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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?

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546/810

第543話 結婚式当日~ささやかな披露宴

2016年10月28日に第一巻がGCノベルズより発売致します。


ISBN-10: 4896375912

ISBN-13: 978-4896375916


どうぞよろしくお願い致します。

 温泉宿の前では従業員達が並び、出迎えてくれる。ロスティー夫妻、テラクスタ家族、ノーウェに関しては、三階の貴賓用のフロアを貸し切っている。他の列席者達は通常の客室に順次案内されていく。休憩時間を挟んで、大ホールに向かうと言う話になった。

 皆が去り、最後に私達が誘導される。


 部屋に入ると、従業員の女性がリズのドレスを脱がしていく。背中の紐を緩め、腕を引き抜く姿には独特の色気を感じる。リズは大変そうだが、眼福、眼福と平静を装って眺める。するりとドレスを落とすと、リズが大きく溜息を吐き、体を伸ばす。その健康的な色香にくらくらする。従業員は裾のチェックをしていたが、一回り確認すると、笑顔で頷いた。


「お召し物の方は特に傷みは無いです。このまま洗濯致します。では、ごゆっくりお寛ぎ下さい」


 そう告げると、綺麗にドレスを畳んで、部屋を出ていく。


「お疲れ様」


 リズに声をかけると、柔らかな微笑みを浮かべる。


「ヒロこそお疲れ様。でも、これ、凄いね。胸が凄く楽。動いても固定してくれるのに、痛くないよ。布で巻くだけだと、押さえられて痛いし、擦れても痛いし……」


 リズが半裸で着けているのは、ブラジャーと腰紐で止めたショーツ。服飾屋の裁断と裁縫の技術がここ最近の新しい知識の流入で一気に進化した為、型紙ベースでのブラジャーの製作が可能になった。ただ、まだワイヤーで支える訳ではないし、ゴムで締める訳ではないので、フィット感は現代日本の下着に比べては全然劣る。それでも、さらしを巻いただけの状態よりは何倍もましなのか、リズがにこにこと弄っている。


「可愛らしい姿だけど、少し目に毒かも。食べちゃいたくなるよ?」


 そう告げると、ぱっと胸と局部を隠す。


「むー。折角、結婚式の時は格好良かったのに……。ヒロはすぐにそういう事を言う」


 ぷくりとむくれると、下着の上から少しお洒落めな服に着替える。この後は身内での食事会だが、まぁ、ロスティー達がいるので、形式的にカジュアルな感じ程度には収めておこうと言う感じだ。着替えて、体を動かし、くるくると回ったりして、にこりと笑う。


「やっぱり楽だ。これ、沢山欲しいかも。せめて、着替え分は買いたい」


 珍しくきりっとした顔でおねだりをしてくるので、今度また作ってもらおうと言う話で、開放してもらう。服飾店側とは、サイズ展開を含めて相談はしている。服飾に関しては、明確な発明かどうかが分かりにくく特許が取り辛いが、下着としてのブラジャー及びショーツに関しては概念自体が無い物なので私の方で取るべきだと言う。取り敢えず、申請は行った。さらしとドロワースから一気に進化出来れば良いかなと。


「それだったら、そのまま海に入れるかな?」


「うーん、恥ずかしくないかと聞かれると恥ずかしいけど。それでも隠れているのは隠れているし。良いのかな?」


 リズがむむむと悩みながら、答える。濡れて透けても問題無いように、当て布は入れているので、水に浸かっても透ける事は無い。


「川とはまた違うからね。そろそろ泳げるだけの暖かさにはなっただろうから。赤ちゃんを返しに行く時に、遊ぼうか」


「そう言われると、凄く迷う。うん、見えないなら良いかな」


 こくりと頷くので、約束と。仲間達の分も量産してもらう事にしよう。


 そこからは、結婚式を振り返り、談笑が始まる。リズも平気そうに見えたが、思った以上に緊張しており、拝堂に入る前の記憶はほとんど残っていないようだ。まぁ、入場しても花吹雪に神様だ。


「もう、顔に出さないようにするの大変だったんだよ?」


 予定を崩されたーっと、可愛らしくぷんぷんしているのが、微笑ましい。にこにこと様子を見ていると、ノックの音が響く。従業員がそろそろ大ホールに集まってもらっている旨を伝えてくる。


「さて、行きますか」


「うん。ドレス脱いだら、お腹空いちゃった」


 そんな話をしながら、大ホールに向かう。両開きの大開放が開かれると、温かな蝋燭の灯りに照らし出されたホールに列席者の人が疎らに集まって話をしている。リズと一緒に話に行こうとすると、次々と皆が入ってくるので、待っておくかと大人しくしておく。流石にホール全体を使う訳ではないので、壇上の周りに半円状にテーブルを並べ、そこに食事を置き、中央の島のテーブルで着席して食べるバイキング方式にした。人数が多いのでコースと言うのも手間がかかるし、昼から重たい物を食べるのもきついので、調整が出来るバイキングで良いかなと。話を聞くと、バイキングに近い方式はこの世界にもあるらしい。お祭りの時などはこういう形式を取るらしい。

 ガヤガヤと話の輪が広がり始めた頃に、ロスティー達が入場してくる。こう言う場だと、最敬礼は不要で、皆も深々と一礼し、迎えている。従業員に誘導され、壇上にロスティー夫妻が上がる。


