表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第三章 異世界で子爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
597/810

第594話 議会の後の懇親会

 侍女と一緒に食堂に向かうと、そのまま通り過ぎてウッドデッキの方に案内される。大開放から眺めると、庭にバーベキューのような準備がされている。燦々(さんさん)と照り付ける太陽の中、庭に出てみると、いくつかの集団が網を囲んで和気藹々(わきあいあい)と話しをしている。


「ロスティー公爵閣下、ノーウェ伯爵閣下。外で食事とは珍しいですね」


 庭木の下の陰に用意された椅子に座ってお客さんと談笑しているロスティー夫妻に手を振りながら近付く。仲間達もそれぞれ席を用意してもらって、既に着席して食事を始めている。周りを見渡すと、各家の護衛の兵も見えるので、一緒でも大丈夫か。仲間とは言え、守秘義務契約は結んでいるし、信頼している。


「あぁ、来た来た。遅かったね」


 後ろを向いていたノーウェが赤ちゃんを抱いて、声をかけてくる。その声に驚いたのか、赤ちゃんが泣き出しそうになったのをよしよしと抱きかかえなおす。ゆらゆらと揺らすが、ぐずり始めるのが収まらない。その様子を見て、後ろからリズが出て行って、そっと赤ちゃんに手を伸ばす。保育園に顔を出すようになって赤ちゃんの面倒も見る事が出来るようになった。そっと右肘の辺りに首を固定して柔らかに揺すると、機嫌良く笑顔を見せてくれる。


「いやー、助かったよ。赤ちゃんの面倒なんて中々見る機会が無いしね。家でも一番下だからね。へー。上手いねぇ」


 ノーウェが苦笑を浮かべながらリズが抱いた赤ちゃんを覗き込んで、触れている。


「珍しい組み合わせかと思いますが、どなたのお子様なのでしょうか?」


「あぁ、レーウェイルズ伯爵のお孫さんだよ。娘さんが子爵だからね。この子もその内、貴族になっちゃうのかな」


 そんな話をしていると、ロスティー夫妻と一緒に話しをしていた四十程の男性と二十歳をやや過ぎたくらいの女性がこちらに近付いてくる。


「ノーウェ伯、済まないね、孫の面倒を見てもらって。少しロスティー公爵閣下とお話したい事があったから」


「いいえ、お気にならさず、レーウェイルズ伯。ネリティス嬢もお久しぶりだよね。四月の常会は家宰(かさい)の人が代理で参加していたし」


「ふふ。覚えて頂いていて光栄です。ほら、レーチェル、お母さんよ、機嫌は良かったかしら」


 ネリティスと呼ばれた女性がそっとリズの抱いた赤ちゃんに手を伸ばすと、赤ちゃんの方も手を伸ばしてくる。リズが右腕から解放してネリティスに赤ちゃんを渡すと、キャッキャと喜んでいる。


「アキヒロ子爵の奥様ですね。初めまして、ネリティスと申します。面倒をみて頂いてありがとうございます。父の話が少し立て込んでいたのを見かねてノーウェ伯爵閣下が連れて行って下さったんですが……」


「あの、いえ。お気になさらず。可愛らしい赤ちゃんですね。女の子ですか?」


 リズが、少しはにかみながら、聞くと、ネリティスが大きく頷く。


「えぇ。春過ぎに生まれました。ふふ、どうしたの? お姉さんが好きなの?」


 あーあーと言いながら、レーチェルと呼ばれた赤ちゃんがリズの方に手を伸ばす。


「リズ、少し話でもしてくる? 赤ちゃんも気になっているみたいだし」


 そう聞くと、リズが赤ちゃんの方を向いて、少し考える。


「良いのかなぁ?」


「うん、お昼ご飯の席だし、皆、結構自由にやっているから大丈夫、ペルティア様の近くの席が空いているから、色々聞いてみたら良いかなって。三人のお母さんだしね」


「うん、じゃあ、行きましょうか? ネリティス様」


「あぁ、爵位は旦那さんと一緒ですので、尊称は結構です」


「では、ネリティス……さん?」


「ふふ、リザティアさんですよね。お噂は聞いています。お茶会に現れた美しいお二人って。旦那が言っていました」


「え、美しいって……」


 そんな話を姦しくしながら、ペルティアの方に合流していく。ペルティアも赤ちゃんが可愛らしいのか、大袈裟なばかりに歓迎して、二人と赤ちゃんを抱きしめている。そんな姿を眺める、レーウェイルズとノーウェと私。


