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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第558話 海の村への出発

 荷物をぽこぽこ作りながら、侍従に馬車の手配をしてもらう。クッション等の機材はもう搬入が済んでいるようなので、馬車への積載は任せた。リズと一緒にあれこれと考えながら、荷物を整理していく。そろそろ昼ご飯と言うタイミングで、やっと整理が完了した。


「樽、どうしようかな。もう、今なら湯船ごと魔術で作れちゃうけど……」


「うん、それで良いと思うよ。お湯の量が多かったら冷めにくいし、一気に大勢が入れる方が良いと思う。お母さん方に聞いたけど、赤ちゃん、お風呂に入れると凄く安心して寝ちゃうんだって。だから、喜ぶと思う」


「じゃあ、土台を作って、その上に乗せようか。栓を抜いてお湯を入れ替えられる形で。衝立くらいなら作る事は可能だし。寒いなら、屋根まで作れば良いか……」


「ふふ。もう、そこまでいくと家も作れそうだね」


「まだもうちょっと修行しないと無理かな……。それでも将来的にはテントの代わりに建てる事も出来るかも」


「楽しみにしておくね」


 そんな話をしていると、扉のノックの音が聞こえる。昼ご飯だろう。

 食堂に入ると、皆が集まっていたので、取り敢えず、今日のこの後の指針を伝える。食休みをして、一時間程で出発予定と告げると、お母さん方がざわざわと話し始める。色々と片付けもあるだろう。護衛に関しては、テラクスタ領の近衛騎士が着くし、帰りは馬車に乗ってそのまま護衛されながら家に帰る事が出来ると告げると、喜んでいた。流石に美味しいご飯を食っちゃ寝していても家族から離れている状況はそろそろ嫌になってきたのだろう。


 食事を取り終えると、各員がばらける。仲間達はもう勝手知ったるなので、箱を担いで、玄関の方に向かう。テスラが回してくれた馬車にどんどんと積み込んでいく。


「テスラ、体調の方は大丈夫?」


「はい。健康です。お気遣い感謝致します」


 にこりと微笑み、荷物を固定するのを手伝ってくれる。最後の荷物を載せたところで完了と。


「後は、お母さん方の荷物かな。テスラ、輜重用の馬車の荷物の点検は?」


「はい。そちらも完了済みです。基本的に全員の三か月分の食料は積載しています。補給しながらと言う話なら、問題はないかと考えます。水も気にしなくて良いですので」


 水は私が出す前提か。それで輜重用の馬車が減るなら、御の字かな。馬車の周りで打ち合わせていると、追加の乗車用の馬車が三台と輜重用の馬車がかぽかぽと移動してくる。お母さん方が乗る馬車の中を見ると、きちんと布張りされて、床はクッションで埋め尽くされている。


「うわ、ぷにゅぷにゅ。気持ち良い」


 リズが、両手を差し込んでふかふかと遊んでいる。


「赤ちゃんの相手をしないと駄目だし、少しずつ入れ替わりながら、進んでいこうか」


 私はそう言いながら、湯たんぽにお湯を充填していく。低温火傷が怖いので、程々の熱さで抑えておく。大体の時間と見たのか、テラクスタの近衛騎士達も集合して来る。


「指揮官はどなたですか?」


「はい。私、レールズがこの隊の隊長となります。よろしくお願いします、男爵様」


「はじめまして、レールズさん。短い期間ですが、よろしくお願いします」


 握手を交わし、進行方法などを調整していると、お母さん方が、荷物を持って、出て来たので、積み込みを手伝う。


「まぁ、ふかふか。王様が乗る馬車みたいじゃない」


 そんな嬌声が上がりながら、赤ちゃん達と一緒に乗り込んでいく。タロとヒメは食事を済ませて、トイレも済ませた。この日の為に箱も新調しているし、小型の一匹ずつ用の箱も買っておいた。赤ちゃんが寂しくないようにそれぞれの馬車をローテーションしてもらおうかと思っている。ストレスで大変そうなら、回収しちゃえばいいし。


『まま、ままたくさん!! ちいさい、あそぶの!!』


『ぱぱ、あそぶ』


 はふはふと興奮して、しっぽをふりふりしているタロとヒメを別々の馬車に乗せる。ふかふかのクッションの上をころころ転がっていると、早速赤ちゃん達が発見して嬉しそうにあーとかだーとかうきゃーとか歓声をあげながら近付いていく。タロもヒメも慣れたもので、ふわりと巻き取ると、くるりと囲み、ぬくぬくと温める。嬉しそうに、毛皮を触りながら、ぺちぺちと叩いているが、二匹は嬉しそうだ。


「男爵様、お見送りと言う事で残念です」


 レイが軍装で出てくる。流石に軍指揮官がいないのは不味いので、レイには残ってもらう事になる。レーダーが無いのがきついが、もうしょうがない。


「兵の方は任せたよ。もし万が一、侵攻される事があった場合は、避難と打ち合わせ通りに」


「畏まりました。ご武運を」


「お互いにね」


 レイと短い挨拶を交わし、カビアの方に向かう。ティアナと少し話し込んでいたが、こちらに気付くと向き直る。


「じゃあ、カビア。その背中の紋章に恥じぬよう、よろしく頼むね」


 そう言うと、誇らしげにカビアの目が輝く。


「分かりました。決裁は代行致します」


「どうせ、私じゃないと駄目なのは土地と家の件だけだろうし、それは待ってもらおう。後、商工会側で予算外の話が上がるようなら、私の個人資産から一旦充当して良い。後で予算処理するから」


「はい。お気をつけて」


「うん。あぁ、後、カビアに一つ戻ってから仕事を頼む。海の村の視察に行って欲しい」


「視察……ですか?」


「うん。その際の護衛にはティアナとレイを付ける。後は兵もね。二週間ほど、様子を見て来て欲しい」


「男爵様、それは……」


「ん? 仕事だよ、嫌かい?」


「……いえ、お気遣い感謝致します」


「ティアナも旅が続くけど、お願い出来るかな?」


 そう言うと、はぁぁと溜息を吐かれる。ふふ、新婚旅行ってばれているか。


「リーダーのそう言う見透かしたところは、嫌い。でも、ありがとう。嬉しい」


 にこりと笑うと馬車に乗り込んでいく。


「じゃあ、後は頼んだよ」


「はい、行ってらっしゃいませ」


 カビアが告げると、侍従侍女達が一礼し、手を振る。私とリズが馬車に乗り込み、出発となった。かぽかぽと緩やかに速度を上げる。後ろを振り向くと、手を振る皆の姿が見える。窓から体を乗り出し、手を振り返す。見えなくなるまで手を振り返し、馬車の中に戻る。


「さて、久々の海の村だ。様子は見たいし、色々食べたい物もあるしね」


 荷物には、仕込みが終わった初期の味噌樽を二樽ほど積んでいる。皆が喜んでくれれば良いが。そんな事を考えながら、出発となった。

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