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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第三章 異世界で子爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第633話 『変身』とはなんぞいや?

「ちなみに、竜の方とはどういう形でコミュニケーションを取ったら良いですか?」


「肺が有りますし、声帯と舌もあります。若干舌ったらずにはなりますが、フーア大陸の共通語は話せます」


「竜の方々はどのような形でコミュニケーションを取っているんですか?」


「説明が難しいのですが、竜同士は思いが伝わりあうと言うのでしょうか……。魔素が存在する場所では、距離に関係なくコミュニケーションが可能です」


 あぁ、それが『念話』か……。しかし、良い事を聞いた。竜騎士と言うより、斥候兼伝令の方が重宝しそうな気がしてきたな……。


「ちなみに、核の品質とかで味が変わったり、嬉しさが変わったりしますか?」


「いいえ。味の感覚は無いですね。必要量を摂取するだけです。ただ、品質が良ければ、量が必要なくなるでしょう」


 なるほど……。ダイアウルフの核なら量は少なくて済むだろうけど、高価過ぎるか。スライムの核を確保出来るように冒険者ギルドと調整しておこう。


「ちなみに、姿を変えていますが、どのような利点があるんでしょう?」


「あぁ。元々実験体として、完成した際には、全体の母体になる事を求められていました。なので、竜には雌しかいないです。各種族に姿を変えて、精を授かる形ですね。また、脳構造と体の組成が変わるので、竜の体の時に使えていた事が使えなくなったりしますし、体に引っ張られます。人間になった場合は、経口摂取での食事が必要になりますし、排泄も行うようになりますね。後人間の場合は、人間としか子供は生まれません。竜は胎生なので、どちらも大丈夫です」


 あー、人魚さんと同じで、竜を生むか対象種族を生むかの二択なんだ。まぁ、完全体が目的だし、そこまで増える気が無いなら、竜側が手出しをしなければコントロールは可能か。人間の生存領域であまり発見されないのは、数を調整しているのだろう。


「何となく分かりました。なるべく危険が無いように運用します。出来れば、『念話』を使って情報をやり取りしてもらうのが主になると思います。それを受けて動く人間が乗り込む形になるでしょう。ちなみに娘さんですが、ある程度複雑な話や指示を理解する事は可能ですか?」


「どうでしょう。まだ幼いので、きちんと指示を出さないと難しいでしょう。その辺りはお任せします。好きなように育って良いのが、竜ですから。本能の部分も危険は無いでしょう。身を守ると言うのはありますが、それは人間も同じでしょうし。主の指示には従いますので、何かあれば呼んでもらえれば大丈夫です」


 そんな感じで、諸注意を話し合っていたら、魚もエールも無くなった。


「はぁぁ……。人間の姿になって、色々お仕事を手伝いながら対価を得て、食事と言う物を楽しんでいましたが……。このように美味で楽しい経験をしたのは初めてです」


 まぁ、確かに……。他の場所では、まだまだ食生活の改善までは至っていないだろう。


「お分かりのように私も少し特殊です。そういう意味では、ここでの生活を満喫してもらえればと思います」


「ふふ。娘が羨ましいです。是非堪能させてあげて下さい」


 ノックの音が響き、デザートが入ってくるかと思えば、カップに入った香りの高い、湯気の上がる液体が置かれる。カップの温度を感じて、ちびりと口に含むと生姜の鮮烈な香りと、素朴な甘み……。あぁ、麦芽水飴か。これ、飴湯だ。夏に冷やし飴じゃなくて、熱々の飴湯で体を温めて、逆に涼を感じさせる寸法か……。


「うわぁ……。香りも良いし、甘いですね。ふふふ。私まで住みたくなってしまいます」


「住まわれますか?」


 そう聞くと、レデリーサが若干の苦笑を浮かべる。


「定住するには少し忙しい立場なので。ちなみに、あなたの詳細を神に聞いても良いですか?」


「はい。やり取りする情報を制限する権利は無いので、好きに聞いてみて下さい。何かあれば、娘さん経由で伝えて下さい」


 そんな感じでほっと一息吐きながら、飴湯を飲み干す。


「では、食事も終わりでしょう。竜の姿で来られると言うのであれば、領内に話をしておきます。明日の昼以降くらいに公園の先の領主館に降りてもらって良いですか?」


「分かりました。他の者も一緒に連れてきます」


 和やかな雰囲気で、料亭の玄関まで進む。そこで女将にバトンタッチして、ランタンを片手に引き戸まで先導してもらう。


「では、明日」


「はい。楽しみにしています」


 レデリーサがこくりと頷き、女将の後を追う。姿が見えなくなった段階で、私は板長の方に向き直り、今日の料理を労う。


「突然の来訪にも関わらず、ありがとうございました。豆腐田楽の味噌の上に乗せていた苦みのある木の実が香ばしくてよく味噌に合っていました」


「ティコルの実ですね。単品で食べるには少しえぐみと苦味が強いですが、味噌と合わせると、良い感じで味に奥行きが出ます」


「腕を上げられましたね。また、訪問するのが楽しみです」


 そう告げて、勘定を済ませて、私も女将に先導される。


「では、また」


「はい。またのお越しをお待ちしております」


 引き戸から出て、穏やかに微笑みながら、伝えてくれる。


 さて、帰ったら、レイとカビアに調整しないと駄目だな……。リズもそうだし、娘さんの年齢によってはアストやティーシアにお願いする事も出てくるか……。

 そんな事を考えながら、てくてくと領主館まで戻る事にした。

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