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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第三章 異世界で子爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第733話 鉄は熱いうちに打つ方が良いです

「枝条架の撤去は予定通り完遂しました。新規案件では、港の桟橋における横板の撤去及び人魚用突端設備の補助までは時間内でした」


 あぁ。桟橋の件は意識から漏れていた。まだ船が手に入っていないので重要性が頭の中で咀嚼出来ていなかったようだ。横板を固定したままだと、基礎に悪影響が出るかもしれない。海の人間は経験則で分かっていたのかな。


「時間の定義は何かな?」


「風雨が強まるまで……です。最終的には、屋外に出た場合は吹き飛ばされる程の風量と、伸ばした手の先が見えない程の雨の量でしたので」


 海で蒸発した水分をたっぷり蓄えた台風が上陸したてだ。それは雨は酷かっただろう。


「被害は皆無かな?」


「大きな影響はありません。小さな部分で言えば、サトウキビの一部に被害が出ておりますが、農家の方曰く時期的に伸びすぎた物が倒れただけであり、きちんと処理すればまたそのまま伸びるとの事でした」


「製塩所の方は問題無かったかな?」


 そう問うと、チャットが口を開く。


「海が荒れたために逆流、一部冠水があったゆう事ですが、主要設備は土嚢で防御してたんで現状では運転を再開しています。それを見届けたんで、帰還したんです」


 そこまでを告げると、皆が頷く。素晴らしい。『フィア』の最重要設備が何か、全員が理解している。あそこが生きている限り、『リザティア』は無限の金を産めるのだから。


「冠水が発生したと言う事は、薪が湿ったりと言う事は無いかな? もし燃料が不足するならば、輸送をするけど」


「連絡が早かったので、設営した土嚢後方に移動出来た。切り出している薪は塩水を被る場所には無いので、放置だな。村長の話では消費量的に問題無いそうだ」


 ドルの明確な回答。


「新設のリゾートホテルの方は?」


「基礎がしっかりしているので、影響は出ていません。確かに風の影響で仮設の覆いが飛び、内部が一部濡れましたが竣工期間に影響を及ぼす程の損害ではないそうです」


 なるほど。バッファーで処理出来る程度の損害に収まったと言う事か。


「一番重要だけど、住民に被害は?」


「拙者等が着く頃には丁度鳩が着き申して御座る。それに人魚の方々もそろそろ異変に気付いて御座った。意見具申と平行して増援が着いたと言う事で士気も上がり、作業は順調。陸の民は住居の対応で被害は御座らん。人魚の方々は沖に出て、避難及び状況確認をして下さったで御座る。よって被害は皆無に御座る」


「上々だね。一番影響を受ける部分だから対策は考慮していたけど、実際に効果が出てくれたのならありがたい。ちなみに沖に出られない人魚さん達はどうだったの? 子供が人間の人もいるよね」


「うん。その辺りは旦那さん達がきちんと守ってたよ。結婚して責任感が生まれたとかって超良い顔してた」


 フィアが言うと、皆が笑顔を浮かべる。そうか……。ちょっと頼りなかった新兵達も、家長になったからには一人前か。


「竜の皆さんもありがとうございました。今回、被害が少なかったのも迅速に人員を輸送できた事が大きな要因です。改めてお礼を申し上げます」


 そう伝えると、並んでお茶を飲んでいた竜さん達がちょっとはにかみながらこくりと頭を下げてくる。


「じゃあ、今度は『リザティア』の方かな。『フィア』で頑張ってもらった皆には悪いけど、こっちはやっぱり被害が出ちゃったよ……」


 そう前置きして、今回の被害状況をティアナ、カビアと一緒に皆に伝える。やはり火に関わる事に関しては、皆、若干硬い表情になった。暫く説明をして、丁度戻ってきたレイにも現状報告をしてもらい、今回の報告を締める。


「と言う訳で、恥ずかしながら『リザティア』の方が、状況的に悪い。季節的に台風は頻発するだろうし、もう少し人員を調整しようか」


 そう告げて、今後の台風対策に関して、調整を進める。『フィア』に関しては、人員に対して設備、対応力が過剰な部分もあるので責任者が一人出張って、現場をコントロールするだけで問題無いという結論に達した。村長権限で処理出来ない事を領主の全権委任者が許可するだけで大きな問題は出ないと言う事だろう。


「問題は、住民の意識……ですか」


 ロットが顎の辺りに手を這わせながら呟くと、皆もうーんっと悩まし気な表情を浮かべる。


「それに関しては、教育と訓練しかないというのが結論かな。何故そうしなければいけないのか。それはどういう場合に行わなければならないのか。基礎知識が無ければ、言われても実施は出来ないよ。良い教訓になった」


 私が水を向けると、活発な議論が始まる。最終的にはブロックごとの防災組織の運営、およびその単位での教育と言う事で話はまとまり、具体的な実行施策を考え始めた辺りで、くるるとフィアの辺りから音が鳴る。


「うー、だって、良い香りがするもん」


 ちょっと赤面しつつフィアが言うので、頭を上げると確かに芳ばしい香りが漂ってくる。窓を見ると、赤く染まり始めていた。なんやかやと集中していて気付かなかったが、昼過ぎから夕方までぶっ通しで議論してしまったようだ。


「長々とごめんね。じゃあ、実際の施策に関しては、商工会とのすり合わせも必要になると思う。ティアナとカビアは草案をお願いして良いかな」


 そう告げて、お開きとする。重い雰囲気が晴れると、銘々が弛緩した様子で、食堂に向かう。丁度、こちらに向かってきた侍女から食事の用意が出来たと伝えられ、わくわくしながら食堂に入ると、そこには黄金色に輝く、山が築かれていた。


「うわー、テンプラじゃん!! 超好き!! 愛してる!!」


 ロットを置き去りにぴゅーっと駆けていくフィア。若干の苦笑を浮かべながら、それぞれの席に着く一行。


「では、大きな被害も無く無事台風も凌げたと言う事で、ささやかながらの祝宴です」


 私がそう告げると、慰労会が始まった。

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