「列席者の皆様。本日は私の孫であるアキヒロ、そして新しく孫となったリザティアの婚儀に参加頂き、感謝致します。どうか、これよりもこの二人に良い導きを。では、食事を楽しみましょう」


 堂々とした態度ながら親愛に満ちた姿勢で短い挨拶を終わらせると、温かな拍手に包まれる。


 そこからは、ささやかな披露宴の始まりだ。私達は二人で皆に挨拶に回る。仲間達の家族以外は商工会のメンバーや懇意にしている商家の人達なので、気軽にリズを紹介しながら、挨拶をして回る。ロスティー達も気さくにフットワーク軽く、談笑しながら、商談をまとめたりしている。テラクスタ、ノーウェも含めて、貴族なんて肩書の話だ。ロスティーも王の係累と言っても敬愛の対象にはなるが、現代日本と比べれば、驚くほど近しい距離で接している。何と言うか、会いに行けるアイドル的なイメージだろうか。

 楽しげな雰囲気の中、挨拶も一巡したのか、小さなグループが離合集散を繰り返しながら、テーブルで食事を始めている。私達も、ロスティー達が集まる場所に食事を持って向かう。


「おめでとう。お披露目の時、少しバタバタしていたようだけど、どうしたのかな?」


 ロスティー達ににこやかに祝福の言葉を送られながら席に着くと、ノーウェが聞いてくる。


「あぁ、ユチェニカ領の問題の商家絡みですね。後で詳細はご説明しますが、この町の発展がワラニカの景気の元と睨んで、警告ないしあわよくば怪我でもさせられれば、大人しくなると踏んでいたようです」


 実際は殺害も含めて話は進んでいたが、この場では伏せる。祝いの席に、無粋だ。


「ふむ、そうなると儂の失態か……。ダブティアの警察権は無い故、(そそのか)した商家は向こうに任せておったが……」


「いえ。腐っても商家です。ロスティー様が何の為に訪れるかの情報は入ってくるでしょう。来ると分かれば、大半は散るでしょうし、向こうの王家から使いが来ると分かれば嫌でも逃げるでしょう」


 そう告げると、ロスティーがふわりと微笑する。


「そうか。問題は無いのだな?」


「はい。実行犯は全て捕縛済みですし、計画を進めた連中も現在捕縛中です。尋問して、責任者を割り出し、改めて国として対処を希望します。帰りまでには間に合わせます」


「うむ、委細承知した。手数をかけるが頼む」


 ロスティーの頷きと共に、和やかな食事が始まる。リズも女性陣達に囲まれて式の賛美やドレスの詳細などを聞かれて話をしている。終始温かなムードで食事は終わり、そのまま風呂と言う話になった。


 この町に住んでいると逆に温泉宿に行くと言う機会が無く、まだ試した事の無い人もいて盛況だった。ロスティーも大いに気に入ったのか、随分と機嫌良さそうに楽しんでいた。


 風呂を上がってマッサージやエステを受けた後は自由時間と言う事で、散々テラクスタやノーウェに引っ張り回された。この辺りの詳細は追々だろうか。ロスティー夫妻は、東屋が気に入ったのか、二人静かに畳モドキの上で寝転がって話をしていた姿が印象的だった。


 夜は再び、バイキング。ただ、エールを持ち込んだので、アレクトリアの追求が怖い。領主館まで踏み込んできそうな怖さがある。さっさと、海の村に逃げたい。風呂上がりにビールと言うのは万国共通なのか、新しい飲み物と言うのに、あっさり受け入れられたのは喜ばしいかと。炭酸の爽やかさ、ホップの苦みと言う特徴がワインに飽きた層に受け入れられたようだ。


 そんな感じで、楽しんでいた訳だが、流石に式の当事者はへとへとになっている。ロッサに至っては、食事を食べている途中から意識を失って、ドルにもたれかかっていた。後は従業員に任せて、結婚組はそうそうの退散となった。


 部屋に戻って、リズと一息つく。


「楽しかった。でも、ちょっと疲れたかな……」


 リズが、アルコールで軽く上気した頬を窓辺で冷ましている。


「式で疲れたしね。今日は早めに寝ようか」


 そう言いながら、そっと背後から抱きしめる。


「そうだね」


 微笑を浮かべるリズが立ち上がり、一緒にベッドに向かう。ころりとリズが布団に潜り込み、ぽすんと枕の位置を調整する。


「疲れたけど、良かった。ふふ、こんな結婚式になるとは思っていなかった」


 何かに思いを馳せるような表情をしていたリズが、クスクスと笑い出す。


「心に残る結婚式だったなら良かった」


「うん、ずっと褪せないと思うよ」


 つとと微笑み差し向けられる眼差しに、腰の辺りが疼くのを感じる。


「むー、どうして服を脱がそうとしているのかな?」


「リズが可愛らしいから?」


「灯り、消して欲しいな……」


「リズが可愛いから、無理」


 そのまま額に口付けると、お披露目の時を思い出したのか、蕩けるような微笑を浮かべる。ほのかに香る、オリーブの香りがいつもと違う雰囲気を感じさせる。それに、下着姿と言うのも新鮮だし、それを外す行為自体も何とも言えない感覚を感じさせる。


「愛して……くれる?」


「うん。永遠に愛するって誓ったよ」


 嬉しそうな頷きを見ながら口付けを交わし、そのままふわりと抱きしめた。

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