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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者: 舞
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?

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第563話 黄昏時、幻想的なお祭りと、ハーレムの誕生

 調理場の方では、皆が戻って来て、素材の選別と獲物の処理が始まっていた。葉野菜に、香草、卵もある。手隙の人魚さんも解体した肉の処理を進めてくれている。


「リズ、ロッサ、狩りの方はどうだった?」


 採取して来てくれた野草を選別しながら聞くと、雉っぽい鳥と鶏みたいな肉の鳥が獲れている。それと合わせて。


「ロッサが新しい弓で、獲ったよ」


 リズが、じゃーんと言う感じでブロック肉を見せてくるが、林の方ではイノシシも生息しており、それをクロスボウで仕留めたらしい。ロッサは褒められると恥ずかしそうに顔を真っ赤にして、あわあわしている。普通の弓では頭蓋は抜けないが、骨を見ると、綺麗に抜けている。クロスボウの練度も上がって来たなと頼もしく思う。


 鳥と豚か。後は、ベルヘミア達が何を獲ってきてくれるか、かな。イノシシの肉はロースは分厚く、それ以外は薄く削いでいき、鳥は一口大より少し小さめに切り分けていく。海の村のイノシシと言うのも初めてなので、切り分けた物を焼いて試してみたが、脂に臭みも無く、赤身も爽やかな味だ。春の新芽をお腹一杯食べて育ったイノシシなのだろう。スネや腕の硬い部分は先に煮こぼしてから、ゆっくりとダッチオーブンで炊いておく。モツも処理の良さが合わさって、臭いは感じない。こちらも煮こぼして、お湯で何度か洗う。初めは濁っていたが、澄んできた辺りでダッチオーブンに入れてネギと乾燥ショウガと一緒にこれも炊く。鍋類は村に引き渡すつもりで大き目の物を持ってきているので、それを使わせてもらっている。土魔術で耐火煉瓦をイメージして、竈(かまど)を幾つか作ったが、これが問題無いなら、そのまま村の共同調理場として使ってもらえるし、どこか別の場所に移設してもらえれば良いかなと。


 下拵えが終わって、アクを掬いながら待っていると、浜の方がざわめく。見ると、人魚さん達が赤く染まり始めた海から続々と上がってくる。腕には魚から貝からイカまで色々な海産物を抱えている。


「お疲れ様です。ベルヘミアさん。大変だったでしょう」


 そう告げると、にこやかな笑みが返ってくる。


「いえいえ。いつも美味しい料理を頂いていますので、このくらい協力しませんと」


 敷いた布の上に、どさどさと新鮮な海産物が乗っていく。おぉ、タコとかまだ生きている。貝とか、ウニはそのまま焼いちゃうか。小魚は漁師鍋にしちゃおう。

 貝はまとめて、五十度程のお湯に塩を加えたタライに放り込む。短い時間でも砂を吐かせるにはこれが一番だ。暫(しばら)くみていると、だらしなく身がはみ出してきているのが見える。五分程であげて、冷水で、表面の汚れを綺麗に落とす。


 イカや魚は、どんどん捌かれていく。タコは処理をした後に一旦塩茹でにする。足先からお湯に浸けると、くるくると可愛らしく巻き上がっていく。


 イノシシのすねやモツの様子を見ると、柔らかくなっていたので、一度、冷水で洗って小さめに刻んでいく。昆布出汁に浸けて、砂糖と味噌、乾燥ショウガを刻んだ物を入れて、弱火でぐつぐつと煮込む。ある程度煮込んで水分が無くなったら、火から降ろして、冷やしておく。温度が下がる時に味が染み込むので、これは後で温め直せば良い。


 揚げ物も期待されているだろうと言う事で、イノシシのロースに小麦粉を塗し、卵に浸けて、パンを崩した衣をつけていく。揚げてから切り分けるのは手間なので、初めからロース肉を一口大に切り分けている。


