第2話 日本だと思っていましたが、違うようです
森の騒めきが聞こえる。
鳥の声らしきもの、獣の鳴き声、聞き覚えの有るような無いような。
祖父に連れていかれた、山を彷彿とさせる状況に不安が募る。
「ここ、何処だよ……。あぁ、遅刻かぁ。無遅刻無欠勤だったのに」
現実逃避気味に周りを見渡して行く。
「んー。植生は日本だよな……。これ、クヌギじゃないか。ドングリも落ちているし。こっちはコナラか」
祖父が農家兼業の猟師だった為、小さな頃から山には入っていた。
故に木々の種類を見間違う事は無い。
「日本の何処かなのか?ここは」
通常薪炭木が密集している場合、人の手が入った森の可能性が高い。
であれば、近くに居住地が有る筈だ。
「取り敢えず、民家を見つけるのが先決か。まずは所持品確認だな」
民家を見つけるまでどれだけ移動しなければならないか不明な為、まずは持ち物の確認を行う。
「ノート3冊、ボールペン5本、ライター2個、タオル2枚、500mlの水筒1本、携帯食3個、ソーラー充電器2個、スマホ用充電池2個、工具セットか」
昼抜きになる事が多い為、携帯食を常備していたのが幸いした。後は仕事柄スマホの電池切れが頻発する為、充電系は充実している。
「スマホのアンテナは……駄目か。コンパスは機能する。どこの田舎なんだろう、ここ?」
田舎の森となれば、それなりに危険な生物も多い為、護身具も必要となる。
「出るとすれば、蛇と野犬辺りか。工具セットに大振りのカッターナイフが入っていたな。取り敢えずその辺りで凌ぐか」
120cm程度の太めの生木の先を二股に加工し、蛇を取り押さえられるようにし、杖と兼用とする。
「蛭とマダニは勘弁なんだが。スーツだと無防備すぎるな」
首筋の防御にとタオルを巻く。道が有るかを調べる為、手近な登りやすい木を見つけ、登って行く。
「木登りなんて20年以上やってないな。丈夫なのを願おう」
メタボを自覚している身としては、重みで折れて大怪我だけは避けたい。
20分程かけてある程度見晴らしの良い所まで登り、周りを見渡す。
「何これ?」
絶句した。見渡す限り森が続いている。
明らかに日本の地形ではない。これだけ平地が続いているので有れば、開発が進むものだ。
<……此方より彼方へ……>
インターフェースが呟いた台詞を思い出す。
「おいおい、日本じゃないのか、ここ……。と言うか何処なんだ」