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「必殺技と芹香の相談」

 葵の「御堂葵」としての身分工作、および暁学園への編入手続きと並行して、その日の夜から武士の訓練が開始された。

 御堂組のビルには、組員が日々の鍛練に使用する訓練場があった。

暁学園の柔剣道場と遜色ない広さのフロアがあり、そこを使っての訓練だった。

 武士の訓練には時沢があたった。独自の行動を開始した直也を除いて、ハジメと葵、翠も訓練に同席する。


「悠長にやっている時間はありませんからね。もっとも効率のいい訓練は、実戦です」


 剣道をやっていた武士には、剣術をベースにするのがよいだろうということで、武士は木刀を与えられる。


「こ…これでどうするんですか」

「私を倒して下さい」

「は?」

「簡単です。その木刀で、私を打ちつければいいんですよ」

「そ……そんなことできるわけないですよ!死んじゃいますよ!」


 竹刀で相手を打つことすら苦手な武士に、木刀で生身の人間に打ちかかることなど、できるはずもない。


「これは…不遜なことを言いますね。武士君」

「…え?」

「君に、私を殺せると思っているんですか?」


 時沢は、無手のまま武士との距離を一瞬で詰める。

木刀を握る腕を掴むと、その腕を軽く返した。

 たったそれだけの動作で、武士の視界の天地はくるりと逆転する。

遅れて背中に衝撃が走り、武士は天井を見上げて床に倒されていた。


衝撃で肺の空気が押し出され、一瞬呼吸が止まる。

息苦しさを覚える間もなく、続いて脇腹に鋭い痛みが走った。


「がっ…!」


 時沢が、倒れた武士の脇腹をつま先で蹴り上げたのだ。

その一撃は容赦なく、武士の内臓に深刻なダメージを与えていた。


「時沢さん!」


 訓練を見ていたハジメが声を上げる。

隣にいた葵も思わず息を飲んだが、即座に太腿のホルターに差していた命蒼刃が輝き始め、葵は僅かに顔をしかめた。


「回復するんでしょう?なら、躊躇はしません。ハジメさんも手加減はいらないと言ったでしょう」


 時沢は冷たい声で言い放つ。


「いや、あれは…」

「武士君。痛いですか?」


 木刀を手放し脇腹を押えて蹲っている武士に、時沢は声をかける。

普通なら「痛い」程度で済むはずもないのだが、武士には命蒼刃の回復の力が作用していた。しかし、痛みと恐怖に立ちあがることができない。


 昨夜から何度も致命傷の怪我を負い、その度に武士は立ち上がってきたが、その時は謎の戦闘集団に襲われたり、葵の生命の危機であったり、非日常の特殊な状況下での出来事だった。

