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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第554話 身内と言っても他人なので、色々確認はします

 緩やかな午後をリズと一緒に過ごす。結婚式の事、海の村への行き方、それ以降『リザティア』をどうしていくのか。そんな事をふわふわと話し合う。ペルティアと話して、何かが変わったのか、凄く意欲的に聞いてくる。


「リズ、何か変わった?」


「ん? どうなのかな……。でも、ペルティア様がヒロ大変だから、助けなきゃ駄目だよって仰ってたよ。私も、分からないじゃ済まないんだろうなって」


「そうか。無理はしないでね。私も未来が見えている訳ではないから。それでも、出来る事、やるべき事を考えて、実施しているだけ。焦らず、一歩一歩、周囲が追いついてくるのを待ちながら、進んでいこう」


 サプライズは認識の半歩先を実施するから、驚きにつながる。余り先の事を言っても、人は付いてこない。政策としては未来を向き、目標は未来に向けつつも、実施する内容は理解の範疇をギリギリ超える先程度で見据えていくしかない。


「んー。今のところ、ヒロが何しているのかよく分からない。でも、少しずつ理解出来て、一緒に進めると良いかなぁ」


 リズが、ヒメの頬をうにょーんと引き延ばしながら、言う。ヒメもしっぽをふりふりしている。


「ふふ、可愛い」


 リズが頬ずりすると、ヒメもクンクンと耳の後ろを嗅ぎながら、甘える。タロがこっちは無いのか? という目で見上げてくるので、優しく撫でておく。


「今すぐに手伝ってもらう事は無いよ。大丈夫。無理もしていないし。まずは今後こうしたいなと思っている事を説明するから、それがどうやって実施されていくか、見届けてもらう事かな。後は人と会う時に一緒にいて欲しい。人の見方ってそれぞれ違う価値観があると思う。私とリズの意見、それぞれで考えたい」


「うん、分かった。ペルティア様もそれは仰っていたよ。ロスティー公爵様に聞かれるって」


「そっか。うん、それだけでも助かるよ。私以外にはリズしか入れない場所は多々と出てくるから。お願いします」


 ぺこりと頭を下げると、よしよしと頭を撫でられる。


 その後は他愛のない話をしながら、タロとヒメと遊ぶ。暖かな日差しが入り込む部屋の中、穏やかで贅沢な時間が過ぎていく。



 楽しそうに話をしていたリズも途中で欠伸を浮かべるようになったので、そのままベッドに横たわらせる。


「いいの?」


「結婚式から、色々続いているし。休める時は休んだら良いよ」


 そう告げて、額に口付ける。安心した顔で眠りに就いたところで、執務室に向かう。タロとヒメはアンジェが散歩に連れて行ってくれた。首輪を見て喜び、アンジェと一緒と言う事で少し考え込んだが、散歩の方が楽しそうと言う事でてーっと走っていった。獣可愛い。


「さて、カビア。ロスティー様とノーウェ様が重点的に確認していたところは?」


「はい。帳簿の確認は全体的に完了致しました。関心を持たれていたのは、農業系の実施内容が主となります」


 幾ら親と言っても、他人は他人なので、何に関心を持っていたのか。今後どのようなカードを切れば良いのかは知りたい。


「まだ、結果は出ていないけど、そこに関心を寄せるのか……」


「そうですね。特に土地が痩せる事に対する対応の部分は気に為されていました。色々な作物を作り分けると言う対応は進めていましたが、どのような効果を生むのかと言うのは経験則でしかないです。それに対して、明確に対応策として記載されている文書に興味を持たれたようですね」


 持ち帰られる情報は持ち帰ると言う訳か。こちらで実証出来れば、ロスティー領、ノーウェ領でも実施か……。開拓をするコストは膨大なのに、土地が痩せて使えなくなると言う事は極力避けたいだろう。


「分かった。他には?」


「防衛に関わる部分、後は兵に関わる部分ですね。これは今後兵員移動などもあります。クロスボウ隊に関しては、隠しておりますが……。装甲車からの弓兵運用に関しては、論文から読み込んでおられました」


 装甲馬車を運用して、簡易陣地を構築する。出来れば今後は土嚢との連携で陣地構築が出来るところまで進めたい。工兵と言う概念を呑んでもらえるかは謎だけど。


「若干気になさっていたのは、『リザティア』全体を防衛するのに必要な人員の想定に乖離があるところですか……。侯爵ともなれば、王都の端から三千は動かせます。そういう事態への対応はあるのかと言う話ですね」


「トルカ村から考えても、馬で四日だからね。その間に、輜重を攻めてしまえばどうとでもなるかな。会戦に拘る事は無いと思うけど、その辺りはまだ言わない方が良いのかな」


「そう……ですね。通常であれば、斥候での指示で動く内容かと考えます。その辺り、戦術が国王陛下に筒抜けになるのを懸念して、中々使いこなせないと言うのがありますか……」


 ふーむ。国側には国側の思惑が。領主には領主側の思惑と言う訳か……。斥候を内側で運用出来る限りはその方が良いかな。元斥候団所属の人間とも新たな契約は結んでいる。秘匿情報が流出してもどこから流れたかは分かる。


「その他は?」


「そのくらいでしょうか……。『リザティア』自体がどのような未来を見ているのかを模索している雰囲気はありますが、ふわふわとし過ぎて、大分お困りの様でした」


「はは。まだ、私の頭の中でもまとまっていないからね。商業都市として、少しずつ金儲けが出来る体質にすると言うのはお話はしたけど、具体的な話はまだまだだから。塩は一つの結果として見せられたし、その部分は安心してもらえるかなと思ったけど」


「はい。塩の予算が、次の産業振興に使われる予定だと言うのは、かなり興味を惹かれていました」


 そんな話をカビアとしながら、日次の業務を進める。


「あー、結婚式そうそうで話が進むと思っていなかったけど、結構結婚の申し出、増えたね……」


「そうですね。特に農家に関しては、家の提供に関して厚めに支援していますので、若い世代でも家を持っています。そこが家族を作ると言う部分はありますし。まぁ、あの式とお披露目を見れば、当てられる人間も多いかと思います」


「うん。若い世代が結婚して根付いてくれるなら、本望かな。特に農業は先が長い。それに家族も呼び込んでくれる。その辺りの世代の知識の継承も大事だしね」


「工場……と仰っていましたか? 本当に可能なのでしょうか……」


「まぁ、大丈夫だと思うよ。暇をしている上の世代の方が労働をして元気にお金を稼いで、使ってくれるなら、本望だしね。金はどんどん回していかないと」


「本当に、そう言う部分は商家ですね」


 カビアに苦笑が浮かぶ。


「急ぎの話だと、海の村の話か……。結婚早々で悪いけど、ティアナを借りる形になる。それは大丈夫?」


「はい。そこは話し合いました。私の勤めが勤めですので。納得済みです」


「分かった、ティアナともそこはきちんと話し合っておくよ」


 そんな話をしながら、執務に励む昼下がりとなった。

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