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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第三章 異世界で子爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第635話 きゃーりゅーさーん

 昨日の晩が興奮してちょっと寝つきが悪かったので、朝は少し寝不足を感じながら、ベッドから降りる。折角の機会だから天気はどうかなと窓を開けると、快晴。夜の間は薄曇りな感じだったけど、雲も散ってくれたか。七月十八日は晴れと。タロとヒメの食事を受け取り、朝ご飯をあげる。食べ終わって、水をあげてから、竜に関して伝える。


『新しい家族が増えるよ』


『まま……ふえるの?』


『ぞういん……』


 二匹とも少し考えていたが、遊んでくれるかもと伝えると、興奮し始める。ぱたこんぱたこんとしっぽを振り出したのを体中をワシャワシャして静める。

 朝ご飯の最中は、仲間だけではなく使用人からも対処を聞かれたが、子供一人を招き入れる程度の用意で良いとは伝えた。レデリーサの話では、そんなに成長した感じの相手が来るとは思えない。十歳くらいまでの子供だろうとは推測している。


「アストさん、ティーシアさん、少しお願いが……」


 正直、子供の育て方とか分からないので、経験者にお願いしようかなと。すると、ティーシアの方が、工場の保育所で預かってくれると言う話になった。学校の方が始まったら、そちらに向かわせるし、家にいる間の情操教育も対応してくれるそうだ。


 食事が終わり、カビアと一緒に執務室に向かう。取り合えず訪問までに出来る限りの事は対応しておかないといけない。ちなみに、『リザティア』近辺への通知に関しては現在、兵達が対応中との事で安心した。兵達に関しても昨晩の段階で、レイから公知が出されているので特に問題は無さそうだ。ノーウェへの通知に関しては、日が昇った段階で鳩と伝令を出したようだ。鳩に乗せられる情報なんて最低限なので、並行して伝令を走らせる。


「ふーむ。予定が崩れた気がする。このままだと、竜に関わる諸対応が終わるまでは隠れられないか……」


「きっとご本人が来られると思いますよ?」


「ノーウェ様だよね……。あの方なら、そういう判断だろうね。まぁ、良いか。ちなみに、王都の方はどんな感じかな?」


 そう問うと、カビアが報告書のフォルダを開く。


「まだ、王都に潜入した程度ですね。ここから根を張って、情報を吸い上げ始めるので、まだかかりそうです」


「分かった。他と言えば……塩ギルドの動きは?」


「依然具体的な動きは無いです。まだ統計として出せるほどの数字が集められていない可能性はあります。元々余剰になるように『リザティア』の在庫は集めておりますし、他領に関しては販売が始まったばかりです。まだ、具体的な動きが出来るほどの情報は向こうも握っていないでしょう」


「んー。良い風に考えるとそうかな。最悪のケースも想定して、諜報側を厚めに動かしてもらえると助かる」


「分かりました。ティアナの方と調整するようにします」


 そんな話をしながら政務の方を進めていく。決裁書類は今日も山と積まれている。

 結局昼前辺りで一段落付いたので、自室に戻る。リズと準備の方を進めていきたい。


「あれ? おかえり。お仕事、もう終わったの?」


「うん、そろそろ竜も来るだろうし、さっさと終わらせた。準備の方はどう?」


「お母さんが部屋に小さなベッドを運び込んだって言ってたよ。向こうで住まわせる気みたい」


「そっか……。子育ての経験がある人の方が良いと思うけど、負担にならないかな……」


「良いんじゃないかな。偶に、お父さんもお母さんも世話になりすぎているって言ってたから。ヒロが頼んだ事を喜んでると思うよ。ヒロ、殆ど人に頼らないし」


 リズがちょっと苦笑を浮かべながら言う。


「うーん……。あの二人にもそんな評価なんだ……。まぁ、確かに自分で何でもしていたしね。逆にこっちに無理矢理呼んだとすら思っていたけど……」


「家があって、仕事があって、給料がもらえて、食事もある。トルカだったらそんな生活出来ないし。少し楽をしすぎ?」


「生活環境を変えてもらったと言うのは負担だとは思うよ。ただ、うん。二人が気にすると言うなら、対応をお願いしちゃおうかな……」


「うん。それで良いと思う」


 そんな感じで、竜さんが来てからの話を二人で煮詰めていく事にした。

 そろそろお昼かなと思い始めた頃に、ノックの音が響く。侍女が空に竜が飛んでいる旨を伝えてくるので、リズと顔を見合わせ、庭の方に出る。仲間達にも伝わったのか、ばらばらと館から出て、五稜郭の中心に集まってくる。


 上空では奇麗に編隊を組んだ竜達がくるりくるりと旋回している。しかし、大きい。レデリーサらしき竜が五十メートル近そうなサイズ。一番小さな竜でも三十メートルはありそうだ。