しかし今は訓練をするという、ある意味で日常の延長線上にある状況だ。

興奮状態にあった昨夜とは違い。

理性が残っている状態で時沢の容赦のない攻撃を喰らうと、武士は痛みに対する恐怖に身震いするしかなかった。


「立ちなさい。君は、命蒼刃に守られるだけで良いのですか?」


 時沢が蹲る武士の顔面を蹴り上げる。


「葵さんに、ハジメさんに、守られるだけの存在でいいのですか?」


 武士の胸倉を掴んで、倒れこんだ武士の体を引きずり起こす。

そして鼻血がまだ止まっていないその顔面を、拳で殴りつけた。


 体を回転させながら吹っ飛ぶ武士に、更に追い討ちをかけようと歩み寄る時沢。


「…やめろ!」

「葵ちゃん!」


 翠が止めるのも構わず、葵が飛び出した。

時沢の背後から疾風のように駆け寄り、その勢いのまま飛び上がって、時沢の頭部に回し蹴りを繰り出す。

 時沢は背後からのその攻撃を振り返ることもせずに右腕で止めると、その足を掴んで腕をぐるんと回転させた。


「なっ…!」


 大きく体勢を崩された葵は頭から床に落ちそうになるが、まるで猫のようにしなやかに短い滞空時間で体を回転させ、足から着地した。


 ほぼ同時に、時沢が低い姿勢となった葵の頭部を目がけて蹴りを繰り出す。

慌てて両腕でガードした葵だが、時沢の蹴りのパワーは並みではなかった。

体重の軽い葵は体が宙に浮くほどの勢いで吹っ飛ばされる。

衝撃を殺す為に、自ら床に転がった葵に、時沢は追いうちをかける。

床に転がる葵の体を踏みつけようと足を振り上げた。


 そのとき、恐怖に震えていたはずの武士が、時沢の足に飛びついてきた。

足にしがみつき、葵への追い討ちを止める。

 時沢は自分の足にしがみつく武士を見るとニヤッと笑い、その武士の背中に躊躇なく肘を打ち落とした。


「が…はっ!」


 思わず武士は抱え込んだ足を放してしまう。

 その隙に葵は素早く立ち上がっていたが、武士が立ち上がってきたことに驚いたのか、あるいは時沢の意図に気づいたのか、その場で棒立ちになっていた。

 時沢は拳を振り上げて、棒立ちとなった葵の顔面に、強烈な突きを繰り出す。


「っ!葵ちゃん!!」


 背中に強烈な打撃を喰らって床に伏せられていた武士は、驚異の瞬発力で体を起こし、葵の顔に迫っていた時沢の拳を平手で受け止めた。


 一瞬の出来事だった。

一連の動きを見ていたハジメと翠は絶句する。

 時沢や葵に、ではない。

 背中を強打され倒れていた武士が、時沢の拳が葵に迫る刹那の瞬間に飛び起きて、その突きを受け止めた動き。

その動きの速さは、尋常ではなかった。


「ハジメさんから聞いた通りですね、武士君」


 時沢は、頬に傷のある強面の顔でにっこりと笑う。


「君は他人を守る時にだけ、卓越した運動神経を発揮する」


 武士は葵を背に、時沢の拳を受け止めながら肩で息をしている。

その眼光から、時沢への恐怖の色はすっかり消えていた。


「だけど武士君。これからはその運動能力を、自在に扱えるようにしなくてはいけない。その為の訓練を、これから行いましょう」


 武士が後に鬼と称した時沢は、比喩でなくまさに鬼そのものだった。


 細かい指導などしない。

実戦そのもの。

武士は正真正銘殺気のこもった攻撃を受け続け、時にはハジメや葵を交えて時沢と戦った。


 武士は僅かながらも実戦のコツを掴みつつあったが、それでも時沢が期待するレベルにはほど遠かった。


「なかなか、思うように伸びないですね」


 休憩の時間に、訓練場で車座になって座りながら時沢は漏らす。


「いや…武士はよくやってると思うぜ。時沢さん、鬼過ぎるよ」


 ハジメの言うとおり、武士の動きはたった一週間で、剣道部で練習していた時と比べたら各段に成長していた。


「よくやっている、程度では駄目なんですよ。鬼島の特殊部隊〈北狼〉は、常軌を逸した戦闘能力を持つ集団です。彼らに対抗できるレベルには、まだまだ天と地ほどの開きがあります」

