第1話 会社に行こうとしたら、異世界に飛ばされた
新連載を始めました。
ブラック会社に勤務していた私が異世界に転移したら
https://ncode.syosetu.com/n1336eh/
違法な物を扱う商社の四十代おっさんが異世界に飛ばされて、違法な知識で無双する作品です。
こちらもお楽しみ下さい。
重大発表です!!
連載を中断してまで頑張っていましたが、遂に異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろうがコミカライズです。
デンシバーズ http://denshi-birz.com/ にて、この秋連載スタート予定です!!
やっと連載再開出来ました!!
絵柄や詳細は下記をご確認下さい!!
https://twitter.com/n0885dc/status/913917731665190912
また、十月三十日には、異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろうの三巻が発売となります。
コミカライズと合わせて楽しんで頂ければ幸いです。やっとタロの出番です。可愛いです!!
6時半と同時に目覚まし時計とスマホがけたたましくベルを鳴らす。
起きられる気がしなかった為の対処だったが、頭が痛い。
今日は朝からミーティングがある為、何時もより30分早めにセットしていたんだったか。半分寝ぼけた頭で、枕元をごそごそと漁る。手に当たった目覚まし時計のスイッチを押し、ベルを止める。無理矢理起きる為、とにかく音の大きいのを買ったが、近所迷惑だな、これ。
見つけたスマホもアラームを止める。そのまま画面を開きメールを呼び出す。
障害のアラートは来ていない。良かった。
ほっと息を吐いた瞬間、再度目覚まし時計が鳴り始める。あー。寝ぼけてスイッチ間違えた。
目覚まし時計をひっくり返し、別のスイッチを切る。
「ね……眠い」
メタボ気味のお腹を揺らしながら、布団からもぞもぞと起き上がる。布団の温もりが恋しい。
2年前までは妻が起こしてくれたが、離婚した後は一人で全てを賄わなければならない。
空しい気持ちが込み上げて来る。
「シャワーだけ浴びて、朝は会社で食べるか……」
冬の冷気を浴びながら、風呂場でガタガタ震えながらお湯が出るのを待つ。
古いアパートなので、お湯が出るまで5分程かかる。
「今日は年度末の電話システムの全社一斉更新の立ち上げミーティングか。資料揃えているんだろうな、あいつ」
部下の顔を思い出す。
あぁ離婚から日が経ち、日に日に独り言が増えるな。
やっとお湯が出始めたのを確認し、パジャマを脱ぎ、畳んだ物を布団の上に軽く放る。
下着は脱衣籠に放り込み、風呂場に入る。
シャワーからの熱い湯を浴びる。
布団から出てから冷え切った足先に、痺れるような熱気が伝わってくる。
「もう年末も近いのに代り映えしない日々だな」
自嘲気味に微笑みながら、タオルで乱暴に体を拭う。
髪はスポーツ刈りに近い短髪なのでセットの必要も無い。
下着とシャツを着て、PCチェアーに座り込む。
リンゴマークのスマホで本日のニュースと持ち株の株価をチェックする。
「特に代り映えのしない日か。ニュースでも大きな話は無い。昨日も大きな変動も無いし。もうちょっとの間は現状維持かな。あまり売り買いするのも面倒だし」
朝の日課も終わりそろそろ家を出る時間も近づいてくる。
「さぁ、今日一日も頑張りますか」
『代り映えしないと思っていた日々』も、もう少しで大きく変化する事を私はまだ知らなかった。
スーツを着込み、通勤鞄を持ち、革靴を履き、アパートの扉を開けた瞬間。
そこは真っ白に輝く空間だった。
「え?」
狭い廊下から一階への階段と続くはずの空間は無く、ただただ真っ白な空間が扉の前に広がっていた。
ふと後ろを振り向くと、今閉めたばかりのアパートの扉すら無くなっていた。
「何これ?どうなっているの?分かる人説明してくれないかな」
半ば呆然としながら返答を求めない疑問を空間にぶつけてみる。
<状況認識及び応答を希望されました。スキル『識者』の付与を実施します。>
幼い中性的な声が明確に聞こえる。ただそこに甘さは無く、電子音声に近い硬い声だった。
「しきしゃ?」
しきしゃ……指揮者?識者?それが何を意味するのかはさっぱり分からない。
ただ、この現状を把握し説明して欲しいが為に疑問を発した。
しかし返ってきたのがこれだった為、余計に混乱が増した。
「よく分からない。何が起きているかの現状確認を行いたいだけだ。君は誰だ?私は今どの様な状況におかれている?」
<現状確認の明示化を希望されました。スキル『識者』より派生させスキル『認識』を構築しました。スキル『認識』の付与を実施します。>
疑問を投げかけたのに、全く意味の無い答えが返ってきた。情報のやり取りが出来ないのかこの状況は。
出来の悪い人工無能と喋っている気がする。純粋にこちらの要求を提示した方が話が早い気がしてきた。
「私は現状の情報、得られる全てが欲しい。君にはそれが実行出来るのか?」
取り敢えずは有るだけの情報を得た上で、今後の判断をすれば良い。その上で現状を打開し、会社に行けば日常に戻れる。
そう思った私は、大きな意味での全てを求めた。
<実行する全ての情報及び経験の取得を希望されました。スキル『獲得』の付与を実施します。>
曲解も甚だしい答えが返ってきた。聞いているのに、答えが返ってこないこの不毛感。
このまま押し問答を繰り返しても、埒が明かないだろう事は明白だった。
「この真っ白な空間から出して欲しい。可能だろうか?」
最もシンプルかつ間違いようの無い疑問、要望を投げかけてみた。
<私はインターフェース。貴方を此方より彼方へ送るものです。>
此方?彼方?
私はアパートに戻り、会社に行ければそれで良いのだが。
<では、良き旅路を。>
インターフェースと名乗った存在が最後の言葉を残した途端、真っ白な空間は輝度を上げ、目を開く事も困難になってきた。
「おい。元の場所に戻してくれるだけで良いんだ。おいっ」
輝度は益々上がって行き、それと共に気のせいか浮遊感まで感じるようになってきた。
このままどうなるのか、全く分からない事にぞっとする。
そのまま気を失った事に気づいたのは、森の中の開けた場所に横たわっていてからだった。