第706話 リナの経験
「あいつらというのは……。あぁ、いや……。先に保護しよう。少し待っていて」
そう告げて、後ろで待機しているロット達に近づく。
「ロット、フィア。申し訳ないけど、リナを呼んできてもらえるかな」
「……何かありましたか?」
「うん。あった。後で詳しく話す。今は保護を優先したい。どこか空き地を探してきて欲しい。フィア、雨の中で悪いけど、さっと走って探してもらえるかな?」
「もう濡れちゃったから大丈夫。行ってくるー」
そう言うと、ロットとフィアが駆けだす。私はリナが来るまでにと、女の子の様子を『認識』先生で確認する。もしかしてと思っていたが、一部の性病にも罹患している。筋の悪い所で遊んでいた馬鹿の仕業かと思いながら、病気と吸い痕の治癒をディシアに祈る。ふわと全身が輝き痕が癒される。しかし、見た目上はましになっても依然としてぼうっとした状態は治らない。心の方の問題だろうなと思っていると、リナがやってくる。
「呼んだで御座るか?」
「んー。ちょっと言い辛いけど、他の子だと刺激が強すぎる。たぶん、かなり暴行されていたと思う。痕は治したけど心までは戻らない。出来れば、世話をお願いしたい」
暴行という言葉がどう翻訳されたのか分からないがリナが一瞬怪訝な表情を浮かべて、少女に接近する。見た目の傷は治したが、私と同じく匂いに気付いたのか刹那厳しい表情がよぎるが瞬きの後には慈母の表情を浮かべ、そっと少女を抱きしめる。
「もう……大丈夫よ」
一縷の望みをかけて期待してみたが、少女からは反応が無い。どうも落胆の表情が表に出ていたのか、リナが首を振りながら声をかけてくれる。
「まだ、諦めるには早いです。現地工作の際にはこういう子を何人も見てきました。だから、安心して下さい」
最後の安心の部分は私と少女両方に告げたのか、優しい口調と共に、布でそっと少女を包む。
「リズ達が食料の用意を終えました。後は火が確保出来れば調理は可能です。後、丸太の撤去もドルの方が終わらせています」
「分かった。フィアに今晩の寝床分も含めて、空き地を探しに行ってもらっている。そっちが見つかったら、食事にしよう」
「ここで足止めですか?」
「ここまで雨が降り始めたら御者の方が心配だよ。食料はこの人数を確保してもノーウェティスカまでは余裕でもつから。人命優先で」
「では、子供達の面倒はこちらで見ておきます」
「面倒をかける。リーダーはこの子らしいから、頼めるかな」
少年にリナを紹介していると、雨の中ぴゅーっとフィアが走って戻ってくる。
「そこの林を奥に抜けたらかなり広い範囲が荒れ地になってた。そこなら大丈夫?」
「草原っぽい感じ?」
「そんな感じ」
「土台を敷いて、その上に床を作ろうか。ありがとう、フィア」
「ううん。じゃあ、リズ達手伝ってくるね」
フィアがそう言うと馬車の方に戻る。
「あー、えーっと、まだ名前も聞いていなかったね」
リーダー役の少年に声をかけようとして、名前も知らなかった事に気付いた。
「トトル……です」
保護されると分かったのか、先程までの虚勢は捨てて、素直な言葉が返ってきた。
「トトルか。じゃあ、トトル。これから、今日の準備をしてくるから、何かあったらリナに声をかけてくれるかな」
そう告げると、はいと言う返事と共に、他の子供達にもその旨を伝えてくれる。やれやれ、詳細を聞くのは食事と身綺麗にしてからかな。服は皆の着替えから出してもらうとして、まずはお風呂か。そう思いながら、これから何をするのか計画を頭の中で描いていった。