「そんなこと言ったって、武士は普通の高校生なんだぜ」

「ハジメさん。あなたがそんな覚悟では困ります。武士君はもう、普通の高校生ではありません」


 座り込んでいる武士を見て、時沢は言った。

武士は床を見つめて黙り込んでいる。


「まあ、トッキーの言う通りだけどねー」


 翠は腰の碧双刃の柄を触りながら言う。


「私はコレの力でなんとか奴らと対抗できてたけど。九色刃がなければ、葵ちゃんでも敵から逃げるので精一杯だったわけだからねん」

「その、九色刃だけどよ。なんか必殺技とかないわけ?」


 ハジメが碧双刃を見ながら問いかけた。


「はあ?」


 必殺技という言葉に、翠は呆れたような声を返す。


「いや、お前のその曲がった刀はよ、樹の枝とか切るとズバーンって伸びて、敵をババッとなぎ払うんだろ?武士達の命蒼刃にも、そういう攻撃に使える力はねーわけ?」

「あんたね…。必殺技って…マンガじゃないんだから」

「もう充分マンガじゃねーか」


 間の抜けた会話をするハジメと翠に、時沢が間に入った。


「必殺技ならあるじゃないですか。葵さん」


 翠は時沢の言葉に、驚いた顔をする。


「トッキー、知ってるの?」

「組長に、九色刃の仕様書は読ませてもらいました」

「仕様書?そんなのあるんですか?」


 神秘の力を持った九色刃に似つかわしくない言葉に、武士は違和感を覚えて聞き返した。


「軍用兵器ですからね。当然ありますよ」

「家電製品みたいに、説明書があるってことですか」

「刃郎衆でも一部の人間しか、その存在を知らないでしょう。紙媒体ではもう存在していません。データとして、組長が持っていますよ」


 武士達の訓練を征次郎に一任されるにあたって、時沢は命蒼刃のスペックデータに目を通していた。


「葵さんは、命蒼刃の仕様については知っていますよね?」


 無言だった葵に時沢が問いかける。

膝を抱えて座っていた葵はこくんと頷くと、口を開いた。


「でも命蒼刃には不明な能力も多い。武士、前に屋上で戦ったとき。武士は私の魂を見て、攻撃を先読みしてたよね?」

「…うん」


 死を考えていた葵を引き止めるため、武士は葵に戦いを挑んだ。

葵の攻撃してくる軌跡を、武士は青い光の筋で一瞬先に見ることが出来ていた。


「仕様書に、管理者と使い手は互いの魂を感知できるとは書いてあったけど…武士がやったような、相手の攻撃を先に感じるなんて仕様は書いてなかった」

「命蒼刃は九色刃のうち最後に完成したようですからね。これまでも使い手が居なかった訳ですし、能力の検証ができていないのでしょう」


 時沢は考え込むように顎に手を当てた。


「それで?時沢さん。もったいつけんなよ」


 ハジメが催促する。


「なにをですか?」

「必殺技ってなに? 書いてあったんだろ? 仕様書に」

「……葵さん、説明してもらえますか?」


 時沢は葵に促した。


「はい」


 素直に頷いた葵は、注目しているハジメや武士に向き直った。


「命蒼刃には、不死と回復の力のあくまで副産物として、もうひとつの力があるの。その能力の名前は、〈霊波天刃〉」

「れいはてんじん?」

「なにそれかっけー。必殺技っぽい」


 聞きなれない響きに思わず復唱する武士と、はしゃぐハジメ。


「あんた、うるさい」


 翠はほとんど反射的にハジメの頭を平手で叩いた。


「いってーな。なにすんだテメエ」

「真面目に聞きなさいよ」

「だって〈霊波天刃〉だぞ。アニメの技の名前みたいだって、思わねーか?お前そう思わなかったか?」

「そりゃ、少しは…いやかなり…そう思うけどさ」

「ほらみろ!」

「うっさい!」

「そこの二人。仲がいいのは分かりましたから、静かにして下さい」


 時沢の冷静な声に、


「仲良くねーよ」

「仲良くないわよ」


 仲のいい二人は綺麗にハモると、押し黙った。


「……続けていい?」

「お願いします」


 葵の言葉に、なぜか武士が申し訳なさそうに頭を下げる。

 葵は説明を続ける。


「〈霊波天刃〉は、命蒼刃の使い手だけが使える能力。刃に封じられた使い手の魂が、使い手の精神に共鳴して発生する刃、なんだけど…試してみようか」


 葵は座っていた膝を立てて、太腿のホルターから命蒼刃を鞘ごと引き抜いた。

ちなみに葵は、訓練中ながら動きやすいようにとタイツにミニスカートという出で立ちだった。

命蒼刃を抜くとき、葵の脚線美が一瞬かなり大胆に露になる。

真正面に座っていた武士は、視界に唐突に飛び込んで来たその光景に慌てて目を逸らした。


「……?……どうしたの?」

「いや……なんでもないです……」


 首を傾げて尋ねる葵に、武士は顔が赤くなるのを感じながらそう答えるしかなかった。


「変なの」


 葵はくすりと薄く笑って、命蒼刃を鞘から引き抜いた。


「あれは天然か?」


 葵の服装と態度に、ハジメは小声で翠にささやく。


「私も最初は、天然って思ってたんだけど……確信犯なら恐ろしい子よね……葵ちゃん…」


 翠も小声でハジメの疑問に応じた。


 葵は命蒼刃の柄の方を向けて、武士に差し出す。


「持ってみて」

「あ、…うん」



 武士は慌てて向き直り、差し出された短刀の束を握る。

蒼い刃がきらりと蛍光灯の光を反射した。


「それで、誰かを殺すって思ってみて」

「…は?」


 唐突に過激な言葉に、目が点になる武士。


「要は、命蒼刃に殺気を込めてくれればいいの」

「いや、殺気って…」

「そうすれば、回復の時に出るのとは違う光が、命蒼刃から長い太刀みたいに伸びる。殺意を抱いた対象だけを切ることができる、光の剣になる…はず…って、書いてあった…けど…」


