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「せめて人としての命を」

「深井隆人、零小隊と呼吸を合わせろ。一斉攻撃でアイツに仕掛ける」


 神楽はジャラン! と手にしていた勾玉の鎖と神剣を構え直す。

 呼応して、零小隊が銃口を一斉に武士に向けて構えた。


「やらせると思うか?」


 直也が備前長船を構え、部隊の前に立とうとゆっくりと歩みを始める。


「下がっていろ九龍。お前も知りたくないのか? 偽りの英雄が手にした『力』の正体を」

「……」


 だが続いた神楽の言葉を聞いて、その歩みは止まった。


「今のを見ていなかったのか? 明らかに異常だ。あんなのは九色刃の……いや、人間の力ではありえない」


 確かに、今の武士の状態は異常だった。

 全身の発光現象自体は、これまで命蒼刃の治癒の力が発動する際に見てきた。

 だが彼は今、ダムの水底から後を追った葵を抱えて、『空を飛んで』ここに戻ってきたのだ。

 飛翔能力を持つ九色刃の存在など、聞いたことがない。

 髪を蒼く輝かせて燦然と立つ田中武士。

 胸に突き刺さったはずの杭は消え去っており、傷跡ひとつない。

 霊波天刃と同じような蒼光を全身に纏い、これまでのどこか気弱な様子など微塵も見せず、超然とした表情で深井や神楽を見ている。

 よく見れば、その瞳の色も黒から青に変色していた。

 直也は神楽の、これからその武士に零小隊をぶつけ、異変の正体を探ってやろうという言葉の誘惑に、耐えがたい魅力を覚えてしまった。


「……九龍、テメエ何止まってやがる!」


 ハジメが(彼ら用ではない)切り札の銃弾を装填したデザート・イーグルを、零小隊に向けて叫ぶ。

 合わせて、紅華と翠もそれぞれの九色刃を構え直した。


「いいよハジメ、大丈夫。みんなも下がって」


 再びの戦闘態勢に入ろうとする仲間を制したのは、他でもない武士の穏やかな言葉。


「武士……?」

「ハジメも心配だろうけど、手を出さないで僕に任せて」

「おまえ……髪が光ってんぞ」

「うん。実はちょっと恥ずかしい」

「いつの間に青色発光ダイオードにジョブチェンジしたんだ」

「そこはせめて、英雄ナインって言ってよ」

「ああ、あのキャラも光って空飛んでたな」


 懐かしいゲームキャラの名前を出し、ハジメの軽口ににこやかに応じると、肩を抱いていた葵を優しく離して、武士は前に出た。


 葵は両手で命蒼刃を胸の前で強く握りしめている。

 武士との魂の繋がりそのもののように。


「他の皆には手を出さないで。君たちの相手は、僕一人がする」

「言われなくてもそのつもりだ、『偽りの英雄』。行くぞ深井」


 これまで神楽から感じられた傲慢さ、力の過信から来る油断は、今は微塵も感じられなくなっている。

 少年の人が変わったかのような態度に、直也は違和感を覚える。


 だが逆に、これまでの人格が変わったかのような違和感が消えた存在があった。


「……ふざけたこと言うなよ、神楽の坊主。『偽りの英雄』の相手は俺一人だ」


 半身を闇に浸食され、半人半魔の異様な姿に変容している深井隆人。

 しかしその眼光は、さっきまで狂戦士バーサーカーのようにハジメたちと戦っていた時と異なり、直也と出会った頃からの彼らしい皮肉げな光を宿している。


「ははっ……やべえなこの腕。あの魔女の支配は破ったと思ったんだがな。これが『俺の力』だって? 笑えるぜ、ったく……」

