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異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう  作者:
第二章 異世界で男爵になるみたいだけど如何すれば良いんだろう?
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第221話 え、機材の保守もきちんとしますよ?

 1月18日、窓を開けて様子を見ようとした瞬間、風の強さに驚く。寒風が吹き荒んでいる。北側からっぽい。温度もそうだが、体感温度はかなり下がるだろうな……。散歩どうしようかな。

 そんな事を考えながら、タロの食事の用意をする。今日も切り分けまではしている。まだ、大きいままをあげるのはどうかな。噛みちぎりそうだけど、そのまま飲み込むと喉に詰まる。

 迷いながら、少し大きめに切って、皿に盛る。これでもう少し慣らそう。


 部屋に戻り待ち構えたタロに皿を差し出す。一心不乱に噛みちぎり、食べているのを見て、あぁ大丈夫そうかなとは思った。骨も一緒に投げておく。これの代わりに玩具で代用を考えているけど気に入ってくれるかな。


 リズはお疲れ様でぐっすり眠っている。揺するけど起きない。また熱いおしぼりで顔を拭いてあげると、ふにゃって顔になる。


「リズ、そろそろ起きないと、ティーシアさんが怒るよ?」


 そう言うと、かなりゆっくりと瞼を開き、また閉じる。いやいや。何故二度寝?起きようよ。


「リーズー。起きてー」


 結構揺するとやっと起きる。


「あーうー、あー、おはよう……。眠い。兎に角、眠い」


「起きれそう?駄目そうなら、言っておくけど」


「うー。お父さんの手伝いに行かないから、お昼から手伝うって伝えて欲しいよ……」


 そう言うと再度寝始める。しょうがないので、そのままティーシアに伝えると苦笑いで答えられた。


「後できちんと教えるから。覚悟させるわ」


 まぁ、何を覚悟させるのかは怖いから聞かない。そのまま朝食を食べて、アストを見送る。今日の予定で取り敢えず考えていたのは荷車の保守点検だ。80kgを超えない程度の積載とは言え、根っこを越える時などに車軸を酷使していた気がする。

 もう、町には出ているだろうが、いらない荷物は置いている筈だ。ティーシアに外出する旨を伝えて、ノーウェの屋敷に向かう。


 門衛に用向きを話すと、ノーウェの使用人が態々荷車を引いて来てくれた。レイが下す時に組み立ててくれていたようだ。一台ずつ持って行こうと考えたが、どうも使用人が引いてくれるらしい。恐縮して断ったが、男爵に引かせるのはと言われた。

 しょうがなく、そのまま木工屋に向かう。


「どうも、今大丈夫ですか?」


「あ、大丈夫です。まだ衝立は出来ていないですよ?」


「それは結構です。荷車の点検をお願いしたいんですが」


「あぁ、分かりました。物は……あぁ、はい。じゃあ、見てみます」


 主人が荷車を解体し、点検を開始する。2台共解体しざっと見たところで結論が出る。


「車軸に関しては大丈夫です。ただ、頻繁に解体したのと重量物を積んだ状態で乗り上げて落とすを繰り返したのでしょう、車輪の構造部分と穴の径が狂っています。今すぐには壊れないですが、このまま使えばそう遠くない時期に、間違い無く壊れます」


 あぁ、やっぱり重量物を乗せての頻繁な根っこの乗り上げは想定外だったか。


「えと、交換は可能ですか?」


「はい。前にお話を頂いた段階で、保守部材は一式作っていますので、大丈夫です。ここで交換してしまいましょう」


「あ、お幾らですか?」


「2台で2万で結構です」


 お、良心的な。あまりに高いなら、一から作ってもらおうかなと思ったが。納得は出来るか。


「じゃあ、お願いします」


 巾着から硬貨を取り出し、渡す。


「はい。少々お待ち下さい」


 そう言うと、奥から保守部材と車輪を持ってきて、てきぱきと交換作業を始める。まぁ、荷車の故障対応なんて結構出るか。町でも、この辺りの店舗配分も考えないといけないな。

 そんな事を思っていると、店主が立ち上がる。


「はい。完了です。試しますか?」


 荷車を引いてみると、ほのかに感じていたガタガタ感が無くなってスムーズに引ける。あぁ、あのガタガタしたのがもう普通って思っていた。危ない、危ない。


「大丈夫そうです」


「良かったです。では、衝立の件はもう少しお待ち下さい」


 そのまま辞去し、屋敷に戻る。使用人が目礼し去ろうとしたので。


「寒い中、お手数おかけしました。ありがとうございます」


 そう言うと、何か感動した顔で、再度頭を下げて去って行った。うむ?何だろう。貴族は挨拶もしない人間と思われているのか?まぁ良いか。


 時間が余ったので、何時もの訓練場所で訓練でもしようと考える。と言うのも、『片手剣術』が下がっていた。

 使う気が無いし、放っておいた私も悪いのだが、結構がっつり数値が減っているので、積極的に使わない物は本当に減ると言うのが分かった。

 それに元々片手剣なんて振った事も無い。そういう意味では、減るのも分かる。実感の無いスキルはこうやって余計に早く減っていくのだろう。


 そんな事を考えながら、グレイブを振り続ける。腕が上がらなくなれば魔術と何時ものパターンだ。土がもう少しで1.00になる。そうなればもう少し大きなものも作れるだろう。


 火に関しては、純粋に先生が欲しい。上げ方が分からない。危険すぎて怖い。うーん。後衛雇うかな……。でも素材取るのに火って微妙なんだよなぁ。ワティス的な小技を使ってくれる人いないかな。

 そう思いながら、訓練を続ける。まぁ、地味でもこんな時間でも無ければ訓練も出来ない。風や水は良かったが、土と火は色々後片付けが面倒だ。あぁ、楽な物から先に上げてしまった。


