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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第三章 異世界で子爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第667話 メタボバナナボート

 リゾート地域の開発に合わせて、村の方も改修しているのか、道も砂浜に沿って石畳が敷かれ、脇には植物が並び、南国の雰囲気を醸し出している。街路樹風に並んでいるヤシの木達が重そうな実をどっしりと抱えている。砂浜では人魚さん達が漁から帰ってきたり、子供達の世話をしたりで大忙しのようだ。ただ、服装は大分変ってきている。当初はラフな格好が多かったが、旦那さん的にあまり見せるのが嫌なのか、趣味なのか、ブラウスみたいなのを腰でパレオと一緒にきゅっと結んでいる海賊風ファッションが流行ってきているらしい。大きな双丘がまろびでそうな格好で、こっちの方が煽情的じゃないのかなとも思う。

 てくてくと石畳を歩いていると、子供達が気付いたのか、ぴょんぴょんと近付いてくる。


「あー、領主様だー」


「わんわんは!!」


「タロとヒメはー!?」


 でーんとタックルされながら質問の嵐が飛んでくる。


「今日は様子見で、私一人だよ。タロとヒメは連れてきていないの」


「なーんだ……」


「ざんねーん」


「領主様、遊んでー」


「お空、飛ぶのー」


 風魔術で一緒にホバーしながら、深めの場所にどぼんと落とす遊びか……。子供はどうしてそういうの好きなのかな。


「先にお仕事の話をしてからね」


 そう告げると、えーっと言いつつも近付いてきたお母さんの方に戻っていく。


「ご無沙汰しております、領主様」


「中々ここまで顔を出せず申し訳ないです。ベルヘミアさん達はいますか?」


 そう聞くと、頷きが返る。


「漁から戻って、妊婦の様子を見ると言っていました。呼んでまいります」


 そう言って、お母さんが子供を連れてぴょんぴょんと集会所の方に向かっていってしまった。あー、私が向かった方が早かった気がするけど……。そう思いながら、振り返ると、人魚の女の子達がわくわくした顔でこちらを見つめている。


「じゃあ、遊ぶ?」


 そう聞くと、歓声が響いた。

 私は砂浜からホバーで女の子を二人ずつ小脇に抱えて、バナナボートのように急旋回しつつ、あまり沖じゃない人魚さんの姿が見えない場所を見つけて、旋回しながらぽーんと放り投げる。すぐにじゃぱんっと上がってきた女の子達が楽しそうに笑いあう。私は、すぐに浜に戻って同じ事を繰り返す。ベルヘミアはまだかなと思いながら、ルーチンで遊具になっていると、ぱおーん君の順番になった。なんだか、凄くもじもじしてて、なんとなく男の娘感が上昇している。


「お久しぶり」


「おぢさん、あのね、あのね。僕、男なの。皆みたいに格好良くなるの!!」


 はてなと首を傾げてちょっと話を聞いてみると、村に入ってきた男性陣の格好良さに目覚めたらしいのだが、見た感じ前より恋する乙女みたいになっている。


「格好良くなるために、どうするの?」


「こういう遊びにも積極的に参加するの!!」


 今までは、取り巻きの女の子に邪魔されていたが、今後は積極的に参加するらしい。うん、良いんじゃないのかな。でも、放り込む瞬間のひゃーっという悲鳴は非常に女の子らしかった。取り敢えず一巡したところで勘弁してもらい、プールの方に向かうと、やや大きくなった子供達と、物凄く小さな子供達がぴちぴちしていた。周りで見ているお母さんに挨拶しながら、手を差し伸べると、休憩場所的にしがみ付いてくる。ちゃぽちゃぽと遊んでいる子供を見ていると、小さな子供の一人にぱおーん君二号を発見する。


「あ、男の子!!」


 思わず声に出すと、周りのお母さん達が嬉しそうににこにこし始める。久々に生まれた男の子らしい。そう考えると、本当に人魚さんの男の子って生まれにくいんだなと……。両手に鈴なりになる子供達をどうしようかなと思っていると、ベルヘミアがぴょんぴょんと近付いてくる。


