表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
513/810

第510話 戦後の平和な日常の始まり

 少し薄暗い中を目覚める。横のリズはちょっとぺとぺと状態でぐっすり眠っている。窓から外を見ると、そこそこ本降りの雨が庭木を揺らしている。五月二日は雨っぽい。箱の中を覗き込むと、湿度が気持ち悪いのか二匹が少し距離を離して眠っているのが可愛い。二匹の耳の下辺りをくすぐると、口元が緩んでにへっと言う顔になる。起こさない程度に留めて、厨房に向かう。


「おはようございます、領主様。狼達の朝ご飯ですね」


 厨房に着くと、料理人がひょこっと出て来て声をかけてくれる。


「お願い出来るかな」


「はい。罠猟でかかった鳥を朝から持ち込んでもらっています」


「雨なのに、大変だね」


「生活ですからね。しょうがないですよ」


 そう言いながら、毟ったスズメを山にして皿に盛ってくれる。


「えらく大猟だね」


「そろそろ暖かくなってきて活発になっております。鳥は網猟が出来ますので」


「そうか……。と言う事は雨は降り始めてからそんなに経っていないのかな?」


 聞くと、右手の人差し指を頬に当てて、くてんと首を傾げた。チャーミングだな、この子。


「降り始めは私共が起きてすぐ程度ですので、一時間程前からでしょうか」


「そっか。ありがとう」


「いいえ」


 一礼に感謝で応え、部屋に戻る。


 部屋に戻ると、半覚醒状態だったのか扉を静かに開けたつもりだったが、二匹が箱の縁で両手をかけてびろーん状態になっている。勿論、口を開けて舌を出してはっはっしている。皿に分けると、しっぽが高速で振られる。待て良しをするとこりこりと一口で頬張り始める。


『すごいの!! おおいの!! まま、えらいの!!』


『ぱぱ、つおい!!』


 『馴致』で伝わってくる内容を聞く限り、まだ狩りの獲物と思っているようだ。

 皿まで舐めて満足したところに水を生み、ベッドに近付く。

 ぐっすり眠っているリズの髪を上げて、首元に口付け、髪の香りを嗅ぐ。強い甘い香りが頭をくらくらとさせる。挙動に気付いたのか、リズが薄く目を開ける。


「あー、こら、ヒロ。また、もう」


 まだ半分寝ぼけているのか、そのまま頭を抱えられて、胸に押し付けられる。


「いたずらっこだよね、ヒロは……」


 むにゅむにゅと言いながら、そのまままた眠りに就こうとするので頬から首筋を撫でる。


「あん……。もう、大人しくしないね、ヒロは」


 ふわっと微笑み、リズが上体を起こしてうーんと背を伸ばした。


「ふわ。良く寝た。おはよう、ヒロ」


「おはよう、リズ。体を清めるのも面倒だし、お風呂に入っちゃう?」


「良いの?」


「どうせ、皆入りたいと思うけど」


 フィアとティアナとロッサは確定な気がする。カビア大丈夫かな……。酔っ払いに絡まられて、そのまま絡まれたのかな……。


「湯だけ先に生んでおくから、リズは呼んで来てもらえるかな」


「うん、分かったよ」


 そのまま、浴場に向かい、湯を満たして部屋に戻ろうとすると女性陣が荷物を小脇に向かってくる。


「フィアとティアナは大丈夫? 結構飲んでいたみたいだけど」


「大丈夫!!」


 フィアは腕を上げてアピール。ティアナは少し頭を押さえながら苦笑を浮かべる。


「水を飲んだらかなりましになったわ。神術までは大丈夫。お湯に浸かればすっきりすると思うから」


 そう言ってがやがやと浴場に向かう。


 途中で出会った侍女にお風呂に浸かってから朝ご飯にする旨を伝えると、厨房の方と調整してくれるとの事だ。

 部屋に戻ると、食休みなのか二匹がくてんとしながら、箱の中でぺしぺしとじゃれあっている。


 残余の仕事を片付けながら待っていると、ノックの音が聞こえる。リズにしては早いなと思いながら返事をするとカビアのようだ。


「おはよう、カビア。どうしたの?」


 扉を開けると、少し隈が出来たカビアが書状を持って立っている。


「騎士団より伝令です。約一日の距離で野営中との事です。昨晩こちらも伝令を出しましたので、明後日にはロスティー公爵閣下ご到着の予定です。こちらは閣下よりの書状です」


「分かったありがとう。カビア、もう少し寝た方が良くない? 皆、お風呂から上がってくるまでまだ時間が有るだろうし」


「そうですか? 分かりました。少し休みます」


 そう言うと、カビアがいつもより幾分弱った足取りで部屋に戻って行く。うん、ティアナ、つやっつやだったし。大分搾られたんだろうなと。

 部屋に戻り、書状をナイフで開ける。中身はこちらの援軍に対する感謝と町開きを遅らせる謝罪、それに北側に進んだオーク達への対応に対する気にするなと言う内容だった。この辺りはノーウェに任しているし、信じているか。少なくともノーウェにさっさと知らせたのは正解だったようだ。

 書状を再度畳み直し、フォルダに挟んで書状入れに差し込む。二匹がじゃれ合うのに飽きたのか、グルーミングをしているのを横目に仕事の方を進めていく。


 暫く進めていると、ぱたりと扉が開かれる。


「上がった?」


「うん、さっぱりした」


「カビアは来たけど、ロットとドルは大丈夫そう?」


「んー。フィアとロッサに聞いたけど、まだ寝てたから、戻ったら起こすって」


 ふむ。いや、フィアもだけどロッサもつやつやしてたのが……。うん、まぁ、仲良き事は美しきかな。さて、用意して私も入ってきますか。

 予想通り憔悴した三人と一緒にお風呂を上がり、朝ご飯となる。女性陣は戦後の解放感も有ってか、終始上機嫌だが、男性陣は若干弱り気味なのが対照的で微笑ましい。女性は強しだなぁ。


 結局、午前は訓練、午後は自由時間となったようだ。チャットはオークの確認作業、ドルはネスの所で装備の補修に当たる。私は戦後処理の業務を片付けてから、ネスの所で進捗を確認して、町開きの準備かな。さて、今日も一日、頑張ろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブックマーク、感想、評価を頂きまして、ありがとうございます。孤独な作品作成の中で皆様の思いが指針となり、モチベーション維持となっております。これからも末永いお付き合いのほど宜しくお願い申し上げます。 twitterでつぶやいて下さる方もいらっしゃるのでアカウント(@n0885dc)を作りました。もしよろしければそちらでもコンタクトして下さい。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