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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第553話 『リザティア』の防衛戦術と周囲の考え

 ロスティー達と談笑をしていると、テラクスタが会話にあまり混じって来ないのが気になった。どうも何か考え込んでいるのか、心ここにあらずな様子だ。


「テラクスタ伯爵閣下。デパートに何か問題がありましたか?」


「ん? あぁ、いや……」


 テラクスタが現実に引き戻されて、戸惑ったような顔を浮かべると、ガレディアがくすくすと笑う。


「まだ、デパートまで到着出来ていないの。この人ったら、中央の大通りの意味を訪ね始めると動かなくなったわ」


「おい、ガレディア……」


 若干、むすっとした顔で、テラクスタがガレディアを窘める。


「意味……ですか?」


「いや、初めは現場を見れば何か分かるかと思っていたのだが……。設計図に記載されていない、大路から抜ける横道に(せき)の用意があった。聞けば、町を攻められた際に閉じると言う。守備側は、現地の知識、運動量で守ると考えていたので合点がいかなかったのだ。その意味をガレディアと議論しておった……」


 大路にも脇道はある。その脇道を駆使して、町に侵入する敵と戦うと言うのがセオリーなのだろう。侵攻を止めつつ、横から殴れるのなら、優位だ。ただ、予想外の動きに変わる可能性もあるので、町の防備としては採用しにくかった。


「防衛戦であれば、敵の侵入はある程度予測が可能かと考えます。その時間で横道を塞いで、人工的に大路を隘路に変えます」


「敵は真っ直ぐに、領主館に向かうのではないのか?」


「正面で止める戦力は考えます。それ以上に横の建物から一方的に弓を射かけられるのが大いに意味を為します。大路正面のベランダ部分は延々つながる構造になっておりますし、屋根も高さを合わせています。直接攻められては脆い弓兵の守備を考えず、展開出来るのがメリットです」


 正面は土嚢を作って、壁を構築するのでも構わない。町そのものが、防衛機構に変わると言うのが理想だ。調査をすれば、領主館が奥にあるのは分かるだろうし、そこを囮に真っ直ぐ向かってもらえれば御の字だ。他の戦術を取るなら取るで、また考えれば良い。相手が好ましいと思う状況で、こちらの策が成っていれば理想と言うだけの事だ。


「あぁ、そう言う事か。統一感と違和感を得たのは、そこか。大路に並ぶ建物の外見が似通っていた。商家なら目を引く為に、住民なら必要な広さを確保する為に、構造が変わるので、あんなに似通う訳が無いか……」


 テラクスタが合点がいったように頷く。


「はい。そこは土地代を差し引いてでも、合わせてもらっています。防衛の要になりますので」


「大路の建物は崖か。それならば納得がいく。設計の段階から攻められるのを想定していると言う訳だな。畑も含めて、新規の町ならではの発想なのだろうな」


 テラクスタが苦笑を浮かべながらも、納得したような顔になる。


「納得がいったのなら、私の目的を果たしてもらっても良いかしら? 先程お話したらペルティア様も見てみたいと仰っておられるのよ」


 ガレディアが言うと、テラクスタが鷹揚に頷く。


「ふむ、行くか。ロスティー公爵閣下、ご予定の方は?」


「儂等の作業は終わったな。ペルティアが足を運ぶと言うのなら、共に向かうか。ノーウェはどうする?」


「お供します、父上」


 ノーウェも頷く。


「ご案内致しましょうか?」


 私が聞くと、ロスティーが少し考え、首を横に振る。


「知らぬものを知らぬままで見るのも、また一興だな。色々と思索する種にもなろう。忙しかろうしな。少しは休むが良い」


 ロスティーの言葉にノーウェとテラクスタも頷く。それならばと、案内の侍従だけをつける。


 昼ご飯が終わると、ロスティー達は部屋に戻って出る支度を始める。私は、部屋に戻って預かった剣を取り、ロット達の部屋をノックする。


「新しい剣を受け取ってきたよ。でも、少し重いかも、大丈夫かな?」


 問うと、フィアが鞘から剣を抜く。


「うわ、超重い……。んー、でも剣先の方の重さだから、振るのは逆に楽かな。止める時に走るのを抑えるのが大変かなぁ?」


 右手で剣を持ち、軽く振りながら、フィアが答える。


「ちょっと使いこなすまでは時間がかかりそう。ロット、ちょっと振ってくる!」


「それなら、一緒に行こう。リーダー態々ありがとうございます」


「いや、話に行ったついでだったから。フィア、頑張って」


 声をかけると、嬉しそうに頷く。


「南にまた向かうんだよね? それまでにはある程度慣れておくー」


 そう言いながら、さっさと駆けていく。ロットと一緒に顔を合わせて笑いながら、部屋を出る。自室に戻ると、リズは二匹と戯れていた。


「ただいま。リズはペルティア様と一緒に行かなくて良かったの?」


「うん。折角結婚したのに、連れ回しているからって。お留守番」


「そっか。今日はまだ仕事の方に手が出せていないけど、何かする?」


 そう訊ねると、リズがむむむと思案した後に、首を傾げる。


「する事は無いかなぁ。でも、ちょっと、ゆっくりしたいかな。色んな事が一度に起こって、まだまだ整理しきれないから」


「じゃあ、ロスティー様も仰っていたし、たまにはのんびりしようか?」


 聞くと、ふふと微笑みを浮かべる。


「嬉しい。ありがと」


 リズがこてんと傾けた頭の重さを肩に感じ、幸せを感じる昼下がりとなった。

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