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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第三章 異世界で子爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第682話 戻ってきた日常

 寝苦しさに目が覚めると、窓からはほのかな明かりが入ってきている。開けてみると、しとしとと細い雨の上に薄い雲が広くかかっている。八月八日は雨か。王都に行く時間を考えると十一日には出発しないといけない。それまでにこなさなければいけないイベントもあるのでちょっと忙しくなるなと。振り返ると、ぺたりと服が張り付く。昨晩は余程湿度が高く暑かったのだろう。うなされて起きそうだけど疲労のためか寝入ってしまった。三時間程度の移動が四回。九州から北海道まで二往復を一日でやったらそりゃ疲れもするかと思いながら、タロとヒメの食事を取りに行く。

 へにゃっとした顔で眠っているタロとヒメを起こして、食事をあげる。食べている間にリズを起こすが、眠りが浅かったのかすんなりと起きる。


「おはよう、ヒロ……。うわぁ……べとべとだよ」


「昨日の晩は湿度が高かったのかも。私もベタベタ。昨晩はお風呂入っていないし、お湯入れちゃおうか」


「じゃあ、皆にも知らせた方が良いかな」


「うん、お願い」


 二人で部屋を出て、私はさくっと浴槽にお湯を張って部屋に戻る。水を飲み終えた二匹が構って構ってという目できちんとお座りしながら待っているので、抱き上げる。昨日は夜、相手が出来なかったのでいつも以上に甘えん坊になっている。肩のところに前脚をかけて意地でも離れないという感じをアピールしながらふんすふんすと私の首元を嗅ぎまわっている。


『あんしんするの!!』


『さみしかった!!』


 もう体は大人とほぼ変わらないのに、いつまでも子供だなと思っていると、リズが戻ってくる。いつものようにフィアに声をかけたら広まったようだ。侍従にも声をかけてくれたので朝の用意はお風呂の後辺りで調整してくれるようだ。

 下着などの荷物はリズに任せて、二匹を抱えたままお風呂に向かう。目的地が分かったのか、二匹ともしっぽをぱたこんぱたこんと大きく振り始める。腰のあたりがくすぐったい。支えている手でわしゃわしゃすると、しっぽの動きが激しくなる。

 脱衣所に着くと二匹を下ろし手早く脱ぎ捨てる。リズにも手伝ってもらって二匹とも洗ってしまおうかなと、タライをもう一個作り出す。お湯を張ると、まだかまだかと待っていた二匹がちゃぽりと駆けこむ。すぐに弛緩した顔でぷかりと浮き始める。それを揉み洗っていく。


『ふわぁぁぁ……。きもちいいの……』


『えつらく……』


 相変わらずの二匹に微笑ましいものを感じながら、じゃぱーっとタライから掬い上げる。タオルで拭いてブローするとふわふわタロとふわふわヒメの出来上がりだ。ご飯を食べたてだが十分な睡眠を取った後なので、寝入ったりはしない。興味深そうに浴場の奥の方を偵察に行ったりしているので、その間に手早くリズと一緒に体と頭を洗ってしまう。ちゃぽりと湯船に浸かって、大きな吐息をユニゾンで吐く。


「思った以上に疲れたのかな……。竜に乗ったの初めてだから……」


「馬より楽といっても、体勢を大きく変えられる訳じゃないしね。そりゃ疲れるよ」


 上気し始めた顔でほっと息を吐きながら言葉を紡ぐリズ。


「今日はどうするの?」


 縁に顎を乗せて上目遣いに聞いてくるリズ。その頭を軽く撫でる。


「昨日は唐突な話だったからね。使者の人に受領の旨を伝えないといけないし、十五日に王都に到着出来るように用意を進めないと駄目かな。後は予定通りレイの件も進めないと」


「ん。レイの件はフィア達と相談して進めるね。今だとロッサが一番忙しくなるのかな」


「数が数だしね。ただ、『フィア』の員数は勘定しなくていいから。後で報告だけはするけど」


 そんな話をしていると、偵察に飽きたのか二匹がごろごろとじゃれ合いながら転がっている。濡れた場所は避けているので良いかなと思いながらリズと一緒に上がる。

 部屋に戻ってリズの髪形を整えていると、タロとヒメもブラシを銜えてこちらを見上げてくる。


『かいかいしてほしいの……』


『けすき……』


 しぱたんしぱたんと床を掃くように揺れるしっぽを見ていると、おかしくて笑いが込み上げてくる。


「ん? どうしたのって……。あは、待ってる」


「うん。行儀が良いのが可愛いし、おかしくて」


 リズの髪を梳かして艶が出た辺りで、髪形を整えて完了とする。待っていたタロをテーブルに乗せてブラッシングをし始めると、うっとりした表情でくわっとあくびをする。


『ふわふわするの……ねむー』


 お風呂の時は眠そうじゃなかったのに、リラックスすると、眠気が出て来たのかうとうとし始める。保育所に行くまでひと眠りすれば良いかと思いながら、全身を梳いてヒメと交代する。ヒメも同じく、うとうとし始めたので、そのまま二匹をテーブルの上で寝かしつけておく。寝入った辺りで丁度侍女が食事の旨を伝えてくるので、リズと一緒に立ち上がる。


「しかし、毎日工場で働くのも大変だよね。お休みをそろそろ真剣に考えようかな」


「お休み?」


「うん。『リザティア』全体で休みの日を作ろうかなと。ただ、外部から来る人はお構いなしだから、どうやって維持しようかは悩んでいるところ」


 そんな話をしながら食堂に入る。さて、今日も一日頑張りますか。

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