 自信なさげに、言葉の最後が小さくなる葵。

彼女も実際に見たことはないのだ。


「光の剣! まじで! ライト・セーバーじゃねーか!」


 光の剣と聞いて興奮を抑えられないハジメ。

隣に座る翠は、あきれ顔をしながらも、もう注意を諦めていた。


「武士、ナイン・サーガの〈真・九星界裂斬〉だぜ、おい!」


 前にハジメと武士がハマっていたネットゲームに出てくる、魔を打ち倒す聖なる剣技の名前だった。


「叫べ武士! 真・九星界裂斬と叫んで剣を振るんだ!」

「もうハジメは黙ってろよ」


 ほとんど爆笑しながら冷やかしてくるハジメに、冷たい言葉を浴びせる武士。


「?…その真・九星界裂斬っていうのがどんな技か知らないけど、〈霊波天刃〉はそんなことしても使えないよ?」


 まだ笑っていたハジメに、葵が首を傾げて真面目な顔で言う。


「……いや、それは分かってんだけど……スンマセン」


 そう素直に受け取られてしまうと、ハジメは謝るしかなかった。


「じゃあ武士。命蒼刃に集中して、誰でもいいから…殺したい程憎い相手を思い浮かべて」


 そう言われても困ってしまう武士だったが、とりあえず言われた通りに、目を瞑り右手に握った命蒼刃に意識を集中させる。


「ハジメ……死ね……」

「だげじぐん!!!???」


 冗談で呟やかれた名前に、絶叫するハジメ。


「武士……ハジメ君のこと、そんなに嫌いだったの?」


 またも冗談を真面目に受け取った葵に、


「いや、冗談!冗談だって!」


 慌てた武士は目を開けて訂正する。


「……真面目にやって」


 葵は本気で怒り、低い声で唸った。


「そんなこと言われても……殺したい相手なんていないし、殺気なんて持てないよ」


 ただ蛍光灯の光を反射するだけの命蒼刃を見ながら、武士はブンブンと短刀を持つ右手を振る。

そんなことをしても、命蒼刃は当然チカリとも光りはしなかった。


「まあ、こうなると思った」


 葵は武士の手から命蒼刃を受け取ると、鞘に納めて、再び太股のホルターにしまった。

そして黙って見ていた時沢の方を向く。


「……と、いうわけです」

「やはり、すぐに〈霊波天刃〉は使えないわけですね。仕方ありません」


 時沢は武士を見ると、にっこりと笑った。

武士はビクッと身を固くする。

 訓練が始まって以来、時沢の笑顔は武士にとって恐怖の対象でしかなくなっていた。


「ということは、武士君。地道に訓練を続けるしかないということです。もう少ししたら学校にも通わなくてはいけませんからね。今後はもっと厳しく行きますよ」


 あと何十回死ねばいいんだろうと、武士は絶望的な気分になる。


「もう少ししたら、俺のことを考えるだけで〈霊波天刃〉使えるようになりますよ」


 嬉しそうに笑う時沢。


「ドSだ…」


 翠がボソッと呟いた。


 そうして、武士は学校に戻るまでの丸一週間、朝から晩まで訓練に明け暮れることになった。

その間、直也は二〜三日に一度は御堂組に顔を出すものの、基本的に一人で活動していた。

ただし学校には行っていなかったようで、武士達には御堂征次郎とは別ルートでの「政治的な工作」を行っていると説明していた。


「…で?どうだったんだよ。成果は」


 葵の身分工作と編入手続きが終了し、一週間ぶりに武士たちも高校に復帰する前日の夜。

ハジメの自宅のリビングで、時沢を除く五人が集まった時に、ハジメは直也に尋ねた。


「俺のルートからは、あの男を追い落とす決定的な手を打つことはできそうにない。旧清心会系の…御堂のお祖父さんからの工作に期待するしかないな」


 直也は低い声で、しかし始めから高い望みを持ってもいなかったようで、冷静な様子で結果を伝えた。


「けっ。使えねえな」

「だけど、状況は完全に膠着状態だ。公安に検察……鬼島の国防軍による軍閥政治化を快く思わない連中が、民自党の反主流派や野党と手を組んで、鬼島の解任動議の為に粗探しをしている。鬼島側も検察サイドや公安委員会の人事権を行使して、反体制陣営の取り崩しにかかっているが…どちらにせよ、今の奴に軍の特殊部隊を動かせる余裕は無いはずだ」


