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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第三章 異世界で子爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第707話 上手に建てましたー

 取り敢えずトトル一行に関してはリナに任せて、私はフィアが指さした方向に進んでみる。丁度道を渡った時には丸太は撤去されて、馬車は隅に移動していた。私が馬車の方に手を振ると、リズ達が食材を持って手を振ってくれた。その時、ロッサが馬車から飛び降りて、こちらに駆けてくる。何事かと目を丸くしていると、目の前で止まるとこくりと頭を下げてくる。


「すみません。雨はまだ大丈夫と言っていたのに……。申し訳ないです」


 必死な顔で律儀な事を言うロッサに一瞬言葉が詰まる。


「いや、天気なんて読み切れるものじゃないし。アクシデントが有ったから追い付かれた訳だし。気にしていないよ。あーあ、濡れちゃって」


 そう告げると、ロッサがほわりと花開くような笑みを浮かべる。


「あの……はい。ありがとうございます。濡れたのは大丈夫です。これから、野営の準備があるので」


「あんまり濡れないように、濡れた人間が率先してやるつもりだったんだけどね。野営地を作った後の作業の方が多そうだから、そっちを任せたかったのだけど」


 そう伝えると、ふんすといった表情で、両手で力こぶを作るようなポーズを取る。


「頑張ります!!」


「うん。あんまり気張らないでね。あぁ、それと。タロとヒメ、雨の時に外に出さないから、興味を持っちゃうかも。出来れば捕まえておいて……」


 とお願いをしようとした瞬間、ぱしゃんと若干鈍い水音が聞こえる。そちらを向くと、興奮したタロとヒメが馬車から飛び出て、泥の中に飛び込んで遊び始めていた。馬車の中では、リズが抑えようとしたのか、両手を差し出した体勢で固まっている。


「あぁ……。遅かった。お風呂好きだから、絶対に出てくると思った……。後でお風呂だな」


 そう告げると、コロコロと鈴が転がるようにロッサが笑う。


「はい。折角なので、少し遊んであげています」


「うん。後で色々頼むと思うから。休みながら待っていて」


 そう言い残して、改めてフィアの言っていた野営候補地の方に向かう。林からほんの数十メートル入ったところにぽっかりと空き地が生まれている。地面を見てみると、木の根が攻めてきている様子も見当たらない。ただ、植生が若干違うような気はする。生えている草もこの辺りだけ毛色が違う。通常、こんな空き地が生まれたら、新しい木々が陽を求めてどんどん進出してきそうなのだけどと思いながら、たまたまの幸運を神に祈る。


『そこ、土壌のテスト用に使っていました。領域だけ確保していたので開放します』


 ふぁ!? この声はパニアシモかな? テスト用って、こんなに人里近いのに、凄いな。ばれたらまずそうだけど。


『色々テスト領域を弄っている時に断片化した名残です。見つけてもらって良かったです。現状残っている植物は回収しますので、好きに使って下さい。ありがとうございました』


 一方的に伝えられた後に瞬きを一つすると、円状に出来ていた空き地の草木が綺麗さっぱり消えていた。あー、説明面倒くさいな。魔術でどうにかした……いや、それだと次の機会に出来ないとおかしい。うーん、神様イベントって伝えちゃうか。

 身近な神様アクシデントを華麗にスルーする方針を決めた後に、目測で空き地の大きさを確認する。取り敢えず、お風呂を作るなら排水の事も考えないといけない。一旦土の層を作って、その上に石板で蓋をして上に建物を建てるか。排水は、緩やかに傾斜を作って林の方に抜けるようにしたら良い。石板に柱用の穴を開けておけば、横風で移動する事も無いだろう。ただ大規模な台風とかが来たら飛んでいきそうだけど、そこまで野営地に耐久性を求めてもしょうがない。

 そんな事を考えながら、頭の中でCAD図面で地面の層、建物をイメージしていく。一軒はお風呂用、一軒は炊事用に分けて、十人くらいが入れる部屋を作るなら、石材の積み上げでも倒壊の心配は無いかな。柱も凝る必要は無いし、ど真ん中に立っていても誰も文句は言わないだろう。大体の目安で耐荷重を考えながら、かなり安全用のバッファを持たせて、一気に土魔術で組み上げる。


「うわ……。我が事ながら、気持ち悪いな。今なら一夜で城が作られそう……」


 イメージをそのまま流し込んで魔術を実行した瞬間、二軒の家もどきが姿を現す。家と石板の層の重みでずずっと沈み込んでいくが、ある程度沈んだと思うとその動きは微々たるものになり、やがて眼で見ても分からないレベルになった。そっと地面の石板に耳をつけると、奥の方でずずと鳴っているので、まだ締まっている最中なのだろうなと。周辺も土が流出する前に締められたので崩壊もしていない。目の前に作った階段を上がり、家もどきの中に入ってみる。取り敢えず、窓と扉は全部引き戸で作ったけど、鍵は流石に作れなかった。作ろうと思えば出来そうだが、正直面倒くさい。つっかえ棒でも置いとけば良いかと思いながら、重めの扉を開放する。土間替わりの空間と一段上がっての寝室があるので、こちらは問題無い。窓を開くと光も入ってくる。ただ雨が吹き込むので、早々に閉める。土間の方には煙突を作ったが、本当に煙が流れるかは試してみないと分からないかな。フィードバックをもらえれば、次回の時の参考にしよう。

 もう一軒の方はもっと単純で、入ってすぐに仕切りを作ってお風呂、そして奥に寝室という形だ。がらっと引き戸を開けて浴室に入り、窓を開けると光が差し込み石風呂が見える。ツルツルの石板ばかりなので、濡れると間違いなく滑りそうだ。皆には注意喚起しておかないと。ブラスト処理みたいに表面加工すれば良かったけど、そこまで考えるのは面倒くさかった。その辺りは今後の課題かな。頭の中の設計図だけだと、色々取りこぼしがある。設計図はきちんと作らないと、きちんとした物は無理だろうな。やはり、仕様と設計は偉大だと思う。


「まぁ、永住する訳でも無し、OK、OKと」


 将来的にはパーツだけ作って、調整しながら人力で組み上げるべきだなと思いながら、馬車に戻る。


「家、出来た」


 うん、日本語がおかしい。


「家? 空き地の整地とかじゃなくて? さっき、テントくらいって言ってなかった?」


 リズが首を傾げるのに合わせて、皆が一斉に首を傾げる。本当に仲が良い。


「お風呂とか色々考えていたら、面倒くさくなっちゃった。保護したからには面倒を見ないといけないし、それだけの力があるのも理解してもらおうかなと」


「面倒くさい……が大半だよね?」


 リズの言葉に、こくりと可愛く頷いてみると、皆から盛大な溜息が漏れた。


「まぁ、快適なら良いかと。子供の体力の方が心配です」


 カビアがつっこみを入れてくれたので、皆が気を取り直す。


「んじゃ、先に皆に説明して夜番の計画を立てておくから、フィアはリナに声をかけて誘導をお願いしてもらえるかな」


「あれ? 僕も誘導を手伝うんじゃなくて?」


「うん、今はリナだけで良い。ある程度綺麗になったらね」


 流石に今だとまだ刺激が強い。せめてお風呂で身綺麗にしてからじゃないと。まずはそこまでリナに面倒を見てもらうかと皆を連れて、家もどきの説明をする事にした。

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