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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第三章 異世界で子爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第654話 ダンジョンアタック 消える死体

 皆が頷いたと思っていたが、一人、首を傾げている。


「ブリュー……。何か、見える?」


「扉が……ありますよね?」


 ブリューがそう言うと、皆がブリューを見つめるので、ちょっと気圧されている。


「あ、待って。実は私にも扉は見えている」


 皆に無くて、私とブリューの共通点。この場合だと、『神術』は私、ブリュー、リナにある。と言う事は……。


「これ、神様関係だと思う……」


 『祈祷』の有無なんだろうな。この辺りなんだけどとリズに指し示すが、立体映像を通り抜ける感じで、貫通してちょっと驚く。


「ごめん。感触も無いし、そもそも見えないよ……。岩肌が見えるだけ……だけど」


 リズの言葉に、私は扉を押す事で答える。見た目の重厚感から考えると驚くほどに軽く、扉がすいっと開く。最終的に開き切った段階で、背後から驚きの声が上がる。


「突然階段が現れました……」


 ロットの愕然とした声。


「罠の感じも、してへんでしたよ」


 チャットの驚愕の声。

 下りの階段が黒々とした口を開ける。

 ちなみに、ある仮説を個人的には立てている。神に大切な人を失いたくないと強く願うから『神術』が生える。そうして『神術』を介してディシアと会話する事により『祈祷』は生えるのだろう。今まであった『祈祷』持ちの人は例外無く『神術』を持っていた。この扉は、そうして人を癒してきた人が、神と対話出来る事になって初めて姿を現す類の扉なのだろう……。そういえば、教会で奉仕活動をしている人も低い『神術』を持った人が多かった。神への感謝の言葉を繰り返すようになった段階で生えてきたのだろうか……。この世界祭司は存在しないが、実は『祈祷』持ちがその立場を担ってきたのではないだろうか。


「チャット、これがダンジョンなのかな?」


「いいえ……。こんな状況は初めてです……。大概、研究者の人が作った自衛のための設備です。こないな形で隠されている扉なんて初めてみました……」


 もしかすると、ダンジョンは複数種類存在するのかもしれない。取り合えず、既存の廃棄設備を利用したダンジョンと、神様が用意したダンジョン。これは後者なのだろうな……。


「さて、扉は開いた。どうするかな? 奥に進むか、戻るか。私は神様が用意した物なら、攻略するのが良いとは考える。少なくとも手に負えないと判断するまでは確認したく思う。手に負えない場合は大規模な魔術で撤退の時間は稼ぐつもりだよ」


 そう伝えると、皆が考え込む。話し合った方が良いんじゃないかなと伝えると、皆が集まって話し始める。十分ほども話していたらまとまったのか、ロットがこちらに向かって口を開く。


「初めての機会です。潜りましょう」


 その言葉に頷く一同を見渡し、頷きを返す。ブリューに関しても異存は無いようだ。


「じゃあ、進もう」


 扉を通ろうとした瞬間、風を軽く感じる。扉の内部から吹く風だ。中に入った瞬間、空気が清涼な物に変わる。何というか、クリーンルームとかデータセンターのサーバーエリアみたいに、エアコンで完全に管理されているような、匂いのしない、奇麗な空気という感じだろうか。


「あ、臭いが無くなった」


 リズ達女性陣が、ほっとした顔に変わるが、自分達の服とかを嗅いで、嫌そうな表情を浮かべる。布に付いた臭いは中々落ちないだろう。

 なんだかビルの非常階段を彷彿とさせる、階段を降りていく。周りの壁は石造りなのだが、ブロックのようにきれいに大きさが揃っているし、積んでいる隙間にはカミソリでも入り込めないくらいに隙間そのものが無い。表面も美しいままだ。


「しかし、どれだけの年月、ここに存在していたのでしょうか……。凄く綺麗です」


 思わずといった感じで、ロッサが呟く。私とブリューも含めて同感だったので、頷きを返す。三階分も降りると、通路のようなものに出る。そこは、通路自体が淡い光を発しており、読書をするには弱いが、動き回るには十分な程度の光量があった。方位磁針を見ると、針が動いているので、方角は分かる……。分かるのだが、普通動いたら落ち着くまでふらふらする針がびちっと止まるのは気持ちが悪い。絶対に神様が何かをやっている気がする。一旦松明を消し、ランタンのみ予備で点けておく。

 ロットを先頭に立てて、チャットに罠が無いかを調べてもらいながら、先に進む。地図を作りながら進んでいくが、脇道が無いので、単純な地図になっている。暫く歩いていると、ロットから声がかかる。


「ゴブリンらしき気配……。百メートルほど先に8体から10体」


 うん、私も気付いた……。と言うか、『警戒』を持った人間は皆、思っただろう……。


「ゴブリンに関して、唐突に現れました……。理由は分かりませんが、一旦は対処を優先しましょう」


 ロットの言葉に皆が、武器を用意し始める。百メートル先はやや広い部屋のようになっていて、ゴブリンが8体、うろついている。遮蔽物が無いので不意打ちは諦めて、リズ、ドル、リナを先頭に突っ込む。こちらに気付いたゴブリンが武器を振り回すが、重装相手には痛みも痒みも無い。後ろからフィアが飛び出し、殲滅し始めると、すぐに戦闘自体は終わった。しかし、後に残るはずのゴブリンの死体が、輪郭を失うようにボケて、ひゅるりと消える。


「あぁ……。これ……なんや……」


 チャットが小声で呟くのが耳に強く残った。

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