワクワクした表情を浮かべている。二匹も大人しくアーシーネの横で伏せて聞いてますよという顔ではふっと欠伸をしたりしている。


「がっこう、たのしそう!!」


 随分と活舌も良くなってきたなと思い、リズと一緒に優しいものを眺める目で見つめてしまう。他の竜の人もローテーションで編入する事にはなっているので、その辺りの情報共有もしてくれるそうだ。

 そんな緩やかな時間を過ごしていると、食事の旨を伝えられ、夕ご飯、お風呂、就寝と流れるように進んでいく。今日もお疲れ様でしたと言う事でぱたりと寝込む事にする。思ったよりも話し合いで疲れていたのか、すっと解けるように思考は拡散していった。


 目を覚ますと、肩こりが減っていて、思った以上にストレスを感じていたのだなと苦笑してしまう。ふわと周りを見渡すと、夜風に冷えたのか布に包まって幸せそうな表情を浮かべるリズと寄り添うタロとヒメの姿が確認出来る。窓を大きく開くとまだ夜明け前の清冽な風が横を通り過ぎる。日本の熱帯夜から考えるとやっぱり段違いに過ごしやすいなと窓の外を眺める。猫さん達が朝ご飯を求めてか、集まり始めているのが『警戒』で確認すると分かる。年若い子猫が茂みから出て遊んでいると、お母さんがしゅたっと現れ、ぱくっひょいっという感じで茂みの中に隠すのが野生可愛い。九月一日は晴れ。絶好の入学式日和だ。

 二匹の食事を済ませて、私達も食事となる。今日はいつもより少し早め。チャットとティアナ、カビア、レイが入学式に、他の皆はそれぞれの職場に散っていく。私はリズと一緒にアーシーネを間に挟んで、チャット達と一緒に新校舎に向かう。

 軍学校は南門の方に、魔術学校は中央に建設した。倉庫街の南側に大きな広場を作ったので、そこを運動場とする。軍学校の方が運動の機会が多いので、南側に建てた形になる。逆に魔術学校はイメージ先行だし、習熟度が上がるまではそんなに大きな場所を必要としない。それに、イメージを固めるために色々な場所を訪れる機会が多いので、中央に建てたという形だ。

 軍学校の方の入学式は昼からなので、先に魔術学校の入学式となる。幼年組は学習共通なのでこちらの入学式が先だ。私達の間で、ぴょーんぴょーんと跳ねながら楽しそうに進むアーシーネを他の竜さん達が微笑ましそうに眺めているのが印象的だった。さて、頑張って挨拶をしないとね。

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