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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第504話 初めての戦争、新たな謎の解明、そして脅威の発覚

「ん……。何です、これ。何かの染料ですか?」


 チャットがオークの姿を見た瞬間、首を傾げる。皆の方を向くが、同じような反応だ。あれ? この世界って入れ墨の文化は無いのかな。となると、オークの中で入れ墨の文化が生まれたのか?


「そんなものかな。で、この首の辺り……。あぁ、ここ」


「うわ。えらい、癖のある印ですね……。でもこれならぎりぎり発動するんでしょうか……」


 何度見ても漢数字の四にしか見えない文字をチャットがなぞり、上下に指を走らせる。


「ここが起点。これは増幅ですね……。ん? ここも増幅……。発動条件……規模……精度……。で、終点と……。あら?」


 チャットが首を傾げて難しい顔をしたまま止まる。


「どうしたのチャット?」


 声をかけると、はっとした顔で動き始める。


「えぇと……。魔道具用の刻印で間違い無いと思います。ただ、魔道具であれば、対象……要は刻む物が核と言う事を明示する印を刻みます。それが無いんです」


 チャットがオークの首元から胸元にかけて、指でなぞっていく。


「これとこれで、規模の増幅を示します。で、こちらとこれで精度の増幅ですね。で、ここ終点です。ここまでで刻印の内容が終了すると言う意味になります」


 胸の真ん中のちょっと左寄り。丁度心臓の上の辺りに六によく似た印が入っている。んー、服の中まで詳しく見ていなかったけど、これ、漢数字の六だよな……。


「で、通常ならこの核を魔力の元に使うと言う意味での対象をこの辺りに刻むんですが無いんです」


 心臓から首への動脈に沿って刻まれた印と対象を特定しない事実が嫌な感じを想起させる。


「人間を魔道具にする事って、出来るのかな……」


 思考が固まらないままにぼそりと呟きが口から溢れる。


「んー。昔はそう言う研究もされていたようですが、結論としては無理です。人間が作り出す魔力は核が作り出す魔力と似て非なる物と言うのが現在の定説です」


 人間の魔素から魔力に精製する経路、魔物が魔素に侵された生物である事、魔物が魔素を魔力にする経路、核が魔力を貯める物……。今までの情報が頭の中でパチパチと組み合わさっていく……。


<告。肯定です。魔物の魔素を魔力に精製する経路は核の精製経路と同意です。魔物は魔道具足り得ます>


 『識者』先生が想像にお墨付きをくれる。あのオークの魔術がどこか異常だったのも、そう言う意味か……。『獲得』先生で得たスキルを考えても、2.00に達成するかしないかのレベルだ。それがあの規模で連続して使える訳が無い。規模の増幅、精度の増幅、そう言う意味か……。これ、オークだけなのか? 魔物全体にこの技術が渡れば、人間側は圧倒的に魔術の面で不利になるかもしれない……。規模と精度が増幅するだけでも、意味合いは変わってくる。少なくともオークと戦う時に魔術はかなり注意をしないといけないものになった……。


「チャット、発動条件は?」


「それも消えています。厳密には元々入っていたのかも謎です」


 チャットが首を横に振りながら、立ち上がる。


「現状で分かるんは……その程度ですね」


「分かった……。ありがとう。んー。詳しい内容が分かるまでは内密かな。他の柄も含めて誰かに写してもらおうかな……」


「あぁ。それやったら、研究所にお送り下さい。こっちでやっときます。なんや、リーダーに言われると見逃しとる点があるんやないかと心配になって来ましたわ」


「そっか。じゃあ、頼む。他のオークで目立った点は有りそう?」


 皆の方に向かって聞くが、揃って首を振ってくる。と言う事はこの首領格だけか……。


「じゃあ、後は兵に任せて凱旋といこうか。薪は有るし、『リザティア』で待機中の兵に後片付けは任せちゃおう。カビアと相談して、今日の参加組には歓楽街の金券でも配ろうかな。ゆっくりと風呂でも浸かってもらおう」


 そう告げると、兵達に伝わったのかざわざわが伝わっていき、大きな歓声に変わる。


「はは。現金な事で。でも、アキヒロ領としての初陣でよく頑張ってくれたよ。皆、ありがとう。心からの感謝を」


 そう叫ぶと、皆が腕を上げて歓声で応えてくれる。


「じゃあ、凱旋かな。館でゆっくりしよう。町開きの日程も調整し直しだしね。色々やる事は多いよ」


「あー、お風呂入りたい!! リーダー、僕等、頑張ったから、良いよね? 女子が先だよ!!」


 フィアが両手を上げて、じたばたと叫ぶ。


「はいはい。まずは汗でも流してゆっくりしよう。皆、お疲れ様でした」


 昼遅めに始まった戦闘の後片付けの端緒までに日は大分傾いてしまった。色付き始めた太陽を眺めながら、初めての戦争を思い返す。なんとかなったか……。

 そう思いながら、仲間の背を押すように、『リザティア』に戻る。私達の住む町に。

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