「ワイバーンとか目じゃないね……。あれだけの巨体を維持するのが核十個って、どれだけ効率が良いんだか……」


 思わず漏れた呟きに、皆が激しく賛同してくれる。徐々に降りてきた竜達の姿に住人達も気付いたのか、町の方では歓声みたいなのが聞こえてくる。悲鳴の類は聞こえてこないのできちんと事前連絡をしたのが功を奏したのだろう。兵達の頑張りに敬意を表したい。

 後三十メートルくらいかなと思ったところで先頭の一際大きな竜が一気に下に向かってきて、地面すれすれのところで一瞬停止する。その瞬間、姿が薄くなったかと思うと、レデリーサが昨日の服装のままでしゅたっと地面に立っていた。変身って、こんな速度で変化するんだ……。


「こんにちは、領主様」


「こんにちは、レデリーサさん。時間通りですね」


 笑顔で告げてくるレデリーサに軽く会釈する。


「はい。皆も楽しみにしていました。少し下がってもらっても良いですか。まだ少し慣れていないので、風をまき散らすと思います」


 レデリーサの言葉に、周囲を囲んでいた皆が、大きく下がる。すると、上空で旋回していた少し小ぶりな竜達が、着陸態勢に入る。次々と降りてくるが、確かに地面すれすれになると、強風が吹き荒れる。騎乗するとなると、ちょっと大変かもしれないなと思っていると、次々と変身を済ませて、並んでいく。皆、お揃いの空色のワンピースを着て可愛らしい女の子達がしずしずと列を為す。レデリーサも二十から二十五歳くらいの姿に見えるが、一番大きな子でも中学生くらいだし、一番小さな子は小学生か幼稚園くらいに見える。


「では紹介しますね。一番大きな子がブリュー、この子がゲティ……」


 そんな感じで、十人を紹介してくれる。人懐っこく、興味深そうな表情で、こくりと頭を下げてくる姿は微笑ましい。


「最後に、娘のアーシーネです。ご挨拶は?」


「あい!! あーしーねでつ!! よおちくおねがいちまつ!!」


 ちょこんと幼稚園くらいの子が頭を下げる。五、六歳な感じだろうか。おしゃまな女の子と言う感じだ。しかし、どの子も顔立ちが整っていて、竜の変身の美意識と言うのが良く分からなくなる。


「はい。初めまして。アキヒロです。呼びやすいように、呼んで下さい」


「うー、おいたん?」


 はは。おじさん扱いか。もう三十五だし、しょうがないかな。微笑み頭を撫でると、嬉しそうにする。


「初めまして、リザティアだよ。よろしくね」


 リズが挨拶すると、少しだけ恥ずかしそうにワンピースの裾を握りながら、おずおずと頭を下げる。


「おねーたん、よおちくおねがいちまつ」


 言い終えると、頑張ったと言う感じで大きく微笑みレデリーサの方を向くのが微笑ましい。


「話には出なかったですが、ブリューがまとめ役になっています。何かあれば、ブリューに相談してもらえれば大丈夫だと思います」


 レデリーサが言うと、ブリューと呼ばれた、銀髪に黒のメッシュが入った一番大きな子が、前に出てくる。


「一番年上と言う事でまとめ役をしています。どうぞよろしくお願いします」


 しっかりした受け答えにほっとした。でも、少しはにかんでいる感じが人の好さを感じさせる。


「よろしくお願いします。しかし、皆、同じ服装なんですね」


 顔の美醜の件と合わせて、何気なく聞くと、レデリーサが答えてくれる。


「あぁ、姿を変える際に、参考になる服が一揃えしかなかったので同じ服装です。服に見えますが、そう見せているだけで体毛と一緒ですし、任意で脱げます。新しい服を認識したら、姿を変えられますよ。それに顔や姿に関してはそれぞれが知った人間の平均を考えて、決めたみたいです。ただ、本人の意識の年齢に引っ張られるので、この姿ですね」


 着脱は見た目が変わるだけらしい。お風呂をどうするのかなと聞くと、水浴びとかはしていたみたいなので、問題無いらしい。顔が整ったと感じるのは、平均に近付けているので、親しみやすいと言うか、見慣れた感覚になるからかな。意識と言う事はやはり、百歳を超えて自我が生まれた辺りから何年と言う話なのだろうか。


「お母さんと離れるのは大丈夫ですか?」


 てとてとと近付いてきたアーシーネを抱きかかえて、聞いてみる。


「数年単位で離れて生活しているので、大丈夫です。何かあれば会話は出来ます。ご迷惑はおかけしません」


 レデリーサが言うと、きょとんとした顔で、アーシーネが考えていたが、


「あいっ!!」


 と元気良く手を上げる。


「では、お預かりします。何かあれば、皆さんそれぞれレデリーサさんに伝えてもらって大丈夫です」


「はい。よろしくお願いします」


 そう告げると、ぽんっと飛び上がったレデリーサがふわっと変身して、そのまま上空に上がっていく。風もそよっと感じた程度だ。慣れれば影響を最小限に出来るのかな。迎えた皆で手を振ると、何度か旋回して、すいっと北東の方に去っていった。


「じゃあ、お昼ご飯にしようか」


 そう告げると、竜の皆がきらきらした瞳で、こくこくと頷いた。

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