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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第三章 異世界で子爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第665話 竜騎兵への第一歩

 窓の隙間の光に反応して目が覚める。疲れていたかと思ったが思った以上に寝起きは清々しい。窓を開けると、雲も無い青空が広がる。七月二十八日は快晴だ。丁度良い。鞍が出来ていれば竜に乗せてもらおうかなと思っていた。

 タロとヒメに朝ご飯をあげると、まだ構い足りないのか、ぴったりとくっついてきたが、また夜ねと伝えると、渋々離れた。保育所で子供達とも遊ぶので、そっちに思考も誘導されたようだ。リズを起こして、今日の予定を打ち合わせる。


「じゃあ、訓練はしても大丈夫なんだね?」


「うん、兵が一般人に接触する事は基本的に無いし、警邏の際に何か聞かれたら逆に不審者と考えた方が良いだろうしね。なので、兵と一緒に訓練をしてもらえればと思っている。チャットは書類作りが溜まっているだろうし。私は、ブリューと一緒に『フィア』まで行ってくる」


「鞍が出来ていたら?」


「うん。新しい海産物の宛ても出来たし。どこに建てるか、ちょっと下見してくるよ」


「分かった」


 そんな話をしていると、朝ご飯の声が侍女からかかる。食堂に向かって、食事を楽しみながら、先程のリズとの話を繰り返す。


「分かったー」


 フィアを始めとして、皆も訓練で良いという話だ。ドルはリズに重装の訓練を任せて、装備品のオーバーホールと盾の新造となる。丁度良い時間が出来たと笑っていた。ブリューは騎乗に関しては問題無いとの事なので、鞍次第かなと。侍従にネスへの伝言をお願いする。

 皆がそれぞれ、仕事に赴くのを見送り、私は自室に戻る。タロとヒメはちょっとだけ寂しそうだったけど、アーシーネが跨ると、楽しそうに保育所に向かった。アーシーネに乗って竜騎兵になるはずだったのに、何故かアーシーネが乗って狼騎兵になっているのはどういう事だろう。

 部屋の真ん中で、ヘイストの実験を始める。静物とか植物とか成長や風化が緩やかなものは良いのだろうけど、人間や動物はそうもいかないだろう。呼吸の流入量が正常な範囲で、音速の壁を越えてしまわないようなラインを探らないと怖いかな。ただ、あまりに早くし過ぎても、手に余ってしまうだろう。六十秒を三十秒にする辺りから初めて、秒刻みで削っていったが、六十秒を十五秒にする辺りで動かずにいると、呼吸が苦しくなり始めた。周囲に存在する空気の流入量と私の消費量が拮抗し始めたのだろう。大体四倍速辺りが現実的に人間に行使出来る限界なのだろうというのが分かった。動き回っている限りは問題無いが、人体相手は、この辺りを上限に考えておこう。四倍速で思考して行動出来るだけで十分以上にメリットはあるだろう。それにこの速度程度なら特に大きな負荷も無かった。何かを振り回したら、抵抗が発生するかなと思ったが、いつもより少し重いかな程度の感覚の違いしかない。もっと速度を上げれば、音速の壁を越えて衝撃波とかが出そうだが。

 ほっと一息ついて、お茶でももらおうかなと思っていると、ネスの弟子達が試作品の鞍を持ってきてくれたようだ。大部屋のブリューにお願いして付いてきてもらう。


「あぁ、これなら痛くなさそうですね。ありがたいです」


 首の付け根側に固定する形の鞍だが、固定用の皮にも毛皮や布でクッションさせている。それを見てブリューが喜ぶ。姿を竜に戻し、鞍を弟子の人達に取り付けてもらう。喉をクルクルと鳴らして、首を上下左右に動かして、可動域を確認している。問題なさそうなのか、人間臭い動きで頷く。


『大丈夫です。乗ってみて下さい』


 『馴致』とも『祈祷』とも違う感じで、声が頭の中で響く。これが『念話』か。受信は出来るっぽいが、こちらから送信は出来ないので、分かった旨を伝えて、鐙に足をかけて乗り込む。厳密には、鐙をよじ登ってから足をかけると言うべきか。ひらりと言うにはかなり情けない感じで、足を何とかかけて体をよじ登らせて跨る。これなら、上から着地する方が良かった気もする。お腹が邪魔で足が上がらないんだから。

 鞍の上はかなり広い。馬の鞍のように座って跨るというより、レーシングバイクのように上体をくっつけて、べたっとおぶさるような形になっている。鞍の無い場所を触ると、鱗の硬い感触を感じるが同時に温かさも感じる。変温動物ではなく、恒温動物なのだなと。


「んじゃ、ちょっと試験で飛んでみる。問題無ければ『フィア』の視察もしてくるね」


 周囲の人間にそう告げて、ブリューに声をかけると、てててっと皆から四つん這いで離れて、ふわりと優しく空に舞う。空に出てから分かったが、空気の幕がブリューよりも大分大きな範囲から出力されている。私は処理がややこしくなるので、直接スラスターを吹かす。でも竜は大きな繭状のキャノピーみたいに空気の層を作って、そこから吹かせているようだ。なので、風圧も感じないし、寒さも感じない。だから恒温動物なのかと感心した。自分が飛ぶのでもない、飛行機でもない、不思議な感触を楽しみながら、『リザティア』をくるりくるりと回る。ブリューに他の竜に成功と『フィア』への移動を伝えてもらって、一路南へ向かう。さて、どのくらいかかるのかな。楽しみだ。

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