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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第三章 異世界で子爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第689話 レクリエーションから懇親会

単行本の第二巻の発売が決まりました。

発売日は三月三十一日となります。

今回は書下ろしで、タロの前日譚も載せています。

どうぞよろしくお願い致します。

 レクリエーションとして、そのまま隊列を組み、競馬場に移動する。訓練に忙しくて足を運んだ事がない人間もいるし、騎士団の雄姿を見るというのも良いのかなと。ちなみに、騎士団はノーウェからの兵員移動なので、式典には参加していない。指揮系統が違うので正式に編入しない限りは区別する必要がある。後、競馬を選んだ理由としては、賭け事をするという事も意味はあると考えているからだ。お金を増やすというのは根本的な欲求なので当然誰にでもある。お金を増やすために、馬を真剣に見極めて、レース展開を予想する視野は俯瞰視点を鍛えるきっかけにはなるだろうとは考えている。ちなみに、兵達にはお金ではなく金券を渡しているし、オッズと賭け金の上限も一般客とは変えている。仮に全レースを全員が勝っても六レースなので最大六十四倍にしかならない。お遊び程度なのでそれでもいいかなと。

 パドックを見に行くと一般客に混じって兵達が真剣な表情で馬の調子を確認している。目を皿のようにして馬の様子を見ている兵もいれば、衛生兵に馬の調子の見極め方を聞きに行っている兵もいる。皆、それぞれに考えながら勝ち馬を予想しているのが面白いなと。ちなみに、金券には名前を書かせているし、小隊長には部下の様子をそれとなく確認するように伝えている。誰が何を買って、どういう行動をしていたかは小隊長以上には伝わる形になっている。まぁ、この情報を今後に活かすかは情報を得た本人次第だけど。


「あ、ヒロ。おーい!!」


 ぽけーっとパドックの様子を眺めていると、リズ達がこちらに向かってくる。


「式典ご苦労様。部下の皆は大丈夫?」


 皆に聞いてみると、満面の笑顔で逃げられたと回答が返ってくる。まぁ、遊んでいる時に上司と一緒にいたくはないわなと苦笑が浮かぶ。


「あの辺り、斥候の子じゃないの?」


 私が指さすと、ロットが頷く。


「はい。馬の脚は情報の速度と同義です。どの馬が調子が良いのか、元々の資質はどうかなどの情報は収集しています。その情報を売っているのでしょう」


 あー、うん。予想屋さんみたいな感じなのかな。


「程々なら良いか。その情報も軍情報としては貴重なんだから、取り扱いには注意してね」


「そうですね。商売なので小出しにしています。それに斥候隊は高給取りになるので、懇親会の後の二次会では集られます。その為の資金集めのつもりです」


 ロットもやや肩を竦めながら言う。


「仲が良いなら安心だよ。さぁ、第一レース、始まるよ」


 式典会場から移動した楽師隊が奏でる演奏が喧騒の中響いてくる。皆で座席に方に移動する事にした。

 結論としては、六レースが終わって全員ほぼ惨敗といったところだ。オッズの最大で二倍なので勝てる要素がほぼ無い。元々お遊び目的で、賭ける行為自体を味わってもらうのが目的だったので達成は出来たかなと。実際に兵達も賭けがどうこうというより、間近で馬が走る迫力に目を輝かせている人間が殆どだった。

 レース終了後は、再度競馬場前に整列し、練兵所に向かう。六レースを行っている間に、会場の設営と料理の運び込みが完了している予定だ。かなり遅めの昼ご飯となるので、皆欠食児童みたいな顔をしている。

 練兵所に入ると、野営用のテーブルと椅子が島のように並べられ、周囲には酒と料理がこれでもかと盛り付けられて湯気を上げている。あまり焦らしても殺生かなと、席に皆が着いたのを見計らいレイに目配せを送る。


「総員、傾注」


 各所で上がる指示に、しんと静まり返る練兵所。


「これより任に就く者、予備役として他の職に就く者、あるいは後方で事務を担当する者。行く先は様々である」


 深く重いレイの声が練兵所に静かに響く。


「道は違えど、このアキヒロ領を愛する気持ちに差は無いと確信する。この懇親会はその思いに応えるためと心得よ。では、食事の時間を開始する」


 レイの言葉が風に解けた瞬間、わぁと歓声を上げながら料理に殺到する兵達だった。


「リーダー、飲んでる!?」


 阿鼻叫喚の世界の中、色んな人間から声をかけられてへとへとになって座っていると、フィアが近寄ってくる。


「飲む暇も無いよ。フィアは?」


「ん。大丈夫。結構食べたし、飲んでる」


「軽装部隊はかなりの人数が予備役に回っちゃうもんね。お別れ会になっている感じかな?」


 やはり経験者の募集が一番多かったのが軽装部隊であり、予備役への異動を希望したのが多かったのも軽装部隊が多かった。兵としての数は『フィア』も合せて総数で五千を下回る程度だが、約二千は予備役として他の仕事に就く。実際主に戦場に出るのは全軍合わせても二千をやや下回る程度だろう。


「へへ。それでも町では会えるし、何かあったら一緒に戦うしね。鈍らないようにって伝えたら負けないようにって返されてるくらいだから大丈夫だと思うよ」


「そっか。それは頼もしい。子供さんにも期待出来るだろうし、宿場町の話が進めば常駐軍が必要になる。出来れば屯田兵や他の職種と並行して就いてくれる人間が欲しいから、期待だね」


「言ってた、言ってた。新しい町が出来たら商売の機会だって。あぁ、ロッサ囲まれてる。助けないと」


 忙しそうにフィアがロッサの方に駆けていく。軽装部隊とは逆にクロスボウ主体の弓兵は新兵志願が一番多かったので、予備役に回る者は殆どいなかった。その為、ロッサの周りには幾重にも人の輪が出来て盛り上がっている。

 楽しそうだなと思いながら杯を傾けていると、そっと背後から呼ばれる声がした。

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