第4話 サバイバル開始かと思いきや先に実食です!!
さて、サバイバルの時間だよ。
『識者』さんとの会話も落ち着いたので、当初の目的に向かう事にする。
「と言うか、このアオダイショウモドキ食べれないのか?」
よく見るとこのアオダイショウモドキ、側稜も無いし、身も筋肉質と言うより軟らかめ。
アオダイショウは臭いとアクの所為で食べれないはずだけど、こいつは蛇と言うよりウナギっぽい。
「『識者』さん、これは食べれますか?」
異世界の生き物なので、良く分からないものは知ってそうな人に聞くのが一番かなと。
<解。スキル『認識』をお使い下さい。>
そっけないお返事。『認識』をどう使えば良いかも分からないのに、この仕打ちとは。
「えと、『認識』を行使します」
取り敢えず、試しにアオダイショウモドキを見ながら、呟いてみる。
すると、体内構造、各器官の意味情報、生息形態等が脳内に浮かんでくる。
ちなみに、名前はアオダイショウモドキと呼んでいた為か、アオダイショウモドキになっていた。
基本的にアオダイショウと違って木には登らず、地面で生息しているようだ。
主な食べ物は木の実や昆虫との事。
毒に関しては外敵から身を守る為の弱い神経毒で、人間サイズで有れば短時間の麻痺程度の効果でしかないとの事。
何より、毒腺類の箇所が首元に集中しており、首を落とせばそのまま無害に食べれそうだ。
「肉食じゃなければ臭くないのか?」
もう11時も回っている為、取り敢えず昼食として試してみる事にした。
駄目なら、カロリーを補充してくれるブロックが有るからそっちに頼る事にする。
流石に朝ご飯を抜いた状態で、サバイバルは辛すぎる。
「先程確認した川縁辺りを臨時のキャンプ地とするか」
簡易のかまどを作るにせよ、川石の方が使い易いので川まで移動する事にする。
道々で薪になりそうな小枝、枝を拾いながら20分程移動する。
「結構水量有るな」
樹上で見る限り、水遊びが出来る程度の川かと思っていたが、水量が有るのと深さの所為で雰囲気が全然違っていた。
「大物がいそうだな。でも木の銛で捕らえられそうも無さそうか」
魚は一旦諦め、川石を集めかまどの準備を進める。
石を組み上げ、上部を開ける。
アオダイショウモドキは腹から捌き、鱗と皮ごと剥がす。すると思いの外真っ白な身が出てくる。
血と内臓を洗い、小骨の部分をカッターで刮いでいく。
ウナギの蒲焼大大きさに切りそろえ、細い木の棒で串打ちしていく。
「取り敢えずタバコ止めても、ライター入れておいて良かった」
喫煙時代からの癖であらゆる収納場所にライターを入れていたが、それが功を奏した形となる。
「火が荒い間にざっと表面焼いて、後は均等に火を回す感じで良かったかな」
過去爺ちゃんとウナギを採った時にそんな感じで焼いてたなとしんみりしながら、焼き進めていく。
この世界では秋口の所為なのか油が乗っており、てとてとと火に落ちる度にじゅわっと音を上げながら炎と香ばしい匂いを漂わせる。
「そろそろかな?」
こんがりとキツネ色に焼けた身に一部油の焦げた部分が堪らなく美味しそうだ。
「念の為、『認識』を行使します」
毒性の有無の確認の為に、『認識』を使ったが、毒は無し。
心置きなく食べれそうだ。
「タレも塩も無いのが残念だけど、いただきます」
噛り付いた瞬間さくっとした表面の一重下から油がじゅわっと流れ出しその下からふんわりとした白身特有の肉が口の中で踊る。
「これ、味は薄いけど旨いな。油の甘さと身のほろほろふんわり感だけで、十分だわ」
懸念していた臭いもほぼ無く、ウナギとはまた違う旨さを堪能出来た。
流石に150cmの蛇なので、可食部位だけでも相当になる。
「流石にお腹一杯です」
実はメタボと言っても、そんなに量は食べる事は出来ない。
燃費が良すぎる為、どんどんお腹に脂肪が溜まっている気がする。
一時期は、何も食べず飲まなくても太っていた為、霞でも食べているのかと思っていた。
「と言う訳で、ごちそうさまでした。おいしゅうございました」
異世界初めての食事が蛇と言うゲテモノだったが、幸せだったので良しとしよう。