ハロウィン少女
「Trick and Treat.」
無表情なのに生き生きして見えるのは気のせいなのか。
いや、気のせいだと思いたい。
しかも『Trick or Treat.』じゃなかった。
そして魔女でもヴァンパイアでもなく、赤ずきんの仮装なのには訳があるのか。
もっと何かあっただろうに。
ずきんの下から覗く大きな瞳は珍しく光が宿っている。
「ねぇ、どっちも何だから迷う意味ないよね」
ぐん、と腕を引っ張る彼女。
その白く細い腕からどうやってそんな力を出すのか。
桃色の唇を舐める真っ赤な舌。
何とも妖艶な雰囲気を持つ赤ずきんだ。
こんな赤ずきん、子供が泣く。
笑顔で押し倒し、笑顔で馬乗りになる彼女。
おかしすぎる構図に冷や汗が止まらない。
そして邪悪な笑顔で手を合わせた。
「戴きます」
肉食系赤ずきんの暴走。
彼女とハロウィンの組み合わせは危険。