 直也の説明に、葵と翠は頷いて理解を示していた。

しかしハジメと、つい一週間前まで政治の世界などまるで興味が無く、政経専攻の学生でもなかった武士には、当たり前のように飛び出してくる政治用語を理解できない。

(よく分からないが、しばらくは敵の襲撃はないらしい)という理解に留まった。


「で、そちらはどうだったんだ?田中君。訓練の成果は」


 直也は、ソファに座って翠の入れたカフェオレを飲んでいる武士に尋ねる。


「え、ええと…」

「バッチリバッチリ。もう、お前にも勝てるくらい強くなったぜ」


 横合いから軽口を挟むハジメに、口ごもる武士を見て直也はため息を吐いた。


「進展なし、か」

「そんなことないよ。一般人にしては武ちん、結構強くなったはずだよ」


 リビングと繋がっているオープン・キッチンで話を聞いていた翠が、直也の分のコーヒーを入れて持ってくる。


「もともと武ちん、運動神経と反射神経は悪くないしね。手加減せずに実戦形式で訓練できたのが、相当大きかったね」

「一般人としての強さなんて意味無いことは、翠さんも分かってるだろう。〈北狼〉の襲撃を避けられるようになる必要があるんだ」


 直也はコーヒーを受け取りながら、厳しい言葉を吐いた。


「対集団戦を想定した、脱出訓練もしたけどね…。でもその〈北狼〉も、しばらくは動けないわけでしょ?あんまり深刻に考えすぎると、九龍ちゃんハゲるよ?」


 翠はお盆を抱えながらソファに勢い良く体を沈める。


「ハゲて済むくらいなら、いくらでも用心深くなるさ」

「…からかい甲斐のない…」


 淡々と答える直也に肩を落とす翠。


「命蒼刃は、普段は葵さんが持っているんだね?」


 コーヒーを手に持ったまま、直也は武士の横に座る葵に尋ねた。


「ええ。命蒼刃と私は、武士の側を決して離れない。彼が死ぬことは無いし、敵に攫わせることもしないわ」


 スカートの上から命蒼刃を触りながら、葵は答えた。


「……そうだね。田中に死なれたら、困るからな」


 そう言うと、直也はコーヒーを啜った。

 ハジメは、直也の言葉に何となく引っかかるものを感じて、その横顔を眺める。

 ハジメの視線に気がついた直也は薄く笑顔を浮かべた。


「……あの男を倒してもらわなくちゃならない。英雄だからな」


 そして現在。


暁学園の屋上。

 あと数分で昼休みの終了のベルが鳴るはずだった。

 それぞれの携帯電話に葵の番号の登録を終え、葵はそれぞれの番号と名前を登録する。武士たちは空になった弁当箱を片づけた。


「じゃ、あたしは先に御堂ビルに帰ってるね。トッキーに呼ばれてるんだ」


 翠は空の弁当箱の入った紙袋と、碧双刃が納められたアタッシュ・ケースを手にする。


「わかった。田中達は授業が終わったら、部活もないし生徒会室まで来てくれ。滅多なことはないと思うが、下校中も油断しない方がいい。まとまって御堂ビルに戻ろう」


 直也は携帯電話をポケットにしまいながら言う。

柔剣道場は先週の襲撃で壊れたままで、まだ修理が終わっていない為、剣道部の活動は中止となっていた。


「集団下校かよ。小学生じゃあるまいし、そこまですることねーんじゃないの。武士には俺が付いてるし、まあ、葵もいるしな」


 ハジメの軽い発言に、直也は彼を睨みつける。


「その油断が大事を招くんだ。命蒼刃が敵に奪われたら、俺達は予言された切り札を失うんだぞ」


 抑えた口調ではあったが、危機感の薄いハジメに直也は苛立っている様子が見て取れた。


