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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第三章 異世界で子爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第660話 ダンジョンアタック 神の降臨

 ドルの横にばたりと腰を下ろして、大きく息を吐く。しんどかった。


「ありがとう、ドル。治すよ」


 左腕の重装を外してもらうがかなり綺麗にぽきりといったようだ。持ち上げるのに相当の激痛が走っただろうに……。そう思いながら神術を行使する。


「やはり、でたらめだな」


 ドルが左手をグーパーしながら苦笑を浮かべる。そんな中、皆が集まってくる。


「リナもありがとう。あれだけ奇麗に弾き飛ぶとは思ってなかったよ」


「某も驚いたで御座る。この盾は……。いや、何も申すまいて」


 最終的に山分けのために売るとでも思っているのかな。給与制だから一旦回収して、再配布を考えるのが筋だし、報酬も少し考えないといけない。


「フィア、気が抜けるよ。叫びながら走ってくるし」


「だって、こっちまで飛んできそうだったし。というか、何、あの牛もどき。超固い。切りつけたのに、噛みつかれたみたいに動かなかった。超危なかった」


 フィアがケラケラ笑いながら言うが、ロットが若干青い顔をしている。本当に女は度胸だよ。ロッサはドルの腕を心配して、張り付いているし、ティアナはチャットと一緒に何か話し込んでいる様子だった。ブリューは我が事のように嬉しそうな表情で、皆を見つめている。


「リズもありがとう。怖かったのに、頑張ってくれたよ」


「ううん。ドルとリナを信じていた。それに絶対にヒロが何とかしてくれるって確信していたし」


 にこりと微笑みながらリズが言うと、皆が頷く。それが若干面映ゆい。


「いやはや。疲れた。でも、これでダンジョンもクリアかな。最後は若返りのアーティファクトが出るのかな?」


 そう思いながらミノタウロスの様子を見る。ラミアの時もそうだが、巨体故に徐々に消えていっている。それに合わせてふわりふわりと光の粒が生まれ始めている。皆がワクワクした表情を浮かべながら、それを見守る。いや、チャット一人は今にも駆けださんばかりの勢いを溜めている。

 光は奔流となり、部屋全体を輝きに満たし始める。あれ? ちょっとおかしい? そんな事を考えていると、白かった光は虹色に姿を変えていく。どこまでも強い光に満たされて、思わず瞳を閉じて、開いた時には、人影が立っていた。


「我はベィリオーズ。成長を司る者なり。此度は信仰を司る者の代行として顕現した」


 年の頃は三十半ば、私よりも少し若いくらいの容姿の男性がふわりと浮きながら両腕を広げている。


「信仰厚き者よ……。汝の修練、そして仲間との絆、(まこと)に見事であった。故に、ここに褒美を取らせる」


 そう言いながら、微かにこちらにウィンクを送ってくる。


『詳細は後程説明します。今は話を合わせてもらえますか?』


 祈祷で声をかけられたので、返事をしておく。


『はい。分かりました』


「ありがたく頂戴致します」


 そう答えると、ベィリオーズの右手の上に時計のような物が三つ、出現する。


「これよりもその信仰を積み、広めん事を欲する」


 ふわりと浮いた三つの時計が私の前にふわふわと移動してくるので、両手を差し出すと、ことりと手に落ちる。


「また、汝らの活躍も見事であった。これよりも尚の修練を期待する。今、ここで成長の名において、今後の修練に祝福を与える」


 そう告げると、ブリューを除く皆がほのかに輝く。


「そして、竜よ。汝は完成された者故、祝福は与えられぬ。しかし、愛し子よ。完成された者が、尚の成長を求める姿は喜ばしく思う」


 ブリューに微笑みかけるベィリオーズ。それに応えるように微笑むブリュー。


「ベィリオーズ様。レデリーサ様より話をもらい、今この場所に、アキヒロ様と共に立っております。それは私の意思であり、望みです。そうなりたいと思う気持ち、竜として飛ぶだけでは味わえず、また竜として子を生すだけでは味わえぬ気持ちでしょう。このような運命を用意頂き、本当にありがとうございます」


 そう告げて笑いかけるブリューを見て、ベィリオーズが瞑目する。


「ふむ。レデリーサの気まぐれかと考えていたが、存外に良い影響を受け合っているのだな。良い、このまま好きに生きるが良い」


 微笑みと開かれた瞳には溢れんばかりの父性を感じられた。


「良い機会だ。顕現出来る時間は残り僅かだが、何ぞ質問があれば聞こう」


 ベィリオーズが言った瞬間、待ってましたとばかりにチャットが口を開く。


「今までのダンジョンでは、このような形で神様とお会いする事はありませんでした。また、ダンジョンそのものの構造、入り方も全く違いました。これは何故なのでしょう」


「汝らが称するダンジョンには二種類が存在する。一つは、既存の施設に我ら神が褒美を用意する物。一つは、信仰厚き者のために神が用意する物。後者に関しては、試練として信仰厚き者には伝えておる」


 ベィリオーズがそう答えるとチャットが考え込む。


「存分に愉快。今ここで全てを語るより、またの機会を設ける方が有意であろう。より難度を増したこの地を再び訪れるも良し。他の試練を訪れるも良し。再び汝らに出会える事を楽しみにしておる」


 その言葉を残すと、再度ベィリオーズが光に包み込まれる。強い光に思わず瞼を閉じ、開いた頃にはその姿を消していた。

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