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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第250話 鯛の昆布締めを塩で頂き、ぬる燗で流し込む時のあの幸福感が堪りません

 干していた昆布が乾燥したので適切な大きさにカットして馬車に積み込む。薪を拾って網や鉄板、鍋を洗っていると、ポリミリアが子供とお母さんを連れてやってきた。20人くらいいるんだが……。

 海鮮も多岐に渡っている。泣きそうになりながら、リズとロットとティアナに指示を出して下拵えを進めていく。鮑さんがうねうね淫靡に蠢いているが、こん畜生。塩焼きかぁ。醤油が欲しい。肝を取り、ささっと刻んでスライスした身と和えていく。

 立派な海老もまた大量に確保してくれた。これ塩茹でにしてしまうか。他にも色々有り過ぎて、もう指示だけで泣きそうだ。


 子供たちは小学生くらいから中学生くらいの女の子が大半だった。皆恥ずかしそうにお母さんの後ろで隠れている。可愛い。その中に一際可愛い子がいたのだが何気なく股間を見てしまうと、ぱおーんさんがいた。象さん、その子は違う。君はいちゃいけない……。

 どうも人魚さんは女系らしく、男の子はちょっとなよっとした感じで、皆こう言う美少年らしい。やばいな……。ショタコンがいたら危険だった。お持ち帰りされてしまう。


「おじさん、いぢめない?」


 先程の可愛い男の子が聞いてくる。おじさんか……。おじさんだよな……。おじさんかぁ……。若干打ちひしがれる。


「いじめないよ? いじめられるの?」


「皆から。どうしてなのかな? 仲間外れにされたりして、寂しいの。おじさんは仲間外れにしない?」


 まぁ、女の子の集団に男の子が紛れていては、ちょっと仲間外れにされたりするか。


「そう言えば、珍しい動物がいるけど、見てみる?」


 子供には動物だ。


「イルカさんとか? 一緒に泳ぐよ?」


 目を輝かせて、男の子が言う。イルカもいるのか。クジラは見たが、イルカもか。流石にイルカは食べた事が無い。


「イルカさんじゃないけど、狼って言うんだ」


 そう言って、カビアに手を振る。気付いてくれたのか、馬車に向かう。


「狼? お母さん、狼って何?」


 ぴょこぴょことお母さんの元に向かって男の子が戻っていく。子供の頃はジャンプ力が無いので、ちょっと可愛い。

 天然パーマ気味の緩やかなソバージュのお母さんが男の子に犬の説明をしている。徐々に顔が輝き始める。


「狼、可愛いの!! 見たい!!」


 火の傍で色々やっているので子供に近付いて欲しく無い。と言う訳で、カビアがタロを抱っこして連れて来てくれたので、ぽてっと地面に置く。何かに諦めたのか、悟ったのか、大人しく伏せている。


「可愛い!! 触っても良い?」


 男の子が言うので、優しく徐々に馴らしてからと伝えて、許可を出す。タロも近付く人魚に慣れたのかクンクンと匂いを嗅ぎながら興味深げにしっぽを動かす。頭を撫でたりだっこしたりと楽しんでいたが、タロも完全に慣れたのかぺろぺろと舐め始める。


『まま!!にんぎょ、うまー』


 いや、だから、人魚は食べ物じゃ無い。これ、本当にあれだな。塩分過多な気がする。水は多めにやっているが夜も多めにやろう。夜は鳥だ。魚は駄目。

 男の子がタロと戯れているのを発見したのか、10人弱の女の子集団もそれに参加する。あぁぁぁぁ……。タロがもう、皆を舐め始めている。人魚=塩分って学習した気がする。皆、きゃっきゃっと喜んでいるが、若干食料扱いされているよと心の中で思った。


 そんな事をしていると、ロッサが追加で鳥を何羽か狩ってきてくれた。態々林の方まで入ってくれたようだ。凄い勢いで捌いていく。


 網で用意した物を焼き始める。暫くして、鳥の脂を溶かして鉄板で海鮮類を炒める。海老のボイルはもう少しで完了だ。大きめのザルを買っていて正解だった。と言うか、塩茹での海老の鍋に強烈な海老の出汁が出ているんだが捨てるの勿体無い……。味噌汁とかにして飲みたい……。


 心の葛藤を押し殺し、あらゆる作業を並行し、捌いていく。リズもロットもティアナも獅子奮迅だ。タロ?なんか塩分に満足したのか、触られるがままになっている。偶に甘噛みしてキャーキャーと皆を喜ばしている。あー。また海水塗れか。お風呂入れたけど、もう一回だな。あのままだと皮膚炎になる。


 串で焼いている魚が油を流しながら強烈な香ばしい芳香を発している。あぁ、勿体無い。刺身が食べたい。でも塩で刺身は切ない。白身ならいけるか……。鯛の昆布締めとか良いな……。よく良い店で塩で食べた。他はあれか?カツオのたたきとかか?


『寄生虫や病原菌を心配されているならぁ、大丈夫ですぅ。プロパティ上、人間の胃酸にはぁ勝てません。それにそこまで毒性の強いものは存在しませんよぉ』


 パニアシモか!?もっと早く教えて欲しかった……。


『ありがとうございます。今度刺身を試してみます』


『いえいえぇ。海上コテージでリゾート気分を満喫しながら、和食って良いですよねぇ?タヒチとか映像を見ているとワクワクしますぅ』


 うっは。神様、風情好きだもんな……。しょうがない、観念して色々考えるか。


『はい、リゾート開発も考えます』


『楽しみにしていますぅ。それではぁ』


 若干、煤けた感じにはなったが、調理は頑張って進めていく。


 並行していた作業が収束に向かう。テーブル用の保守部材はもう2枚持ってきて広げた。何か大食堂みたいになっている。


 大皿を再度何枚か生み出し、過剰帰還でちょっと気持ち悪くなる。先程の分を捨てなくて本当に良かった。全部生み直すと、きっと倒れている。


 テーブルの上には所狭しと大皿が並べられている。太陽は沈む気配を見せ始め、世界は徐々に茜に染まり始めている。


 皆がテーブルの周囲に集まり、今か今かと待ちわびている。タロは先に鳥に果敢に挑みかかっている。


 はぁぁ、頑張った。超疲れた。でも良いや。折角の交流の場だ。皆が楽しめれば良い。皆の期待が最高潮に達した。


「出会いとこれからの幸せを願って。では、食べましょう!!」


 茜に染まった皆を眺めながら、一夜の宴席の開始を宣言した。

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