「深井、正気に戻ったのか?」


 直也の問いかけに、深井は唇の端を持ち上げてニッと笑う。


「正気ね。ああ、正気だ。正々堂々なんて青臭え事を言う気はねえが、ちゃんとお前達とは決着をつけさせてもらう」

「何を言っている深井! 協力してさっさと命蒼刃の使い手を倒すんだ! あの力は危険だ!」


 神楽の叫びに、深井はうろんな眼差しを向ける。


「坊主。お前こそ何を言っていた? お前は鬼島首相の為に戦っているんだろう? 九龍の坊やは邪魔なはずだ。なぜ見逃すような真似をしている?」

「それは……何故? 何故ってそれは……っ……」


 神楽は顔をしかめ、こめかみを片手で抑えた。


「……お前も俺と一緒みてえだな」


 そんな神楽の様子を見て、深井はふっと自嘲めいた笑いを漏らす。


「あの女の支配は強力です。魂に呪詛を刻み込む。強い感情や意志の力で一時的に自分を取り戻せても、媒介となるトラウマや魔術道具を介して、主導権を奪うことができるんです」

「た、武士……?」


 武士が、彼らしくない語彙をスラスラと語り会話に割り込んだ。

ハジメは隣で目を丸くしている。


「だろうな。この腕からすげえ征服欲っつーか、嗜虐欲っつーか、そんな感覚が入り込んできて、飲み込まれちまった」


 深井が生身の方の手で、漆黒の右腕を擦る。

 もう義手とも呼べないそれは、この世の生物や物質ではありえない、異界の悪魔の体そのもののようだ。


「深井、その腕は魔女に渡されたと言っていたな。魔女とは誰だ!?」


 問いかける直也に、深井は笑う。


「お前ほどの奴がまだ気づかない時点で異常だと思うがな。坊やもよく知っている相手だよ。そいつは……っと。おしゃべりはここまでみてーだ」


 ギギギッと悪魔の右腕が動いた。

 マリンコンバットのナイフを握りしめていた手はナイフと融合し、鋭い鉤爪のように変化する。


「なにあれ……!」


 その異容に、翠は思わず息を飲んだ。

 九色刃を得て大抵の超常現象には慣れてきたつもりだったが、人がここまで変容する事態に初めて接し、驚愕を禁じ得ない。


「戦ってねえと……もう、自分を抑えられねえ……九龍の坊や、『偽りの英雄』、どっちが俺の相手だ……!?」


 傭兵の眼差しから少しずつ、理性が薄れていく。

 獣の唸り声のような問いかけに応えたのは、武士だ。


「さっきも言ったよ。僕が相手だ。九龍先輩は怪我をしているし……気になっているみたいだからね、僕の正体が」

「田中、それは」

「気にしないで、先輩。けど」


 唐突に武士の髪の輝きが消え、身を包んでいた蒼光のオーラが霧のように消失した。

 瞳の色も、青から黒に戻る。

 見ているだけで、圧倒的な力の存在を感じさせていた蒼光が消えた後に立っているのは、一見すればどこにでもいるような、小柄な一人の男子高校生。


「なんの真似だ?」


 相手をすると言いながら、戦闘態勢を解いてしまったかのようなに武士に、深井は問いかける。


「深井さん。あなたに『この力』は使わない。命蒼刃の……葵ちゃんと僕の力だけで、相手をするよ」

「……ふざけるなよ。死なないだけの小僧が俺に勝てるとでも」

「あなただけじゃない。あなたと、その悪魔の腕に勝ってみせます。だから深井さん。あなたも自分を取り戻して下さい。悪魔の誘惑に打ち勝って、完全に正気に戻っている時じゃなければ、その呪いを切り離せない。あなたを……助けれられない」

