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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第三章 異世界で子爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第684話 営業戦略会議開始

単行本の第二巻の発売が決まりました。

発売日は三月三十一日となります。

今回は書下ろしで、タロの前日譚も載せています。

どうぞよろしくお願い致します。

 戻ってきたリズ達と一緒にお昼を食べる。厨房が蕎麦を打てるようになったので、今日は塩せいろ。旬からは外れているけど、十分香り高く美味しい。醤油が出来ればつけ汁も作る事が出来るのだけど、今は塩で良いかなと。暑い最中に外で指示を出していた皆は、キンと冷えた蕎麦を美味しそうに食べていた。その内、そうめんを作って流しそうめんをするのも楽しそうな気がする。

 食後はてくてく一人で商工会に向かう。


「あぁ、領主様。報告が届きましたか」


 商工会長室に通されると、フェンが机で書き物をしていた。


「忙しい時期に負担をかけました」


「いえいえ。積極的に売り込みを行うという考え方は理解出来ます。それに現場も教える事によって改めて学ぶ事が多いです。ティルトさんはその辺り疑問を提示する人ですので、色々気付きも多かったようです」


 そう言いながら、机の前のソファーに移動して席をすすめられる。相対して腰掛けるとフェンが従業員にお茶の用意とティルトの呼び出しを告げる。


「しかし、営業ですか。その概念はありませんでしたね」


「そうですか? 行商といっても、色々と地方の珍しい物を取り扱う事はあるかと。その説明も仕事の内では無いのですか?」


「使い方が限られるものですし、そこまで大きく影響を広げる訳ではないです。例えば、ティルトさんの案では、井戸を各個に掘って手押しポンプを設営する事によって、家の価値を上げる事まで考えていました。そんな視点で物を売る事なんて無いですね。言われてみて、あぁ、物一つで建物の価値も上がるのかと再認識させられましたが」


 あぁ、上水を家の中に設備として組み込むと言う事か。それならば、態々井戸まで行って水を運ぶ必要もない。上総堀りで家を建てる前に穴だけ開ければ良いんだから工賃も工期も大きくは変わらない。家の価値も上がるだろう。短い時間でよく考える。貴族の邸宅、ノーウェの浴場のように金持ちが家の中に井戸を掘るケースはあるけど、庶民層にまでそれを浸透させるというなら慧眼だろう。本領を発揮してきたなと思う。


「なるほど。持ち運べるものが主体ですし、消耗品が中心になりますか」


「はい。それと最近では遊具ですか。やはり娯楽には飢えていますので、村単位で買うという場合が多いですね。リバーシは大分浸透してきました」


「腐らないですし、そう壊れる物でもないですしね。単価も高いですし、行商には向いていますか」


 そう告げると、我が意を得たりという表情でフェンがにこりと笑う。


「それも考慮の内でしょう。国内では貴族、豪商辺りはかなり開拓されていますし、庶民層にも普及が始まりました。ここからは怒涛の勢いで売れるでしょうね」


「そうなれば、隣国にも積極的に流し始める機会でしょうね。リバーシを一局遊んで話し合い。共通の遊びで打ち解けた雰囲気を作り、交渉が出来るのは望ましいでしょうから」


「それを男爵にもならない内に、公爵閣下と調整をなさったのが凄いと思いますが……」


 お茶を楽しみながら四方山話をしていると、ノックの音が響く。フェンが誰何するとティルトが来たようだ。


「あぁ、ご無沙汰しております、領主様」


「思った以上に早い行動に驚きました。あぁ、どうぞ。かけて下さい」


 少しだけ厭世的な雰囲気が抜けて、貫禄というか余裕が出たティルトがソファーに腰掛ける。


「偉そうな事を言いますが、表情……変わりましたね」


 私が告げると、ティルトが若干はにかんだように微笑む。


「そうですか? 自覚はしていないですが……。ただ、『リザティア』は面白いですね。見た事も無い物が普通に生活の中で使われている。それがまた画期的な物だというのが恐ろしいです。これをどこにどれだけ売ろうかと考えるたびに心の中で何かが沸き上がってきます」


 あぁ、こんなに熱い人だったのか。


「なるほど。フェンさんもいるので丁度良いですね。まだ内密の話ですが、王都で政変が起きます。それに伴い法務官僚の長が免職されます」


 その言葉に元貴族のティルトの表情が固いものとなる。


「領主様に影響は?」


「ありません。筋書きを描いたのは国王陛下とロスティー公爵閣下ですから」


「なるほど……」


 私の言葉にティルトとフェンに安堵の表情が浮かぶ。


「と言う訳で、そのまま法務担当として『リザティア』に招待する事にしました。今後契約回りはかなり楽を出来るはずです」


 そう告げると、フェンの表情が一変し明るいものとなる。


「それは助かります。新しい物が増えるとなると、契約内容も一から考え直さなければならないです。現場も頑張っていますが、規模が大きくなって飽和しているというのが現状ですので」


「はい。店舗が頑張っているのに、行政側の不備で損をさせる訳にはいきません。それに新しい契約内容にも柔軟に対応してもらうつもりです。そういう意味では古参の法務担当者も一緒に引き抜いてきてくれるそうですし、そちらを育てた後は在地貴族になってもらうつもりです。今の宿場町構想の主となってもらえば、ダブティアとの商機はますます広がるでしょう」


 そう告げると、二人の目の色が変わる。本当に根っからの商売人だ。


「と言う訳で、ティルトさん。まずは新しい営業職として、どのような事をやっていきたいか教えてもらえますか?」


 私の問いに、ティルトの挑戦的な瞳がきらりと輝いた。

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