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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第三章 異世界で子爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第697話 臨時議会の開催

 侍従に用意されるままにお昼を食べていると、ノーウェが、そして少し遅れてロスティーが帰ってくる。


「おかえりなさい。先に食事を頂いていました」


「構わないよ。どの程度で帰るかが予想出来なかったからね。いやぁ、疲れた」


 肩を回しながら若干爺むさい感じで、席に座るノーウェ。その姿に若干呆れを浮かべたロスティーが横に座る。


「首尾は?」


 ロスティーが問うと、ノーウェがしっかりと頷く。


「問題ありません。父上は?」


「保守派の伯爵故な。やんやと言われたが、まぁ、まとめた。議場で裏切るなら……知らぬな」


 しれっとした顔でロスティーが食事を進め始めるが、知らない内容が怖くて聞けない。


「これで開明派以外の根回しは済んだよ。開明派に関しては数が多いし、書状では説明はした。後は現場で意識を統一するしかないね」


 ノーウェの言葉にロスティーが頷く。


「先に王都に訪れた侯や伯には根回しはしたがな……。内応が無いとは言い切れぬ。ただ、ここで逆らっても得るものはない故……。信じるしかないがな」


 ロスティーの言葉に一抹の不安は感じながらも、派閥の長に逆らって木っ端がどうなるか。正気の人間なら大丈夫かなと思いながら、食事を済ます。


「じゃあ、今日は会議だけだから留守番よろしく」


 リズと仲間に告げて、ロスティー達と一緒の馬車で王城に向かう。護衛もロスティーに任せた。数を連れて歩いてもしょうがない。ノーウェも連れていないのに、私が皆を連れても悪目立ちするだけだ。王城の階段を登る際に、ふと背後を見ると、前方の護衛と同じ歩調で歩いてて練度の高さに戦慄は覚えた。ロスティー……忙しいのに軍の把握まで完璧なのが怖い。ノーウェの軍の練度もそうだけど、やっぱり人材が豊富過ぎる。レイを渡してくれるくらいだからなぁ……。人類最高峰の能力の持ち主と言っても将としては経験が豊富な訳ではない。そういう意味では渡しやすかったと思うけど、あの人材を放出出来るんだから、分厚過ぎる。

 そんな事を考えていると、議場の前でテラクスタと出会う。


「お久しぶりです」


 ロスティーとノーウェの後に挨拶をすると、笑顔で挨拶を返される。


「異常には気付いていたが、この早さでここまで準備を進めるとは……。どのような魔術を使われたのですか?」


 テラクスタがロスティー達に問うと、二人が曖昧な微笑みを浮かべ、後で教えると伝える。まだ大っぴらに竜の関与は伝えられないか。そんな事を考えながら、議場に入る。

 入って右側から席に着いていくのは定例会の時と同じだが、やっぱりロスティー達に囲まれる。ただ少し変わったのは定例会の時に話をした貴族達が同じく周囲に着く形になった事だろうか。間を空けて中央に王家派が座り、極僅かの保守派が左端に座る。

 議事が進行されるまでの時間にロスティーが開明派の人間を集めて今回の説明を始める。書状が届かず鳩の報せで動いた人間も若干名存在したので、質問はぱらぱらと出たが、概ね同意という感じだろうか。概ねと表現したのは、やはりポストの空白が発生するのは避けたいという不満だろう。特にユリシウスがごっそりと引き抜いた後の再編とそこに人間を入れる準備などの兼ね合いもある。いきなり言われてもみたいな反応が多くはあった。これが諍いの元にならなければ良いがとは考える。

 人にとっての利益なんて千差万別で計り知れない。こういう小さな事の積み重ねで、組織が瓦解する事も往々にしてある。ロスティーは大局的見地に立って進めるが、些事に拘らない部分が若干見える。それでもかなり細やかに処理しているのは明らかなのだが、やはりその手より零れる対象は出る。過去はノーウェがフォローしていたのだろうが、ノーウェも大局と些事、両方を見る形になっているため、負担が大きい。そろそろ私も根回しに参加出来るようにならないと駄目だなと思っていると、話がまとまったようで、銘々が席に着く。

 ガヤガヤと騒がしい中、前方の扉が開き、議長が席に着き、臨時の議会開催を宣言する。議事に関しては、ユリシウスの過失に伴う王命の濫用及びその結果の条例をどうするかの二点となる。

 しんと静まり返った中でロスティーの名が呼ばれ起立する。さぁ、議会の始まりだ。


「法務の不手際により、国王陛下の御言葉が曲解されて伝わり、結果ワラニカ国内にありもしない税収方針の変更が通知された。まずは現宰相としてワラニカの国政に動揺を与えた事をここでお詫びしたい。すまなかった」


 まずはロスティーの謝罪から始まる会議。根回しが効いていなかった王家派及び保守派の極一部からどよめきが微かに上がる。それでも何らかの説明は受けていたのか、ヤジらしいものは飛ばず、粛々とロスティーの説明が進む。


「リーダルト侯爵への相談及び決裁を待たず実施を決めたユリシウス伯爵の拙速による影響は大きい。よって、ユリシウス伯爵及び法務官僚に関しては一部を罷免する事となった」


 その言葉に、若干の喜色が混じったどよめきが保守派の中から起こる。身内を送り込んで法務に伝手を作りたいのだろうなと思いながら、朗々と続くロスティーの説明に耳を傾ける。


「また、国王陛下ともお話したが、税制の不安は将来を見ての事で、現状の影響は小さい。よって、該当の条例に関しては廃案の方針で進めたい。以上である」


 ロスティーが説明を終え席に着く。議長が頷き、質疑応答に移る。さて、ここからが本番だ。人の欲がどう噴出するのか……。何事も無ければありがたいけど。

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