「俺を助ける? ……誰が……誰を助けるだと!?」

「!! 逃げろ武士っ!!」


 膨れ上がった殺気にハジメが叫ぶのと同時に、深井の立っている地面が爆ぜる。

 尋常でない脚力で地面を蹴って駆け出した深井は、世界レベルのスプリンターをも超える瞬発力で棒立ちの武士に迫る。


 「ガァァッ!!」


 咆哮とともに、悪魔の爪が突き出される。

 魔獣の力をもった一撃が、それでも傭兵の体に染みついた一分の無駄もないモーションで武士を襲う。


 武士の喉笛を正確に掻き切ったかに思えた一撃は、素早く屈んだ武士の頭上を通り過ぎた。


「なに!」


 屈んだ勢いのまま素早く回転し、武士の足払いが突進してきた深井の足元を掬う。

 バランスを崩した深井がそのままの勢いで前方に転がり、素早く起き上がって体勢を立て直す前に。


「シッッ!!」


 後を追って飛び込んできた武士が、地面に両手を着く。

 腕をクロスさせて全身をスピンさせ、逆立ちの状態から遠心力を乗せた回し蹴りが、深井の顎を正確に捉えた。


「がっ……!」


 脳を揺らされれて、深井の動きが一瞬止まる。


「あの技は!」

「葵ちゃんの!?」


 ハジメと翠が驚愕に目を見開く。


「ハァッ!!」


 動きを止めた深井に、裂帛の気合いとともに武士の連続蹴りが叩き込まれる。

 流れるようなその動きは、葵の得意とする体術そのものだった。


「調子に乗るなっ!!」


 ブォン!! と風を切って深井の腕が唸ったが、武士は軽やかな身のこなしで飛び下り、一撃を躱す。


「オオオッ!!」


 下がった武士に対し、深井の怒濤の猛攻が始まる。

 腕と一体化し、人間の限界を超えるスピードで繰り出される深井のナイフ。

 武士はそれを、あらかじめ何処を狙っているのか分かっているかのような動きで躱していった。


「っっと!」


 武士は倒れ込んで深井の攻撃を避けると、そのまま前転しての踵落としを決める。


「軽いんだよ!」


 深井はそのまま生身の方の拳で武士の横っ腹を打ち据える。

 武士は派手に吹き飛ぶが、避けきれない攻撃を予測していた武士は自分の意志で跳んでおり、打撃の威力を逃がしている。

 転がってから身軽に立ち上がり、再び深井に向かって仕掛けていく。


「信じられない……ただの一般人だったあの子どもが、何故……」


 つい先日、ホテルで武士たちと対峙したこともある紅華が、驚愕に目を剥いている。

 敵の攻撃を先読みしているのは、実際に朱焔杖の熱線を躱してみせたことから分かる。

 命蒼刃の力で、魂の軌跡を感じ取ることができるのだろう。

 しかし動きそのものは、多少の訓練はしたようだったが、素人そのものだったはずだ。


「どうして……? 武ちんの動き、葵ちゃんそのものじゃない。なんで急に……」


 葵の体術を一番間近で見続けてきた翠が、一番驚いている。

 真似をしているといったレベルではなく、動きのクセや反撃のタイミング、フェイントのかけ方、そういったもの全てがまったく同一なのだ。


「葵お姉ちゃ……葵さん。深井の言っていた通り、命蒼刃の管理者はダムの底で杭に打たれて、復活できないでいたの?」


 灯太の言い直しに葵は寂しそうな表情を浮かべるが、問いかけ自体には頷いた。


「うん。心臓だけが復活できないで、脳だけが生き返っては死んでを繰り返して……武士は苦しんでいた」


 酷い体験をさせてしまったと、葵は表情を曇らせる。

 灯太は頷いた。


「多分その影響で、命蒼刃の管理者は葵さんの体術を使えるようになったんだ」

「その影響って、どーいうこと?」


 首を傾げる翠に、灯太は説明する。


「推測だけど、管理者の魂が使い手の体に上書きされているような状態だと思う。心臓が杭に復活を阻害されて、それ以外の部分……特に精神が宿る脳に魂の力が集中し続けて、復活を繰り返す過程で葵お姉――管理者の魂が強く刻み込まれたんだ。魂には、その人が生きてきた経験も記憶されている。戦う技術、能力、そういった物が、ありえない程の復活を繰り返した田中武士の脳に上書きされたんだろう。上書きというよりは、インストールっていった方が近いかな」

