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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第三章 異世界で子爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第681話 竜の宅配便

「竜の処遇に関しては迷うところもあった。あのような表現で助かった」


 応接室を出て廊下を歩いていると、ロスティーが囁きのように語り掛けてくる。


「表現……ですか?」


「友誼……と。そして、その根としては食生活に興味があると伝えられた。ワラニカの文化に竜が興味を示したという自尊心をくすぐらせる事、そして新興の一地方都市、それも王都から離れた東の果ての辺境の食生活に興味を抱くのであれば、どの都市にも機会はあると思わせた事だな。竜の力は分かる者が知れば、大きな問題故な。情報の速度は力だ」


「全く真実しか伝えておりませんが、そうですね。知らぬ人が聞けば自分の努力でどうにかなると考えそうではありますね」


「君の領地の料理を超えるって? なんの冗談かは知らないけど、笑えるよね。時間が経てば真似は出来るかもしれないけど、その頃には尚先を行っているんだよね?」


 ノーウェの言葉に微笑みだけを返しておく。


「では、館に戻る。政争の最中に力技は無いと見るが、先の傭兵ギルドの動きを考えると何が起こるか分からぬ」


 ロスティーの言葉にノーウェと一緒に頷き、馬車に向かう。


「ヒロ!! 大丈夫だった?」


 ロスティーの館に到着すると、リズとラディアが飛び出してくる。


「大丈夫。国王陛下とはお話出来たよ。実際の対応は貴族達が集まってからになるけど、問題はお伝え出来た。後は竜の件も取り敢えずお目こぼししてもらえそう」


「ふふ、国の一大事って顔で走り始めたのに……。きちんと他の利益も得るのがヒロっぽい」


 くすりと笑うリズの頭を撫でる。


「さて、八月十五日に再度王都に到着すれば良いという話になったから、一旦『リザティア』に帰ろうか」


「ん。あ、お爺様とノーウェ様はどうするのかな?」


「父上はこのまま王都に残るよ。私達は出来れば送って欲しいかな。あぁ、父上が文だけ届けて欲しいと言っていたけど、どうかな?」


 話を聞いていたのか、ラディアと喋っていたノーウェがこちらの会話に混ざってくる。


「今寄っていると、夜半にかかってしまいますね。ロスティスカなら明日の朝出発すれば二時間半から三時間で到着出来ると考えます。竜単身でもよろしければお受けします」


 ブリューの方を見て確認したが、こくりと同意の頷きを返してくれるので大丈夫だろう。


「もうロスティスカの方も話は広まっているだろうし、竜だけで大丈夫だよ。念のため、父上の紋章が付いた鞄を持たせるから。その紋章がある限り、邪険にされる事はないよ」


「分かりました。ではお預かりします」


 そんな話をしていると、侍従が寄ってくる。


「そろそろ夕食の刻限となりますが、お食事は如何(いかが)致しましょうか」


 あー、『リザティア』を出たのが十時前、外はすっかりと暮れている。竜のスキルに『暗視』があったので、夜の移動も問題無い。今日は昼抜きだったけど、ばたばたしていて空腹もそれほどは感じない。


「あまり遅くなるのも問題なので、文を頂き次第、戻ります」


「畏まりました」


「それなら、私達も同行しよう。早めに近隣に伝えないといけないしね」


 ノーウェもラディアと一緒に帰るようだ。


「では、軽くお茶の用意をしましょう。奥方様は遅めのお昼をお出ししましたので、軽食をご用意致します」


 侍従がそう言うと、静かに部屋を出ていく。


 その後は文を書き終えたロスティーを囲み、お茶を楽しむ事となった。ペールメントも元気そうでペロペロと挨拶された。


「では、ロスティー様。十五日に」


「うむ。用意はしておく」


 ロスティー達の見送りを受け、王都を飛び立つ。途中ノーウェを下ろし、『リザティア』に着いた頃にはもう深夜となっていた。ただ、夜の闇の中で歓楽街だけが煌々と明るかったのは印象的だった。その内、不夜城なんて呼び名で呼ばれる日が来るのかもしれないなと思いながら、五稜郭の真ん中に降り立つ。


「今日はありがとうございました」


 ブリュー達にお礼を言うと、はにかんだ表情で返礼される。


「少しでもお役に立てたならば良かったです」


 ブリューも神様と会ってから、少し変わった印象は受ける。少し内面を出すようになったし、積極的に交流してくれるようになった。また、他の竜もそういう話を受けたのか同じように対応が変わってきた。

 おやすみの挨拶を交わし、部屋に戻る。


「お腹は空いていない?」


「ん、大丈夫。ヒロは?」


「元々あんまり食べないからね」


 そんな話をしながら部屋を開けると、音に気付いたのかタロとヒメが箱の中から立ち上がる。


『ままなの!!』


『ぱぱ!!』


 ててーっと駆けよってとうっという感じで、飛び掛かってくる。抱き着いたと思うと、よじよじと登ってきてふんすふんすと嗅ぎ始める。


『ふぉぉ、においするの!! べんきょうのにおい!!』


『がくしゅうする!!』


 ペールメントの匂いが懐かしいのか、頻りに嗅ぎまわっている。安心させるようにブラシで櫛削ると、落ち着いたのか素直に箱に戻ってまた眠り始める。


「ふわぁぁ。流石にちょっと疲れた。結構飛び回ったし。リズは大丈夫?」


「うん。王都でラディアさんとお話していたから。でも、明日から忙しいみたいだし、今日はゆっくり休もうか」


 その言葉に甘えて、ベッドに横たわる。私の出来る事は取り敢えず終わった。ローディアヌスの調査の結果待ちというところだろう。取り敢えず八月十五日に向けて内政の方針だけ伝えて、さっさと移動の準備を始めるとしようか。

 そんな事を考えていると、思った以上に移動の疲労が溜まっていたのか、すぅっと意識を失うのが分かった。

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