表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第三章 異世界で子爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
603/810

第600話 ペールメント教室

 食堂に入ると仲間達は先に座って今日の予定を話し合っているようだった。今日一日は休みで明日は朝から『リザティア』に向かう事になる。お土産も買っているので訓練に費やすかという方針が大半だった。チャットは再度学校関係者と最終の打ち合わせを行うらしい。それにティアナとカビアも付き添ってくれる。教員の拡充は望むところだし、新学期は十月から始まると言う事で、そろそろ最終的な調整まで済ませたい。

 因みに、九月卒業、十月新学期開始と言うのも理由があって、七月に予算の執行に関わる最終調整があるので、この時点で軍及び内政に関わる予算が確定する。その枠の中で九月に卒業する若者達を迎え入れていく流れだ。その騒動が収まるのが十月辺りなので落ち着いた頃に新学期が始まるという算段になる。


 リズが引き続きペルティアからお菓子作りを習うと言うと、フィアやロッサ、リナまでもが一緒に習いたいという話になった。どの世界も乙女とはこういうものかとちょっとほんわかしてしまった。フィアが食べる専門から作る方に興味が湧くとか感慨深い。


「リーダー、何、そのお父さんみたいな表情。超きもい!!」


 座った目から繰り出される罵倒もツンデレっぽく受け流しておく。うんうん、愛する人にお菓子をプレゼント。素晴らしい、良いね。


 そんな感じで話をしていると、ロスティーとノーウェ達が若干疲労が残った面持ちで食堂に入ってくる。ただ、表情は軽いので片付いたのかな。


「遅くなった」


 ロスティーが告げながら座ると、食事が始まる。野菜中心の軽めの朝ご飯。徹夜組もいると言う事でかなり楽な食事になっている。


「して、昨晩の騒動の顛末はいかがでしょうか?」


 聞くとロスティーとノーウェが顔を見合わせて、ノーウェが口を開く。


「うん、傭兵ギルドの人間なのは確定だよ。今、契約書の開示を求めている。素直に応じてくれているので助かっている。犠牲者も出ていないので遺恨も無いし、素直なものだよ。そういう意味では、昨晩は助かったよ」


「傭兵ギルドですか。直接使う事は無かったですが、国の宰相の屋敷に攻め入るような仕事も受けるのですか?」


「んー。ギルドが各国の国政に関わるのはご法度だからね。ワラニカの国政には興味は無いし、あくまでも契約者との契約の履行のための行動だよ。そこに善悪も打算もない。目標に対して、実行に関わる経費を出せば、実施するだけだから。刃物と変わらないよ」


 ノーウェがさばさばした口調で言う。


「冒険者ギルドの時は大分ワラニカの経済に対して打撃を与えてくれたようですが……」


 そう言うと、ノーウェが若干の渋面を見せる。


「そうだね。ギルドは国を跨ぐ組織として運用する代わりに、各国への干渉は原則不可能になっている。それを一国に対して不利益をもたらすと算段して行動したという事実が確認出来たが故に各国が協力して、早期に解体再編成と言う流れになった。大きな権力を維持するためには履行しなければならない義務もまた大きい。傭兵ギルドの方は現実主義者が多いから。理性的だよ」


「傭兵ギルド側へのお咎めは無しですか?」


 私が問うと苦笑が返る。


「そういう事になるね。あくまで、ワラニカの中の問題だから。傭兵ギルドは報酬を提示されて、業務を履行しただけ。ここに目論見も感情も無い。そういう組織だから。国の動向になんて興味ないよ。仕事を依頼してくる相手が誰であろうと客だし、実行に必要な報酬を提示して、仕事をするだけだから」


 ふーむ。思った以上に理性的でシビアな見解だな。ロスティーも異論がないのか、静かに食事を進めている。


「今日は後片付けで一日潰れそうだよ。君達はどうするのかな?」


 そう言われて、先程相談していた内容を告げると、ペルティアが大層喜んだ表情を浮かべる。


「あらあら、あなた。沢山の孫が出来たみたいで幸せね。皆さん、楽しんでもらえたら、嬉しいわ」


「君はどうするんだい?」


「ティアナもカビアも学校関係の最終調整に回りますし、ペールメントとうちの子達の様子でも見ておこうかと。屋敷の早期警戒に犬や狼は有効だと考えていましたが、実際に体験して確信しましたし。どういう事を教えているのか、少し見学しようかと考えています」


「そうかい。じゃあ、庭師に案内させるようにしておくよ。改めて昨夜の顛末に関してはまとめて説明するようにする」


 ノーウェがそう言うと、食事が終わったロスティーと一緒に奥に向かって歩き出す。リズ達はペルティアと一緒に厨房の方に向かう。男性陣は練兵室に、チャットとティアナとカビアとテスラは馬車に乗って学校の方に向かうようだ。


 私は部屋に戻り、二匹を抱えて、食堂の大開放から庭に抜ける。


『まま、いっしょ?』


『じゅぎょううける?』


 私は見ていると告げると、二匹が嬉しそうに、張り切り始める。少し待っていると、庭師がペールメントを始めとして数十匹の狼の群れを連れてくる。落ち着いた様子で昨夜の興奮状態も収まっているようだ。嬉しそうにタロとヒメも、たーっと向かっていき、ペールメントに挨拶をして群れの中に溶け込む。


 群れでの走り方や、休み方、後は庭の中に紛れ込んでくる獲物の取り方などを群れ単位でどうするかをペールメントが指揮しながら教えているのが『馴致』を介して流れ込んでくる。思った以上に複雑で繊細な指揮をしている。


 お昼くらいまで延々と庭師と一緒にその様子を眺めながら、狼の出産や育て方に関して助言をもらう。私は犬の育て方しか知らないし、出産に関わる部分は全く分からない。その辺り貴重な情報をもらいながら群れを追っていく。どうもこの世界だと、一年目の子供でも出産は大丈夫そうだ。ヒメの子供か。タロと一緒になると銀なのか白なのか。ちょっと楽しみだなと思いながら、中々示唆に富む、狼達の組織運営を学び、楽しんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブックマーク、感想、評価を頂きまして、ありがとうございます。孤独な作品作成の中で皆様の思いが指針となり、モチベーション維持となっております。これからも末永いお付き合いのほど宜しくお願い申し上げます。 twitterでつぶやいて下さる方もいらっしゃるのでアカウント(@n0885dc)を作りました。もしよろしければそちらでもコンタクトして下さい。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