「ねえ灯太。いちいち言い直さなくてもいいのよん」


 説明を聞いた翠が、重要ではない部分に突っ込みを入れる。


「よく分かんねえけど、武士は葵と同じように戦えるようになったってわけか。すげえ!!」


 興奮して拳を握りしめるハジメ。


「いや……同じでは駄目だ」

「ああ。それでは今の深井隆人に通じない」


 冷静な分析をしたのは、紅華と直也。


「なんだぁ? 強くなった武士を僻んでんのかよ九龍?」

「よく考えろ御堂。さっきお前が、紅華さんに翠さん、葵さんと四人掛かりで太刀打ちできなかった相手だ。それを田中が葵さんの体術を身につけた程度で、一人で勝てると思うか」

「……それは」


 もっともな直也の指摘を受けて、ハジメは二の句を継げない。

 先ほどから注視している戦いは、確かに徐々に武士の防戦一方に状勢が変わりつつあった。


「大丈夫。武士が持っているのは、私の技だけじゃない」


 しかし、葵の口から自信に満ちた言葉が漏れる。


「ちょこまかと……ッ!!」


 深井の暴風の如き連続攻撃。

 確かに攻め手に欠いてきた武士だったが、それでも深井の攻撃は当たらない。

 跳躍し、身を捻り、くぐり抜け、受け流し、そのことごとくを回避する。


「先読みの能力か」


 紅華の呟きに翠はヒュイ! と口笛を吹いた。


「なるほどねーん。もしあたしらがアイツの攻撃の軌跡を先読みできたとしたら、確かに一人でもなんとか勝てるかもねん」

「私や貴様、それに御堂ハジメなら、な」


 紅華は翠の言葉を部分的に否定する。


「朱焔杖や翠双刃、それに銃器があればともかく。あの体術だけでは火力が足りない。あの小柄な体格ではいくら急所に蹴りを当てたとしても、奴にとっては大したダメージにはならないだろう」