「さて、改めて。議会ではお顔を拝見しただけで挨拶も出来ず、失礼致しました。初めまして、レーウェイルズ伯爵閣下。アキヒロです」


「改めて、初めまして。はは、あの場で意見を言って、商売の話までしていた人間に畏まられると恐縮するよ。歳もそんなに変わらないしね。今後ともよろしく」


 そう言って差し出される手をしかりと握る。


「レーウェイルズ伯は内務系に詳しいよ。元々子爵の頃は内務で働いていたのを、父上が外務に引っ張ってきた逸材だから」


「ノーウェ伯、逸材は勘弁して欲しい。恥ずかしいよ」


 はにかみながら笑うレーウェイルズに釣られて、三人も笑う。


 結局、外務とは国の基礎、方針の要になる。国は単独で存在出来る訳では無いので、外国との交流が前提となる。日本は少し違うが、国境を接した大陸の中では国と国との関係がそのまま政治に色濃く反映されてくる。法整備もそうだし、作物の種類、技術をどう発展させるのか、軍備をどこまで拡張するべきか、全ては外の状況を調べながら、総合的に判断して、方針を定めていかなければならない。大陸に存在する国にとって、最も大事なのが外交、外務となる。そうなると、外務の中に各業務へのパイプを張っていく必要がある。円滑に情報を流さなければ、決められた方針が上手く流れていかない。その為、ロスティーは各セクションから優秀な人間を引っ張ってきて、外務と国内政治との橋渡しにしているのだろう。


 ノーウェに案内されながら、それぞれの貴族の家族に挨拶をしていく。侍従や侍女が焼けた野菜や肉を運んでくれるので、食事は円滑に進む。流石に昼と言う事でこの時点では酒は出てこない。食事が終わってから、貴族連中で集まった時にでも飲むつもりなのだろう。

 しかし、多士済々(たしせいせい)よく集めたものだ。この外務派閥だけで国が一つ動かせそうなレベルだ。内務、財務、軍務、開発、庶務、紹介され、話をしていると共通するのは温厚というか、考え方が民寄りの人間が多い事だろうか。開明派全体に言える事だが、国の礎は民の努力によるものだと言うのを理解している人ばかりだ。似た者同士が揃うというか、ロスティーが態々見抜いて揃えていると言うべきか。


 仲間達も、各家の近衛と仲良く話をしている。皆一軍を率いる将だ。クロスボウに関わる事以外は兵の練兵方法や運用方法に関しては公開して問題無い旨は伝えているのでフィアやロット、ドル、ロッサ辺りが中心になって話しに花を咲かせている。チャットも魔術周りの話で盛り上がっているようだし。


 後、食べ物の匂いに釣られたか、ペールメント率いるオオカミ達も寄ってきた。三代目のお婆ちゃんと言うだけあって、眷属だけでもかなりの数だ。子供達はもふもふが溢れているのに狂喜乱舞して、一緒に走り回っている。その中にタロとヒメも混ざって遊んでいるのを見つけて和む。


 そんな感じで各家が垣根無く楽しんだ辺りでお昼はお開きとなる。中天に登っていた太陽も若干陰り始める中、皆で屋敷の方に向かっていく。どうも女性陣はペルティアやリズ、ティアナに触発されたのか、とにかくお風呂に入ってみたいようなので、そちらはリズに任せる事にする。私はお湯を入れて、一旦部屋に戻り、サンプル用の遊具の箱を抱えて、侍女達が相手をしている子供部屋に向かう。


「おじさん、なにそれ?」


 小学生の低学年くらいの子供達がわらわらと寄ってくるのに、ベーゴマ等を渡していく。遊び方をざっと説明すると、早速タライに布を張った土俵で遊んでいる。女の子にはちょっと難しいが、バックギャモンを渡すと、わいわいきゃーきゃー言いながら遊んでいる。もう少し低年齢の子供達には、最近開発を進めている動物の玩具を渡して遊び方を教える。平面的にデフォルメされた動物がちょっと分厚目に作られており、その上に動物を乗せていって、崩れた人が負けというゲームだが、男女関係なく白熱したプレーに興じている。結構丸かったり、たてがみが有ったりと、積み上げるにも一筋縄ではいかない。知育遊具にでもなれば良いかなと思っていたが、予想以上に大盛況で良かったなと。


 箱には残りのチェスが入っているので、貴族の皆々様に提供と言う事にしよう。キングやクィーンに関しては即興で作って渡してしまって構わないだろう。元々土魔術で作ったものだし、原価はかからない。


 そんな感じで、うきうきと箱を担いで、談話室の方に向かう事にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブックマーク、感想、評価を頂きまして、ありがとうございます。孤独な作品作成の中で皆様の思いが指針となり、モチベーション維持となっております。これからも末永いお付き合いのほど宜しくお願い申し上げます。 twitterでつぶやいて下さる方もいらっしゃるのでアカウント(@n0885dc)を作りました。もしよろしければそちらでもコンタクトして下さい。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