 そんなこんなで食堂での昼ご飯を挟み、夕暮れまで訓練を行って、地味に各種のスキルの習熟を上げた。『勇猛』とか、偶に勝手に上がっているけどなんなんだろう。

 怯懦するような事を受けているのか?と考えてPTSDの際の事を思い出した。あぁ、ストレスか……。そんなもので上がるのか、これ。現代日本の人に渡してあげたい、このスキル。

 と言うか、一部の面の皮の厚い営業職とかが実は持っていそうな気もする。まぁ、現代日本人の考え方が特殊故にストレスでも上がっている気がする。元々はもっと、勇猛果敢な人間が上がる物の筈だ。


 ふと正気に返ると、汗に濡れた体が大分冷え込んでいる。遠征前に風邪とかまずい。さっさと家に戻る。

 あまりに寒いのでティーシアに断って、キッチンで先にお湯だけ浸かるようにした。あぁ……温かい。と言う訳で、芯まで温まった段階で根性で出て体を拭う。寒気は収まった。良かった。本当に良かった。風邪未満はお風呂で温もる。大事。


「すみませんでした。もう大丈夫です」


 家事を中断させてしまったので、納屋で石鹸作り作業中のティーシアに謝りに行ったが、特に何も気にしておらずきょとんとされた。


「良いわよ。そんなの。やる事沢山有るのよ?キッチンだけに立ってても何も進まないわよ」


 そう言いながら、家に戻る。あぁ、母は強しか。

 家事はリズに任せて、部屋に戻る。タロが私の姿を確認すると、最近の流れか、首輪を持ってくる。うーん。寒いんだが、大丈夫かな。毛も長くなったから平気なのかな。

 そう思いながら、首輪を付けて玄関を出る。風を受けて、タロが目を瞑る。よろよろと歩いたと思うと止まり、そのまま玄関に戻ろうとする。いやいや、野生を失い過ぎだ。


 しょうがなく、まだ風の弱い裏庭で遊ぶ事にした。リードを外してあげると、たーっと駆けだして、菜園辺りの植物を嗅ぎ始める。いつもはティーシアが怒るから、近付け無いようだ。

 悪戯をしないように背後で見守る。怒られるのが分かっているのか、噛んだり踏み込んだりはしない。知らない植物や野菜を中心に興味津々で嗅ぎまわる。兎に角好奇心旺盛だ。


 ある程度嗅ぎまわったら納得したのか、こちらに向かってくる。ホバーで、すーっと避けてみる。少したたらを踏んだ後、止まると方向転換して、しっぽを振り始める。あ、これ、新しい遊びと思っている。

 そう思った瞬間、ダッシュで駆けてくるので、避ける。もう、瞳がキラキラだ。あぁ、こう言う何かを捕まえるのって、犬って好きだったなと思いながら、気が済むまで避け続ける。


『まま、つかまえる!!』


 20分程経過しただろうか。タロがはっはっと息をしながら、へばった。頑張ったが、流石に捕まってあげない。逆に捕まえて、抱え上げると猛烈に喜ぶ。


『まま!!まま!!つかまえた!!』


 わしゃわしゃしながら、家に戻る。毛の中を触ると温かいが、毛の部分が冷えている。温めてあげないと、タロが風邪をひく。

 箱に戻し、湯たんぽに少し熱めのお湯を入れて箱の下に置く。敷布に触れて温もって来たのを確認したが、タロはそれを待つまでも無くうとうとし始める。

 まぁ、あれだけ駆け回ったのだ。疲れもするだろう。夕ご飯までは寝かしておこうと毛皮を被せ湯たんぽを横に置いておく。直接下に置いておくと、低温やけどになりそうだ。


 そう思いながら、キッチンに戻り、夕ご飯の手伝いをする。まぁ、リズへの教育の邪魔をしない程度に手伝った感じだろうか。その内アストも戻り、夕ご飯となる。


 タロの食事もお風呂も終わらせて、部屋に戻る。

 リズが、ベッドに倒れ込んでいた。


「どうしたの?」


「お母さんが厳しい……」


 まぁ、朝寝していたので、厳しいだろう。


「結婚までに色々教えておきたいんじゃないのかな?」


「それでも、厳しい……。怖い」


 かなりダウンしている。頭を撫でながら言い含める。


「女の子の母親って、自分の出来る事は全て引き継ぎたいんだ。それが母親の仕事って思っているから。リズもティーシアさんが出来る事は覚えたくない?子供に引き継ぎたいって思わない?」


「それは……覚えたいけど……」


「うん。それが家の歴史になるから。頑張って覚えて。私もリズの手料理を楽しみにしているから」


「本当に?」


 上目遣いで聞いてくる。


「本当」


「じゃあ、頑張ってみる……」


 少し機嫌を直し、調子を取り戻したようだ。そのまま抱きしめて、布団の中にそっと潜り込ませる。

 頭を撫でていると安心したのか、うとうとし始める。そのまま寝かしつけ、私も眠る。


 外の風の音は続いている。ガタガタと言う音を子守歌に意識を手放す。


 明けて1月19日は晴れで穏やかだ。風もほとんど吹いていない。洗濯日和だなとタロの世話をして、朝ご飯を食べて、アストを見送る。

 さぁ、今日は何をしようかなと思っていると、玄関で声が聞こえる。確認するとノーウェの使用人らしい。執事じゃないのか?

 そう思いながら扉を開けると、どうもメッセンジャーらしく、用件だけを伝えてくる。


 カビアが屋敷に到着したらしい。あぁ、今日の予定は決まったか。やっと状況確認が出来る。と言うか、自分の家宰(かさい)に会うのが久々と言うのも怒られそうだな。

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