「お待たせしました、領主様。すみません、妊婦学習の時間だったので、奥に籠っていました」


「いえ、大丈夫です。というより、そちらを優先してもらった方が良いかと思いますが」


「いえいえ。もう終盤でしたので、次回に回しました。少しずつ結婚する子も増えてきたので、色々と教える事が増えています」


 その事自体が嬉しい悲鳴なのか、ベルヘミアが誇らしげに告げる。


「子供さん、増えると良いですね。人の子供さんの方は大丈夫ですか?」


「はい。そちらも母子共に元気です。畑の方の手伝いに出てくれたりと、私達に難しい事をしてくれるので……」


 にこにこと報告してくれる。良かった、愛されているのを凄く感じる。


「本日はどのようなご用件ですか? 先触れも無かったようですが……」


 少しだけ心配気味にベルヘミアが言う。緊急な話と思われたか。


「あぁ、問題が起こったとかの話では無いです。書状は出しましたが、竜の皆さんが『リザティア』に住む事になりました。将来的には『フィア』にも住んでもらいますが、今日は竜がどのくらいの速度で飛ぶのかの確認のため、ここまで来たのが主な理由です」


「そうですか、良かったです。何かあったのかと少し心配していましたが……。はい。書状の件は村長さんとも共有しています。ちなみに、『リザティア』からここまでどのくらいかかるんですか?」


 んー。三十分を表現する的確な対象が無い。『フィア』に関しては、時計が無いしな……。神様に頼む方が良いかな、時計。


「えーっと、ベルヘミアさんが集会所から村長さんの家に向かうくらいの時間でしょうか?」


 大体三十分弱だったはずだ。そのセリフに絶句が返る。


「馬車で四日の距離ですよね……。走るのは見ましたが、あの速度で四日もかかる距離が……」


「人魚さんの緊急の時にも、助けに出られるようになると思います。あぁ、それと大事なのはこっちです」


 そう告げて、ポケットから紙を取り出す。


「この形でこの模様の魚を知りませんか?」


 模様に関しては、生きている時と死んでいる時の模様を描いている。通常時は模様が無いし、興奮すると横縞が浮かぶ。死ぬと縦縞になるので、一般的に知られているのはこの縦縞模様のカツオだろう。


「あぁ、知っています。このくらいの大きさですよね?」


 とベルヘミアが両手を広げるが一メートルを超えている。大物過ぎ……。


「その半分くらいの大きさで良いのですが……」


「それなら群れで良く見かけます。年中いますよ」


 ふむふむ。良かった。ただ、何故か不思議そうに見られる。


「ただ、私達は好んで食べますが……。焼いたりするとあまり美味しくないのです……」


 あぁ、確かに焼くとちょっとパサつくので、他の魚の方が美味しいと感じるかもしれない。


「直接使いたい訳ではなく、加工品にしようかと考えています。脂の乗りはどうですか?」


「そうですね。まだ美味しくないと思います。もう二月ほど経たないとあまり好んでは食べないですね」


 と言う事は、まだいけるか……。鰹節の作り方なんて完全には知らないので、地球に戻るべきかな……。


「ありがとうございます。用意が整ったら、漁をお願いしても良いですか?」


「はい、領主様のためになるなら是非に」


 そんな感じで、お願い事をしてから現状を聞いてみたが、やはりベビーラッシュが開始し始めているようだ。人魚さんの妊娠願望はほぼ百パーセントだし、横の連携も厚い。旦那さんも立てるので、妊娠してからもごにょごにょして夫婦仲は揺るがないらしい。双方が良い関係っぽいので、ほっと胸を撫でおろす。


「じゃあ、また間を空けずに訪問します」


「その際には歓迎の準備をしておきます」


 そんな感じで、別れて、またブリューの元に戻る。


「あれ? 虎さん……」


 いざ戻ってみると、ブリューの足元で虎さんが寛いでいる。


『村に向かわれてから、しばらくすると威嚇に現れたんです。ただ、害意が無い事を伝えると、この通りです』


 寛がれる事はあっても寛ぐ事が出来るサイズじゃないので、虎さんもぽっすりとブリューの足と首に囲われて、ぬくぬく寛いでいる。


『北の方ではよく見かけましたが……。この辺りにも住んでいるんですね……』


 ちょっと誤解しているようなので、説明すると、虎さんに『念話』で仲間を連れてくるか聞いたようだが、虎さん的には必要ないらしい。気儘に一人で過ごすのが性に合っているらしい。ちゃんと竜を見ても、村を守ろうとしてくれたのが嬉しくて、ガシガシと撫でつける。


「さて、用事も終わったし、一旦戻ろうか」


 本当なら、外泊も覚悟していたが、ご近所へ顔を出したみたいな感じだなと思いながら、帰路に着いた。

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