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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第三章 異世界で子爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第651話 営業さんの手配が整いました

「と言う事は、あの機械自体は輸出は不可能かい?」


 工場から出て、馬車に乗り込みながら、ノーウェが聞いてくる。


「物そのものを提供する事は可能ですが、まず川から一定量以上の水を確保する環境を作らなければならないですし、運用する人間への教育も必要です。また、壊れる可能性も高いので、保守整備も必要になります。となると、現在運用している人間と工房の人間を出さなければならなくなりますが、恒常的に供出し続けるのは不可能です。受け入れるだけの余力がある領地なら可能でしょうが、そもそも手一杯の場所ばかりかと考えます」


 テラクスタ領に関しても、耕作地の拡大に伴う有害動物の侵入が領内全体の大きな課題になっており、身動きが取れていなかった。よそも王都に行った際に話を聞く限りは大小の差はあれど変わらない。また、『リザティア』としても人手はなによりも財産だ。よそに貸し出し続ける訳にはいかない。


「また、鍛冶屋もそうですが、『リザティア』が服飾や技術、文化の発信源になっているのは訪れた人間なら誰でも分かります。そんな情報が一番に手に入り、便利な場所から不便な場所に移るというのはかなりの条件を提示しないと難しいと思いますが……」


 そう告げると、ノーウェが苦笑を浮かべる。


「私だって、引退したらここで過ごしたいと思うんだからね。そりゃ、領民に取ってみれば、離れたくないか……。なら、現物かい?」


「そうですね。糸や織物そのものを輸出する形が良いかと考えます。同品質であれば、格安と言って良いほどの価格になっていますので、輸送費を考えても十分商材としての魅力はあります。こちらとしては対価として、金ではなく現物での対応も可能ですし」


「現物と言う事は、綿花そのものや、食料などを考えれば良いのかな?」


「そうですね。こちらが嵩張らない物なので、同じく嵩張らない物の方が嬉しくは思います。食料というより、種の方がありがたいですね」


 そう答えると、ノーウェが若干黙考し始める。


「分かった。その辺りの条件を含めて、販路は当たってみる。どちらかというと、他国に持っていかれるより、まずはワラニカを潤す手段として考えた方が良さそうだね」


 そう言うと、執事と実際の販路に関して話をし始める。私は手持無沙汰になったので、リズと一緒に町を眺める。


「あぁ、そうそう」


 もうすぐ西門かなというタイミングで、ノーウェが話しかけてくる。


「ティルト男爵の件だけど、引継ぎが完了したよ。今は財産分与の最中だけど、八月の早い段階で『リザティア』に到着出来そうだと便りが来たね」


 ティルト男爵……。あぁ、議会の前に会った営業系の人か。んー。都合で二十日もかかっていないけど、余程段取りが上手い人なんだろうな。やっぱり営業のマネジメントで動いてもらう方が良いか。ノウハウを作って、人員を動かしてもらう。ふむ、なんとなく動かしたかが見えてきた。


「予想より大分早いですね。『リザティア』の引継ぎなんて、一年あっても終わらない気がしますが」


「それは、ここが特殊過ぎるよ。男爵の規模じゃないしね。子爵でもまだ余る。経済規模なら伯爵並みだろうしね。と言う訳で、受け入れの方をお願いしたいのだけど、大丈夫かな?」


「予定では、商工会のフェンの直下に就いてもらうつもりです。給与制で問題は無いですよね? 男爵時代の収入分くらいはカバー出来るように調整するつもりですが」


 そう告げると、ノーウェが苦笑を浮かべる。


「そこまでは求めていないんじゃないかな。まぁ、貰える物は貰う人間だとは思うけど。まずは適性を見定めて、その上で適当な金額を渡す形で問題無いよ」


 ふむ。じゃあ、試用期間でも設けるか。就労契約の方を少し調整しておこう。


「分かりました。受け入れの準備を進めます」


「もらった手紙だと、向こうも大分期待しているようだから、頼むね」


 そんな話をしていると、温泉宿に着いたので、ノーウェと分かれる。うちの執事が先触れで連絡を入れてくれていたので、テディが出て来たので軽く手だけ振って、後はお願いした。

 帰りはリズ達と、一緒に乗合馬車を乗り継いで帰る事にした。ただ、ノーウェとの話もあったので、久々に商工会議所に寄る事にした。リズは新商品の開発、特に服飾が集まっている部署に興味があるようなので、見学のお願いだけしておいた。リズの見学が終わるまでとフェンが丁度いたので、お邪魔して雑談という流れになった。ティルトが入ってくると、新規部署の立ち上げという形になるので、面映ゆいがリーダー論などぶちつつ、手配だけは済ませておいた。

 中々来る機会も無いので、あれやこれやと処理していたら、リズの方の見学も終わったようなので、一緒に領主館に帰る事にした。夕方まではまだ時間がありそうなので、政務をさぼる名目として、リズと一緒に訓練でもして汗を流そうかなと。折角の夏だし、少しは絞る事が出来れば良いなと儚い望みを思いつつ、グレイブを振る時間とあいなった。

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