「九龍ちゃん。なにを焦ってるの?」


 翠はそんな直也の前に立ち、じっと顔を見つめる。


「焦ってる? 俺が?」

「そう見えるけど? 今は政治的な動きを見守るしかないって、昨日も九龍ちゃん自分で言ってたじゃん。この状態がいつまで続くか分からないわけだから、ずっと緊張し続けてたら身が持たないよ」


 翠の落ち着いた言葉に、直也は押し黙る。


「御堂ハジメの肩を持つわけじゃないけど、あんまり慎重に慎重を重ね過ぎるのもどうかと思うよ?」

「……」


 少しの沈黙の後、再び直也が口を開きかけると、階段から続く屋上のドアがバタンと開く音が聞こえた。

 屋上は他の生徒たちも使っていたが、武士たちがいる棟は、全学年の教室が入っている通称「教室棟」から離れた場所に建っている。

音楽室や視聴覚室などの入っている通称「移動教室棟」の屋上だ。

2つの棟は複数の渡り廊下で繋がっているが、限られた昼休みの時間にわざわざここまで移動してくる生徒は多くない。

昼休みの半ばを過ぎて直也がこの場所に来た時には、すでに武士達以外には誰もいなかった。

昼休みも終わる間際のこの時間に、屋上に入ってくる生徒がいるとは考えにくかった。


 給水塔の影に隠れる形になっていた武士たちは、その音に緊張する。

 ハジメが僅かに身を乗り出して入ってきた人物を確認した。


「あ」


 その人物を確認し、思わず声を出すハジメ。


「ハジメ君?もしかして武士君もそこにいる?」


 女子生徒の声が響き、駆け寄ってくる足音が聞こえる。


ゴスロリ衣装で、どう見ても学園の生徒ではない翠は、とっさに垂直跳びで大きくジャンプし、給水塔に繋がっているパイプに手をかけ、ゆうに3メートルはある高さの給水塔の上にヒラリと飛び乗った。

そこに身を伏せて、駆け寄ってくる女子生徒の視界から隠れた。


「やっぱり武士君もいた。こんなとこで何して…!」


 駆け寄ってきたのはダークブロンドのハーフの美少女。

彼女は武士の姿を確認した後、その場に直也がいることに驚いて絶句した。


「お……九龍先輩?」

「芹香……さん、だったっけ?久しぶりだね」


 直也も少なからず驚いた様子で、声をかける。


「どうも…」


 曖昧な返事で答える芹香。


「芹香ちゃん、どうしたの?」


 黙り込んでしまった芹香は、武士の問いかけに慌てて武士に顔を向けた。


「どうしたのじゃないよ。相談に乗ってくれるって、言ってたのに……あ」


 芹香は、武士の後ろに隠れるように立つ葵の姿に遅れて気づくと、再び言葉を飲み込む。

 武士は衝撃的な葵の自己紹介で、すっかり忘れていた芹香との約束を思い出した。


「ごめん!そうだ、ホームルームの始まる前に…」


午前中の授業の合間は、武士はクラスメイトの質問攻めにあっていた為、芹香も話しかけられなかったのだろう。


「忘れてた?」

「……ごめん」


 武士は素直に謝罪する。


「まあ、彼女が転校してきたんじゃ、仕方ないよね」


 まるで芹香に怯えるかのように武士の背後に隠れ、体を小さくしている葵を見て、芹香は言った。

葵は「生まれて初めてのクラスメイト」にどう接していいか分からずに緊張しているだけだったのだが。


 そうとは知らない芹香は、両腕の肘を曲げ胸の前で揃えたポーズで武士の影に隠れている葵を見て、臆病そうな子だな、と感じる。


(私とは正反対のタイプだな…。綺麗な黒髪で、日本人形みたい。お淑やかで清楚な子なんだろうな)


