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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第573話 新婚旅行への旅立ちと日常の始まり

 カビアと留守中の政務に関しての処理方針をまとめ終わったのは、もう空が赤みを差す頃だった。そろそろ鳩達は帰ってくるかなと思っていると、執務室の扉がノックされる。返事をすると執事だったので、そのまま中に通ってもらう。


「鳩番より報告です。全数が帰還したとの事です」


 一礼の後の報告は、私が求めていた内容だったので、胸をなでおろす。


「良かった。後は各地に放して、帰還するかの確認かな。まずは、馬で一日程度の距離で試験をしよう。現場にはお疲れ様と伝えて欲しい」


 そう告げると執事が頷き、執務室を後にする。


「鳩……ですか? 何かあったのですか?」


 カビアが怪訝な顔で聞いてくる。


「うん。動物と交流出来る能力があったけど、それが少し強まったみたい。鳥との交流も出来るようになったから、少し試してみた。次の試験が問題無ければ伝書鳩として使えるはず」


 そう告げると、一瞬目を丸くした後、にこりと微笑む。


「そうですか……。朗報ですね。一年はかかると見ていましたが」


「徐々に慣らして、範囲を広げてだとそれくらいかかりそうだよね。まだ確定では無いけど、カビアが海の村から戻る頃には結果の方、出ていると思う」


「分かりました。問題無ければ、ノーウェティスカ、テラクスティスカ、ロスティスカの三カ所に配備を検討致します」


 カビアが新規の命令書を用意しながら言う。


「助かる。試験は元々の予算で実施しておくから。帰ってきたら処理をお願い出来るかな」


 後は開発絡みの進捗を確認し、もう出発してもらっても問題無いところで夕ご飯の知らせが来たので、今日の業務は終了となる。


 食事を終わらせ、風呂に入り、寝入ったタロとヒメを連れて部屋に戻る。


「お疲れ様」


 扉を開けると、相変わらず教本を読んでいるリズから声がかかる。二匹を箱に戻して、ソファーに向かう。


「ティアナ達が明日出発する予定だけど、大丈夫かな」


「うん。私は大丈夫。ヒロは仕事の方、問題無いの?」


「処理できる限りは処理した。書状も書き終わったから、明日には出せるかな」


 そう告げると、リズが微笑み、教本をテーブルに置く。


「じゃあ、今日はゆっくり出来るんだ」


「そうだね。昨日の晩はリズの邪魔をしちゃったから。今日はゆっくりとしようか」


 そう告げると、嬉しそうな表情に変わる。答えるように微笑みかけ、そっと抱き寄せて、ベッドに向かう。ぽすりとリズをベッドに寝かせ布団開けて、一緒に潜り込む。枕元でティアナとカビアが新婚旅行を楽しめるかを話し合っていると、徐々に眠気が強くなってきたので、蝋燭を消して、そのまま眠りに就く。


 目覚めはまだ夜明けにも遠く、東の空もまだ暗い。昨日寝た時間が早かったせいか、起きてしまったなと。窓を開けると、爽やかな風がふわりと吹き込み、暖かな空気を鮮烈なものと撹拌する。空は薄曇りだが、移動には問題無いだろう。五月二十日は曇り。カビア達はもう起きて、用意をしている頃だろう。私は見送りには少し早かったので、朝風呂でも浴びようかと浴場に向かう。リズはまだ夢の中だし、掃除だけきちんとすれば問題ないかなと。

 ふぅと溜息を吐きながら、湯船に浸かる。窓の外がほのかに色付き、刻一刻と姿を変えていくのを、湯気に煙る中、ぼけーっと眺める。少し気の早い虫の声を聞きながら朝湯を楽しみ、さぁっと湯船を掃除して、厨房経由で部屋に戻る。タロとヒメを起こして、ご飯をあげる。


 まだ朝食の時間には早いかと、ソファーでぼーっと涼む。旅に出る人間と同調して、緊張していると言うのもおかしな話だなと苦笑が浮かぶ。食事を終えた二匹がてとてとっとソファーの上に飛び乗り、太ももに顎を乗せて、伏せる。しっぽは緩やかに大きく振られており、耳は少し垂れている。


『おなか、いっぱいなの』


『しふく』


 ワフとゥォフに近い短い鳴き声には喜色しか見えなかった。そっと頭を撫でていると、太陽が昇り景色が鮮明に色付く。さて、そろそろリズを起こして朝食かなとベッドに向かう。昨日に引き続き、幸せそうな寝顔。起こしても、むにゅむにゅしか返ってこない。しょうがなく、そっと耳たぶを甘噛みする。


「むー!!」


 くぐもった悲鳴を上げて、飛び退るリズの脇を持ち上がて、ぶらぶらと揺らしてみる。


「もう子供じゃないよ!!」


 けしけしと蹴られたので、リズをベッドに下すとふわと欠伸をする。


「おはよう、ヒロ。んー。お風呂の香り。朝早かったの?」


「おはよう、リズ。どうもカビア達が出るのが気になったのか、早く目が覚めた。お風呂入って来たよ」


「起こしてくれれば良かったのに」


 リズが少しむくれる。


「幸せそうな寝顔だったから」


 そう告げて、用意を促す。着替えが終わった辺りで、朝ご飯を告げに来たので、そのまま食堂に向かう。ティアナもカビアも旅装を整えている。食事を終えると、レイがすっと消える。私はカビアと政務に関して最終的な調整を行う。ティアナはロットと斥候の対応に関して話をした後、皆と留守中の話をしている。暫く話をしていると、馬車の準備が出来た旨の報告が来たので、玄関まで見送る。


「じゃあ、ゆっくりとしてきたら良いよ」


「ありがとうございます」


 私がかけた声にカビアが嬉しそうに頷き、ティアナもそっと頷く。エステの効果はあったのか、艶やかな顔には抑えきれない期待が満ち満ちている。


「レイ、頼んだよ」


「畏まりました」


 御者台で馬の調子を眺めていたレイに告げると、にこやかに返る。


 皆でいってらっしゃいと告げると、馬車が動き出し、緩やかに速度を上げる。さて、新婚旅行の始まりか。将来的にはパッケージツアーみたいに出来れば良いなと思いながら、幸せそうな二人を見送る。さぁ、日常を頑張ろう。改めて気合を入れ直し、リズと一緒に部屋に戻る事にした。

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