「そうかよ……だったら」


 紅華の言葉を聞いていたハジメが、手にしていたデザート・イーグルの銃口を深井に向ける。


「———手を出さないで、ハジメ!!」


 やりとりを聞いていたかのように、武士が叫んだ。


「この人は一対一で止める! ……そうでなきゃ、助けられない!!」

「ほざくんじゃねえ、ケツの青いガキがぁ!!」


 深井の蹴りが、ついにガードの上から武士を直撃した。

 どうにもならない体重差で、蹴りの威力の桁が違う。

 武士は吹き飛ばされ、堤体の柵に体を強打した。


「ぐっ……!」

「なんの努力もしねえで!」


 跳ね戻った武士の体を左腕で掴むと、そのままコンクリートの地面に叩き付ける。


「たまたま力を手に入れただけのガキが!!」


 背中を地面に押しつけられたまま、力の逃げ場がない状態で、鉤爪の右腕が拳を作り、小柄な少年の頭蓋に叩き込まれる。


「戦場で血を流し! 泥を啜って!! 仲間を死なせて戦い続けてきた俺たちと!!! 釣り合うでも思っていやがるか!!!!」


 爆撃のように繰り出される打撃が、少年の体を容赦なく、原型を留めない程に破壊していく。


「武士ぃ!!」


 我慢しきれず、銃を構えたハジメの引き金が引かれる直前に、


「———ォオオオオオオッッ!!!」


 少年の雄叫びが夜の帳を切り裂く。

 砕かれた骨が、体が、瞬時に再生し、悪魔の拳を両手で受け止めた。

 体ごと深井の腕を捻り上げ、その束縛を脱する。


「止めてみせる!!」


 鞭のようにしなり、後頭部を狙って繰り出される右の蹴撃。

 深井はその一撃を右腕であっさりと掴み止める。

 魔獣の腕は武士の脚を一瞬で、骨ごとボキリと握り砕いた。


「アアアアアッッ!!」


 右脚が捻じ切れるのを意に介さず、武士は体を捻り左の回転蹴りを深井の後頭部に叩き込んだ。


「効くかぁあ!!」


 武士の首を狙って、右腕が繰り出される。

 指が広げられ、その五指は巨大な刃と化して四方から武士を襲う。


 その掌の中心には、武士の心臓を封印した杭が打ち出され、魂の力を吸い尽くす闇に通じる漆黒の穴が開いていた。


「———葵ちゃん!!」

「武士!!」


 武士の求めに応じ、葵が投擲した命蒼刃が宙と飛び、少年の手に収まる。

 直後、武士の首に、肩に、脇腹に、腰に、頭蓋に、闇のナイフが深く深く喰い込んだ。


「———せめて、人としての命を!!」


 命蒼刃の力で回復がかかりながらも、喰い込んだ刃が武士に致死の激痛を与え続ける。

 それでも武士は絶叫しながら、命蒼刃を持つ腕を構える。


「……あなたが……あなた達が! 僕の知り得ない人生で!! ……苦痛の中で!! ……得られなかった力を、僕が得てしまったんなら!!」


 回復の力を吸われながら、それでも回復し続ける武士。

 葵がブーストをかけ、青い光の奔流と溢れる闇の霧が拮抗している。


「僕は何度でも死んでやる!! この天秤に、僕の人としての命を乗せ続けてやる!!」


「……葵ちゃん!!??」


 翠の悲鳴が響いた。

 ブーストをかけている葵の体。武士の体に深井の爪が喰い込んでいるのと同じ場所に、薄く裂傷ができて、血が滲み始めていたのだ。


「どうして、どうして葵ちゃんの体に!?」

「……武士との……魂の繋がりが強くなって……」


 目を瞑りブーストを継続しながら、途切れ途切れで葵は答える。


「ブーストしたら……ダメージが……少しだけ、逆流して……」

「そんな! このままじゃ葵ちゃんが!!」

「いいの……翠姉……武士が受けてる苦痛の……何万分の一でも貰えるなら……私は……嬉しい!!」


 命蒼刃の管理者、葵の魂が吠える。

 千切れかけた武士の右腕が動き、構えた命蒼刃が突き出された。

 深井の右掌の闇の穴に、蒼き刃が突き刺さる。


「……霊波天刃」


 武士の呟きとともに蒼い閃光が放たれるが、その輝きはすぐさま闇の中に消失する。


「バカが! この腕にソレが効かねえことは分かってっだろうが!」


「霊波天刃」


 葵が呟いた。

 蒼光が再び放たれ、悪魔の掌に消える。


「霊波天刃」


 武士が呟く。


「効かねえんだよ」


 輝き、消える。


「……霊波」

「天刃!」


 葵と武士が呟き、蒼光が輝き、消える。


『……霊波天刃!!』

「だから効かねえって―—」


 ビシ……


 二人の叫びと共に、悪魔の二の腕にヒビが入った。


「なっ…!」

『霊波天刃!!!』


 肩にヒビが入り、蒼い光が漏れ輝く。


「バカなっ!?」

『霊波天刃ッ!!!』


 半人半魔の右腕に、闇が支配した深井隆人の半身すべてに、無数のヒビ割れが生じ、蒼光が内側から輝く。



「バカな! 吸い切れない……」


 監視塔の上で、新崎結女が髪を搔き毟る。


アーリエル(あの女)の力じゃない……! たかが人間の! 人間の魂が! どうして吸い尽くせない!!??」



『霊波ァ天刃ッッ!!!!』


「がああああああっ……!!」


 深井隆人の半身を犯していた闇が砕かれる。

 再び片腕を失った代わりに、魔女の支配を逃れた傭兵がコンクリートの地面に倒れ臥した。


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