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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第三章 異世界で子爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第593話 議会の開催~お茶会の後

 大臣職の人間達の話し合いが終わったのが三十分程経ってからだろうか。それぞれの侯爵に寄子達が集まり、報告されていく。ロスティーの周囲にも北部の貴族達が集まり話を聞いている。私とノーウェもそこに混じって話を聞いていたが、今後の運営方針に関して簡単な説明が話され、詳細は書状にて知らされるとの事だった。手短な説明が終わると、皆がお茶会の会場へ向かう。こう言う会合だとそのまま昼食会と言う流れかなと思うが、どうもそれは無くて、各寄親の屋敷で集まって、親睦を深めると言う感じらしい。通常寄親に割り振られた職務が寄子に降ってくる。全体で集まらなくても上層がきちんと会話してくれるなら、後は各職に分かれて詳細を話した方が良いと言う話なのだろう。その分と言う訳ではないが、お茶会会場では挨拶会みたいな状況になっていた。

 私とカビアが一番会場の奥に向かうと、ペルティア達と一緒にリズとティアナが座っていた。


「お疲れ様。問題は無かった?」


 リズに問うと、微笑みが返ってくる。


「お婆様がいてくださるから、大丈夫だったよ」


 両手を肩にかけて抱きしめると、緊張なのかそれ以外の感情なのか、軽い震えを感じる。あぁ、苦労をかけたなと。後できちんと話をしよう。


「ペルティア様、本当にありがとうございます」


 抱きしめたまま微笑みを送ると、優し気な表情で頷かれる。


「慣れない場所に孫を引っ張り出すのは申し訳ないとは思うけれど、役目でもあるから。大変だったと思うわ。だから、アキヒロさんが支えてね」


 ティアナの方を向くと若干憮然とした顔をしている。んー、ご機嫌斜めか。


「ティアナ。折角の機会だから、お父さんに挨拶だけでも行ってくる?」


「いや、遠慮するわ。貴族の娘としての私は存在しない事になっているの。私はアキヒロ領の家宰(かさい)カビアの妻よ」


 私はカビアと顔を合わせてちょっと苦笑い。そっとティアナとカビアを引き寄せて、王家派の屋敷に手紙の件で挨拶に行って欲しい旨を伝えると、ティアナは嫌そうな顔をカビアは苦笑を浮かべる。


「さて、父上が来る前に退散しちゃおう。囲まれて身動きが取れなくなるよ」


 ノーウェの声に合わせて、皆でお茶会会場を後にする。挨拶はまたの機会で構わない。正直、子爵の段階であまり顔を広げても後の管理が面倒臭い。まずは外務に関わる人間と顔繋ぎが出来ればそれで良い。ロスティーの屋敷に皆集まるらしいので、そちらで改めて挨拶をする流れだろう。


 ざわつく会場を後にして駐車場まで出ると、ロスティーが待っていたので、ペルティアをエスコートする。私達は自分の馬車に乗り込み、ロスティーの屋敷に向かう。やっと息が吐けるとほっとしていると、リズが抱きしめてくる。


「お疲れ様」


 優しい表情を浮かべたリズの頬に手を沿わせる。


「ありがとう。さっきと逆だね」


「ヒロの方が大変だったと思うよ?」


「夢中だったから、気付かなかったかな。リズこそ慣れない場所でごめん。ティアナもありがとう」


 そう告げると、改めてティアナのいつもの苦笑を見る事が出来た。


「リーダーの仕事に絡む話はそう多く無かったわ。殆どお風呂に関わる話ばかりよ。もう、延々人が変わる度に同じ話。分かってはいたけれど、うんざりよ」


 憮然とした表情の理由はこれかと、少し噴き出しながら、こちらの状況を軽く説明している間に、屋敷に到着する。玄関で各領主が戻るまで時間がかかる旨を執事より伝えられたので、部屋に戻って少し休憩とする。


 私もリズも正装なので、タロとヒメに飛びつかれると毛が大変だなと思いながら『警戒』で確認すると、二匹共部屋にはいない。ペールメントお婆ちゃんの授業かなと思って安心しながら部屋に入る。二人揃ってソファーに腰かけてやっと、大きな溜息を吐く。


「私は自分でどうとでもなる環境だったけど、リズは大変だったと思う。本当にありがとう」


「ううん。私も慣れていないだけだったから。だって、村であんなに人に話しかけられる事なんて無かったし、『リザティア』でも無いもの。びっくりしちゃった」


 少し心細そうに言うリズを抱き寄せて、話を聞いていく。


「それにね。お母さんにも言われたけど、人が多くなったら気が強くなってずけずけと人の環境に立ち入ってくる人間は多いって……。ヒロが頑張っているから、余計にその秘密とか今後どう言う事をしようとしているのかを聞きたい人はやっぱり多いよ……」


「それは……。私の所為だね」


「そんなことない。ヒロは『リザティア』『フィア』に住む人達の為に頑張っているんだよ。それを横から取っていこうとしている人を気にかける必要は無いよ。お婆様もそう仰っていた」


「そっかぁ……。うん、助かる。ありがとう。これから来るのは同じ仕事をする身内の人が殆どだから、その辺りは大丈夫だと思う」


 そっと額に口付けて、震えが納まるのを待つ。どんなに強い子だって言ってもただの猟師の娘だ。本当に頑張ってくれた。


「一緒に歩むって決めたんだから、慣れてみせる。私だって、戦える」


 呟くリズが愛おしくて、抱きしめる腕に勝手に力が入ってぽてりと押し倒したのも、私は悪くない。


「こーら、ヒロ!! この後、食事でしょ!!」


 ぽかぽかと叩いてくるリズが可愛らしくて、和んでしまった。

 いちゃいちゃとしていると、ノックの音が響く。皆が集まり食事の準備が整ったようだ。


「さて、ご挨拶といきますか」


 リズの手を取り、胸を張って、食堂に向かう事にした。

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