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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第577話 王都への旅路~換毛と強行軍

 リズに扉をノックしてもらって暫く待つと、侍従が扉を開けてくれる。


「おかえりなさいませ、男爵様」


「ただいま、皆は?」


「部屋にお戻りです」


 そう告げる侍従に、お礼を告げて、部屋に戻る。二匹を降ろすと、温もりでうとうとしていたのが目を覚ましてしまった。


『むー? ちがうばしょなの』


『あんしんしない』


 そんな事を思いながら、二匹が壁に体を擦り付けている。


「あら、起きちゃった?」


「うん。降ろしたら、目が覚めちゃったみたい」


「ふふ、何だか子供みたいに抱き着いていたよ。ちょっと可愛かった」


 リズがにこにこしながら、タロとヒメを呼ぶと、ててーっと近付いてきて、ぱたこぱたことしっぽをゆっくり振る。何? 何? みたいな感じで見上げていると、リズが撫で始めたので、ころりと横になる。


「でも、毛が硬くなったね。大変だったけど……」


 そう、ティアナとカビアが新婚旅行に行ってからすぐぐらいだっただろうか。タロとヒメが爪でかりかりと体を掻いていたので、皮膚に異常が出たのかと思ってかき分けていたら、ごそりと毛が抜けて驚いた。どうも、涼しい場所から南に移動させたので、夏が来たのかと思ったのか換毛で毛が抜けていたのだ。体中が痒いらしく、苛々としていたので、ブラシで抜いていったが、あんなに大量にモコモコが生まれるとは思わなかった。幼毛のふわふわした毛が抜けて、ちょっとピンとした硬めの毛で覆われるようになった。その間の部屋は、もう毛が散らばって大変だった。


「でも、そろそろ暑くなり始めているから良いんじゃないかな」


 そう言いながら、ブラシを取り出して、(くしけず)ると二匹共、お腹を出して足を上げ、ハフハフと荒い息に変わる。本当に獣可愛い。お腹の方は相変わらず、柔らかな毛で覆われている。ブラッシングが終わると、二匹共余韻に浸ってから、くるりと起き上がる。


『やっぱり、ままなの……』


『しふく……』


 謎な感想を残して、箱に入り込み、二匹仲良く寝入り始める。


「じゃあ、私達も寝ようか?」


 リズに声をかけると、こくりと頷き、ベッドに潜り込む。今日は夜番に当たって無いので、ゆっくり眠られる。


 アテンとの話でもあったが、狼の発情期は秋口から春辺りまでだ。普通は食料が多い晩秋に妊娠して、春辺りに出産というのが目安だけど、タロとヒメは時期が大分早かった。それもダイアウルフへの対応なのかなと。今、増えているのも崩れたバランスを取り戻すために必死なのだろう。となると、他の草食動物達も同じように増えているかな。どこかでそれぞれのバランスが拮抗して、上手く北の森の生態系が回るようになれば良いけど。そんな事を考えながら、深い眠りへと落ちていった。


 翌朝、まだ暗い中で目が覚める。時計を見るとそろそろ日の出の時間のはずだけどと窓を開けると、かなり厚い雲が空を覆っていた。六月二十三日は曇りかな。ただ、雨がいつ降ってもおかしくはない。テスラの体調を考えれば、一日様子を見る方が良いのかな。そんな事を考えながら、厨房に立っていた侍女からアテンが昨日獲って卸しただろうイノシシ肉を少し分けてもらい、部屋に戻る。

 空中に足を伸ばして、ぴくっぴくと走っているタロと、その横でタロの動きに合わして揺れているヒメを起こす。


『まま!! うさぎ、はやいの!! うさぎ、どこ?』


 タロがくるりと立ち上がると、辺りを見回し、首を傾げる。すっと肉を差し出すと、忘れたかのように、お座りに戻る。待て良しであげると、はむはむと食べ始めて、また首を傾げる。


『イノシシ、におい?』


『なつかしい……』


 そんな事を考えながら、また食事に戻る。ふむ。肉屋さんの匂いでも思い出したのかなと、食べ終わった皿に水を生んで、差し出す。

 リズを起こして、朝の用意が整った辺りで、侍従が朝ご飯を告げてくる。


「雨が降りそうだけど、テスラ、どうしようか? 出発して途中で雨と言う事になったら辛いかと思うけど」


 心尽くしの朝ご飯を食べ終わり、テスラに聞いてみる。


「いえ。距離的に一日の距離ですので、走ってしまいましょう。時期的にそう寒くも無いですし、稼げる間に距離を稼いだ方が良いと思います」


 皆にも聞いてみたが、ノーウェティスカまで出てしまった方が何かあった場合でも、対処の術が広がるという結論に至ったので、そのまま出発となる。

 タロとヒメが懐かしそうに、クンクンと名残惜し気にそこらを嗅ぎまわるのをそっと抱き上げて、馬車に乗せる。


「では、お手数をおかけしました。これからノーウェティスカに戻られるのであれば、同乗しますか?」


 侍女と侍従に声をかけると、にこやかに一礼が返ってくる。


「ノーウェ様より、帰りの持て成しまで待機するよう指示を受けておりますので、ご心配には及びません」


 侍女が答えると、侍従も頷く。お礼を告げて、馬車に乗り込む。屋敷を大きく回り、一路、西へと進む。

 ノーウェティスカから一時間程の距離で結構な雨が降り始めたが、テスラがそのまま進むと言い切ったので任せた。向こうに着いたら、樽風呂でも何でも温まってもらわないと風邪を引きそうだなと考えている内に、ノーウェティスカが見えてきた。


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