 下拵えが終わったところで、一斉に調理が始まった。鉄板の上ではイノシシの脂がたっぷりと溶けて、鳥、イノシシの肉が炒められる。そこにタコのぶつ切りが加えられ、葉野菜、魚の身、イカが加えられていく。


 小魚は鱗を綺麗に落とし、ぶつ切りにされて、昆布出汁の中に放り込まれて、煮込まれる。煮立ったところに、味噌を加えると、暴力的な香りが広がり始める。そこに用意しておいた小麦粉の塊を団子にして、投入する。


 網の上には、貝やウニが乗せられて、焼かれていく。私には見分けがつかないのだが、人魚さんが置くと、貝が口を開いた時に身が絶対に下になる。長年の知恵なのかと思いながら、開いた貝にほんの少しずつ味噌を加えていく。


 温まった油に衣の付いたロースを投入していく。キツネ色になる頃には、土魔術で作った、網とバットの上に乗せられて油が切られる。下味は付いているが、最後に軽く塩を振りかけておく。ソース作りたいな……。


 作業は仲間達に任せて、私は延々お皿と椀とスプーン、フォークを土魔術で作り続ける。どうせ持ち帰っても使えるだろうから、お土産だ。


 匂いを嗅ぎつけたのか、人魚さんや、村人が集まり始める。


「そろそろ出来ましたので、お好きな食べ物からどうぞ!!」


 そう告げると、わっと殺到して来る。人魚さんはちょっと人数が多いので、抽選で集まってもらった。ポリミリアやガディミナの姿が見えないのは抽選に当たらなかったのだろう。どこかで拗ねている気もする。


 海鮮炒めに舌鼓を打つ声、漁師鍋の複雑な旨味に感激する声、土手焼きの濃厚な味に驚く声、さくさくのイノシシカツの食感と味に驚く声、それが唱和し、お祭りのような雰囲気が醸し出される。

 気の利いた村人が楽器を持って来て、旋律が流れ始めると、人魚さん達が歌い始める。何も無い海で孤独を慰めるために磨かれたその歌は、美しく人を魅了して止まない。

 夫婦になった若い男が人魚さんをお姫様抱っこして、くるくると踊り出す。世界はまさに黄昏時。逢魔が時の赤と藍の狭間で不思議に温かい空間が広がっていく。


 楽しそうな雰囲気を眺めていると、くいくいとシャツが引かれる。振り向くとぱおーん君がいた。


「どうしたの?」


「あのね、お母さん、料理に夢中なの。あのお肉食べたいの。おぢさん、お願いしても良い?」


「良いよ。どのくらい欲しいの?」


「沢山。あのね、あの子達も欲しいって」


 指さす先には、六人程の女の子が立っている。ただ、少し紅潮した顔で牽制し合っているのを見ると、目的は食欲ではないだろう……。はぁぁ、ぱおーん君。恐ろしい子。一瞬、顔中に縦線が引かれて白目になりそうだった。もう、そんな魔性の魅力を身に着けているとは。既にこの歳にしてハーレムを作ろうとしている。そのギャップに笑いが堪え切れずくすくすと笑いながら、大皿を作り、各種の料理を盛って、差し出すと、ぱおーん君はそっと跳ねながら、女性陣の中に向かう。どうも一番初めに分けてもらえるのは誰かと言うので牽制しているのか、乙女のバトルが勃発していた。ぱおーん君の将来に幸あれ。


 お祭り騒ぎが盛り上がってくると、ワインが登場し始めた。人魚さんは、お酒を呑む事が無いので、少量でも酔ってしまう。ただ、肝臓からの排出機構が特殊なので、濃い塩分と同じく、アセトアルデヒト辺りまで分解されると、毒と認識して排出するらしい。なので、ある程度酔うと、泳ぎに行って、エラの部分から吐き出してしまうため、悪酔いはしない。


 徐々に暮れる空に合わせて、海は赤から藍へと美しく、その姿を変える。その幻想的な姿を楽しみながら、給仕に勤しんだ。

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