 強烈な蹴り技で、鍛えられた戦闘のプロを一撃で失神させることができる葵に対して、芹香は間違った印象を抱く。


「か…彼女?彼女って?」


 芹香の言葉に、声を裏返して反問する武士。


「付き合ってるんじゃないの?ハジメ君の従妹と。だから二人は、入学する前から知り合いだったんでしょ?入学式の日に言ってた二人の秘密って、葵さんのことだったんじゃないの?」


 確かに入学式の日、ネットゲームで知り合っていた武士とハジメが初めて直接会った日。

芹香に二人の関係を聞かれ、ハジメは説明を面倒がり秘密だと答えていた。


 その秘密が、「ハジメの従妹と武士は付き合っていた。お互いの存在を知っていた二人が、偶然同じ高校に入学してしまった」と考えれば、あの日の二人の言動と、偶然にも辻褄が合ってしまう。


「ち…違うよ、彼女とはそんなんじゃなあごっっ!」


 喋っている途中でハジメに服の襟首を乱暴に引き寄せられた武士は、首を絞められた形になり奇声を上げる。


「バカ武士。少し考えろ」

「ゲホッ…なにすんだよ、ハジメ」


 芹香から少し離れさせて、ハジメは武士に後ろを向かせ、小声でコソコソと話しかける。


「お前はこれから、ずっと葵と行動しなきゃなんねーんだぞ。恋人同士の演技しろよ」

「そんな…」

「毎日一緒に帰るんだぞ。付き合ってる間柄じゃないと不自然だろうが」

「葵ちゃんだって、そんなの…」

「かまわない」


 目の前でヒソヒソ話をされていた葵が、小声で答える。


「葵ちゃん」

「前にも武士のお父さんの前で演技した。任務だから」


 葵の表情には照れも動揺もなかった。

武士はその表情を見て、何故自分が残念な気持ちになっているか不思議だった。


「だから武士、我慢して」

「え?」


 いや、我慢するのは葵ちゃんじゃ…と武士が言う前に、離れた芹香に声を掛けられる。


「ちょっと武士君。ハジメ君。なに? 隠さなくちゃいけないことだったら、私ちゃんと黙ってるよ?何か事情があるんなら……」

「いやいや、そういうわけじゃねーんだ。ほら」


 ハジメは芹香の言葉を遮ると、武士の背中を突き飛ばす。

武士はたたらを踏んで、芹香の前に立った。


「う、うん。ごめん。実は僕、ハジメの従妹の葵ちゃんと、つ、付き合ってたんだ」


 演技とはいえ、生まれて初めて「付き合っている」という言葉を発した武士は、耳まで赤くなっているのが自分でも分かった。


「……ぶっ……あははは!」


 芹香は武士の言葉に思わず吹き出して笑い声を上げる。


「ははっ……なんで謝るの? べつに武士君、私とも付き合ってるってわけでもないのに」

「あ、いや、そんなつもりじゃ…え?」


 不意に武士は、左手に温もりを感じる。


「……え?」


 武士の言葉が止まり、芹香もあっけに取られる。

 会話中の武士の横に、静かに葵が歩み寄ってきて、武士の左手をそっと握ったのだ。


(あ……葵ちゃん! それは違う! 付き合ってる演技って……僕もよく分からないけど、このタイミングで手を握ることじゃない!)


 武士は額から得体の知れない汗が吹き出すのを感じる。


 さながら、彼氏に手を出された女が、手を出してきた女を前にして「この男は私の物よ?分かったら手を引いて」とでも言っているかのようなシチュエーションになってしまった。


 思えば一週間前、武士の家で恋人同士の演技をしたときも、葵はひたすら手を握ってくるだけだった。

葵にとって、付き合うということはイコール手を握る、ということなのだろうか?

