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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第三章 異世界で子爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?

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第625話 必ずしも上手くいく訳も無いので矯正します

 他の町ではもう眠る時間だろうけど、『リザティア』や歓楽街では宵の口だ。というのも、石鹸と並行して獣脂蝋燭の量産も行っているため、思った以上に夜間の光熱費がかからない。各家庭が夜の団欒を楽しみ、私達はその灯りを頼りに道を歩ける。無限点灯の魔道具は持ってきてはいるが、使うのは公園を抜ける時くらいかな。カーテンと言う概念がまだまだ薄いので、開け放たれた家々の窓から影法師が躍るのが見えて、各家庭の楽し気な雰囲気が伝わってくるのが嬉しい。


「カーテンとかもそろそろ作っても良いかな……」


「かーてん?」


 リズが、こくんと首を傾げる。


「窓に取り付ける布……かな。日の光や風を抑える機能を持っている。風にたなびく様子も奇麗だよ」


「ふーん。朝の光がちょっときついから、それを抑えてくれるのは嬉しいかも……」


「でも、明るくないと、リズ起きないしね」


 私が苦笑を浮かべると、ぽかぽかとリズが恥ずかしそうな顔で叩いてくるので、降参降参と叫びながら、公園を抜ける。警護の人に挨拶をして、領主館に入る。

 部屋に戻り、蝋燭を灯すと、二匹はすやすやと眠っていた。窓を開けると、星明りで部屋の中が青く輝く。その中に真白いリズがぼぉっと輝いている。あぁ、奇麗だなと思って、手を差し出そうとすると、ノックの音に邪魔される。


「ん? フィアっぽい?」


 二人で首を傾げながら、扉を開けると、フィアがちょっと困った顔で立っていた。


「どうしたの? 中に入って」


 私がそう告げると、にへっと笑って入ってくるが、ちょっと元気がない。


 ソファーに座ったフィアに氷水のカップを渡す。ちびちびと飲みながら、会話の端緒を求めているような目を向けてくる。ソファーの向かいに座った私とリズが顔を合わせるが皆目見当もつかない。ロットと喧嘩をするというのはロットの性格を考えると考えにくいし……。んー、仕事の問題かな。


「練兵で、問題が発生しているの?」


 聞いてみると、少しびくっとした後、こくりと頷く。


「でも、元軍人の古参が中心だから、問題なんて早々起きないと思っていたけど……」


 そう促してみると、フィアが口を開く。


「問題って程じゃないけど、冒険者経由で入ってきた人間の間に不満がちょっとあるっぽい」


 ハーティス経由で冒険者の斡旋を受けて、軍に編入したのは二百人ほど。護衛をやっていくにも中途半端な数のパーティーに未来は無いので、それならばとある程度生活が安定する軍で将来設計をするというのが狙いだったけど……。


「不満って……。給料としては護衛をやっていたとしても同じか、下手したらそれ以上に渡しているし。不満の元が分からない……」


「んー。八等級って、それなりに強くなってきたころじゃん? 個人主義というか、腕っぷしで物を語りたくなってくる頃っぽいのかな。リーダーの言っている集団戦と言う部分に不満と言うか、腕っぷしに差があるのに給料が横並びってところに不満があるっぽい」


 うわー。そんなん知らんわ……。軍事組織なんて、個々の特化した性能なんて正直邪魔だ。最大公約数が隊として機能すると認識出来るレベルになるから、どんなに個々人の実力が高くても、集団として動けないなら、それは邪魔な因子でしかない。アニメとかでエースが一人で戦場を制圧するような話はあるけど、現実そこまで隔絶した実力があればだ。どんぐりの背比べ程度でエースになれるほど、戦場は甘くない。この前のオークの首領レベルで初めて、エースって感じじゃないのかな。


「首にする? 冒険者の斡旋はギルドの方からの希望だし、使えない人材なら、返してしまった方が良いかと思うけど……」


「全体の士気を考えると、あまり今の段階で切るのは良いとは思えないかな。育てきれないのを人材の方のせいにしていると見られると、訓練にも支障が出るかも。超面倒くさいけど……」


 はぁ……。フィアの口から全体の士気とか出てくるのに驚いた。この子も成長しているのか。


「原因は腕っぷしが認められないって話だよね? 曲がりなりにも、新兵訓練は切り抜けたんだよね?」


「うん。ただ、教官役がまだ育っていない頃の人間もいるから。ちょっと序盤の人はばらつきがあるかも……」


 海兵式新兵訓練の基本コンセプトは個の否定と、団体意識の醸成だ。ただ、この部分が序盤の頃は理解されずに惰性で訓練内容だけ消化していた時期があるのは否めない。そこまで目が向いてなかった部分はあるし、私も試行錯誤だった。


「そっか。んじゃ、一回へし折っちゃうか……。私も最近訓練に参加出来ていなかったし、ちょっと皆で長い期間『リザティア』を離れたいと思っているから。後顧の憂いは断ちたいな」


「へし折るってどうするの?」


 リズが、きょとんとした表情を浮かべる。


「フィア、問題の人間は何人くらい?」


「二十一人かな」


 うーん、入ってきた一割か……。そりゃ、影響が出そうだな。それを考慮出来るんだから、フィアも十分、将としての目と自覚が出来てきたかな。


「二十一人対一人で負けたら、ちょっとはへし折れてくれるかな。演出はこっちでやるから、明日練兵室に呼んでもらえるかな」


「うん、分かった。リーダー、ごめん。任せてくれたのに上手く出来なくて」


「いや。問題があった時にきちんと報告してもらえて本当に助かっている。それに現場を見ていないと意見も言えないんだから、十分フィアは頑張っている。それに少々腕っぷしがって言っても、フィアの相手なんて出来ないでしょ?」


「うん、一対一なら問題無いかな。なんだか、昔に比べていきなり強くなった気がするけど、なんでなんだろう……」


 そりゃ、あなた。『敏捷』が1.00を超過したからだと思いますわよ。元々訓練の素質はあったし、それにスキルが付いて完全に花開いていっている感じなんだろうな。


「それが、実力じゃないの? 我流で訓練をしていたのに、軍の制式な剣術を教えてもらっているし、その上、色々な人間と訓練を介して、学んでいっているだろうから。向上心がある限りは強くなるよ」


 そう告げると、嬉しそうに微笑む。


「んじゃ、明日の調整だけお願い出来るかな。政務の方をこなさないといけないから、昼ご飯の前あたりにちゃっちゃと片付けるよ」


「分かった。そのくらいの時間に合わせて調整する」


「ん、じゃあ、ゆっくり休む事。おやすみ」


「おやすみー」


 フィアが、私とリズに手を振って、部屋を出ていく。んー、色々エロい事を考えていたけど、ちょっと雰囲気が台無しになった。


「でも、へし折るにしてもどうするの? 二十一人も相手にするの、大変だと思うけど……」


「うーん、そこはあんまり問題無いかな。訓練で多対一は想定していたし、魔術も解禁しちゃうから。自分の守るべき人間に完膚なきまでに負ければ、ちょっとは考え方も改めてくれるんじゃないかな。そうでなければ、その時は冒険者に戻った方が良い。いつか仲間の兵を殺す人間になると思うから。冒険者でも同じかな。仲間を殺すと思うよ」


「ふーん、そっか。そこまで考えているなら良いかな。見学するね」


「見世物になる程度には頑張るよ」


 そんな話をしながら、ベッドに潜り込む。エロエロは無しだが、手をつなぎ、ほのかな温もりを感じながら、意識を沈めていった。

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