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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第三章 異世界で子爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第614話 生まれて初めての明示的な殺人

 少しだけ暑いなと思いながら、目を覚ます。水分が足りないのか、目を開けるとしょぼしょぼする。晩に閉めた窓を開けて、外の空気を流しながら、テーブルの上のカップに冷水を注ぎ、飲み干す。水分を取れば、目の方もすっきりと開くようになった。昨日の晩はお風呂に入ってから水分補給を忘れていたか……。寝汗をかいたからか軽い脱水状態になっていたのかもしれない。

 食堂に向かい、タロとヒメの朝ご飯をもらって、部屋に戻る。昨日頑張っていたし、お腹空いているかな。筋肉痛とかになっていたらどうしよう。そんな事を考えながら、タロとヒメを起こす。いつもはすっと起きるが、疲労が溜まっていたのか軽くぼけーっと目を開いて辺りを見回していたが、私に気付くと、嬉しそうにしっぽを振り始める。朝ご飯と水の皿に水を生んで一緒に置いておく。昨日頑張ったのがまだ続いているのか、旺盛な食欲でがつがつと平らげていっていた。

 その間にと、リズを起こすと、こちらはすんなりと起きてくれる。昨日は早めに寝たので、それが出ているのかな。


「おはよう。昨日はずっと赤ちゃんの面倒を見ていたけど、疲れは残っていない?」


「うん、ヒロみたいに、ずっと心配していた訳じゃないから、大丈夫。寝たのも早かったから、元気」


 そう言って、笑顔を浮かべてくれる。


「爽やかな朝に恐縮だけど、結婚式の時に捕らえた暗殺を指示していた人達に関して、今日刑を執行する予定になっている」


「執行……と言う事は死罪?」


「そうなるね。ダブティアの方ではかなり過酷に対応したようだから、それに合わせないとおかしな話にもなるから」


 そう告げると、リズが少しだけ心配そうな表情を浮かべる。


「ヒロは大丈夫なの? あまり死に、それも人の死に関わるのは好きじゃなかったと思うけど」


「信賞必罰は世の常だしね。流石に私を、身内を狙われたのに甘い対応をすると、模倣犯が増える可能性もあるから。ここはもう、気持ちを切り替える」


 言った瞬間、リズがそっと頭を抱えてくる。


「うん、分かった。ヒロが決めたのなら、何も言わない。でも、私も妻として同じように抱えていくつもりだから。一緒に先に進もう?」


 リズの頭をぽんぽんと叩いて離してもらい、そっと頬に触れる。


「ありがとう。さぁ、朝食を食べようか」


 右手を差し出して、リズがベッドから降りるのを助ける。着替えてしまって、食堂に向かう。しかし、日に日に暑くなってくる。廊下に面した窓からはギラギラと言っても良いような太陽が徐々に登っている。あぁ、今日は快晴か。七月十六日は処刑日和と。この世界の人間にとってはルールを守らない人間の処罰は娯楽になるから、天気が良くて良かったと思うしかないか。そんな事を考えながら廊下を進み、食堂に入ると皆はもう席に着いていた。食事が始まり、雑談を交わしているが、仲間達は処刑の際の警護に入ってくれるようだ。アストは流石に休めないので猟に出るようだが、ティーシアは工場の人間が出てこないので、処刑が終わってから出勤と言う形になるらしい。


 食事を終わらせると、皆がそれぞれの部屋に戻る。私は執務室にカビアと一緒に向かう。


「さて、処刑の進行の詳細を教えてもらえるかな」


「はい。まず実施時刻ですが、昼食の前と言う事になっております。場所は『リザティア』中央の大通りの真ん中の広場ですね。そちらで実施致します。昨日の段階で刑場の設営及び各戸への通達は完了しております。ただ、縛り首でよろしいのでしょうか?」


「他だと斬首だったっけ。それだと処刑人の腕によって苦しむのが変わっちゃうから。もう死ぬだけなら、確実に殺してあげたいという感じかな。後、釣っている状態の方が晒しやすいでしょ?」


「そうですね。斬首の場合だと、首を晒す形になりますが、刑場の設営そのままで晒せますので、そちらの方が楽ですね。ちなみに朝食の際にも話は出ておりましたが、基本的に娯楽扱いになりますので、見物人は増えます。政務及び各店舗、歓楽街に関しても最低限の人員のみを確保して、その他は刑の執行までは休暇となっております」


 この世界の明確なお休みって刑の執行の時だけと言うのがもうなんとも。後は収穫祭と言っていたけど、まだ直に見た訳では無いので、何とも言えない。


「この機に乗じてというのは大丈夫そうかな」


「はい。諜報の方でも定期的に探っていますが、特に問題は無いです。そもそも後ろ盾が無い対象の処刑ですし、単独で暗殺を企てる意味は現在低いです。また突発的な場合の対処も護衛に教示しています。要人警護術でしたか?」


 見た目上、たかが子爵の命を狙っても利点は少ない。それに護衛の方も大分慣れてきた感じはするかな。


「じゃあ、刑場の方の対応はお願い。最終的な指示は出すけど、基本的に任せてしまっていいよね?」


「はい。やる事は変わりませんので、こちらに任せてもらって大丈夫です」


「分かった。後は例の件、どうなったかな?」


 そう言うと、カビアがふわりと微笑む。


「全員『リザティア』に入っております。刑の執行後でよろしいでしょうか?」


「うん。どうせ気が滅入るだろうから、少しでも救いがあった方が助かる」


 これがあるから、今回の刑の執行も我慢出来ると考えている。

 さて、これから私は、明示的に人を殺そうと考えている。現代日本で考えても刑の執行は重たい話だ。ただ、将来の事を考えればここで引く事は出来ない。せめてその生と死に意味があったであろう事だけを願い祈りながら、カビアが準備に出ていくまで仕事を続けていた。

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