武士はそんな葵の思考回路を可愛らしくも思ったが、とりあえず今はそんなことを考えている場合ではない。


 ちなみに、芹香の前で手を繋ぎ合う二人の背後ではハジメが、その頭上の給水塔の上では翠が、必死になって笑いを堪えていた。


「は……はは……仲がいいんだね、二人とも……」


 芹香は半ば引き笑いのような声を上げる。そのとき。


 キーンコーンカーンコーン。


 昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴った。

もう5分すれば、午後の授業が始まってしまう。


「あ…ベル鳴っちゃったね。じゃあ教室戻ろうか。邪魔してごめんね」


 芹香はそう言うと、くるっと武士達に背を向ける。


「え?ちょっと…」

「芹香さん。田中君に相談があったんじゃないのかい?」


 とっさに声をあげた武士を遮って、直也がさっさと立ち去ろうとする芹香に声をかけた。

芹香は振り返らないまま、立ち止まった。


「いいんです。武士君ごめんね。そういうことなら、迷惑かけちゃうことになるから」

「迷惑って、なんで…?」


 無理して普通の声を出しているかのような芹香の様子に、武士は不安を覚える。


「俺で良かったら話を聞こうか?」


 武士に何も答えないでいる芹香に、再び直也が声を掛けた。

 唐突な直也の言葉に、ハジメが横から訝しむように口を挟む。


「なんで九龍先輩が?そういえば芹香の名前知ってましたね。知り合いでしたっけ?」

「御堂達が初めて部活に来た時、彼女も一緒に来てたじゃないか」


 直也は表情を変えないまま答えた。


「ああ、そういえば」


 武士はつい2、3ヶ月前の出来事を思い出す。


「あんとき…芹香、名乗ってたっけ?」


 なおも訝るハジメだったが、直也が口を開く前に芹香が声を上げる。


「九龍先輩、ありがとうございます。でも大丈夫です。私の問題ですから。じゃあこれで」


 芹香は足早に、ドアを開けて一人先に階段を降りていった。


「芹香ちゃん? ちょっと待って!」


 その様子に、いつもの快活な彼女とは違う空気を感じた武士は、ほとんど反射的に芹香を追って駆け出した。

 必然的に、葵に握られていた手は、武士が振り払う形になる。

 武士は背後で振り払われた手の平を黙って見つめる葵に気づかず、芹香を追って階段を駆け下りていった。


 翠が、給水塔の上から飛び降りてくる。

3メートルの高さから飛び降りた翠は、まるで重力を感じていないかのような軽やかさで屋上に降り立った。


「振られちゃったね、葵ちゃん」


 からかうような口調でそう言うと、翠は葵の肩を軽く叩く。


「べつに…。演技だから」


 見つめていた手を降ろす葵の表情は、いつものクールな彼女だった。


「九龍。お前、芹香と何か関係あんじゃねえのか」


 ハジメが直也に詰問する。


「なんだ。やけに気にするんだな、御堂。あのハーフの美人、好きなのか?」


 直也にしては珍しく、からかうような軽い口調で返す。


「……なんで芹香がハーフだって、知ってるんだ」


 逆にハジメの方は、厳しい口調で聞いた。


「見たら誰でもそう思うだろ。それに3年の教室でも有名だよ。新入生に、ドイツ人とのハーフで美人な子がいるってね。それで俺も、彼女のことを覚えていたんだよ」


 美人の女子生徒が話題になるのは、普通の高校生としては自然なことだった。

しかしハジメは、入学式の日、剣道場に行く前の芹香が、既に直也のことを知っている様子だったことを思い出す。

 そのことを直也に突っ込もうとしたが、先に直也が口を開いた。


「さあもう教室に戻ろう。御堂に葵さんも、授業に遅れてない方がいい。あの様子だと、田中は芹香さんと一緒に授業に遅れるかもしれないからね。全員まとめて授業に遅れたら、教師に目を付けられかねない」


 そう言うと、自分もさっさと歩き出す。


「じゃあ放課後。生徒会室に来るのを忘れないでくれよ。今日は生徒会の集まりは無いから、他の生徒に見つかる心配は無いよ」


 そう言い残して、直也は階段を降りていった。


 芹香のことを追求し損ねたハジメだったが、暁学園に入学して以降、何度も話してきた芹香が、ごく普通の女子高生であることはまず間違いなかった。

どこかの組織に属しているとか、そういった背後関係などありえない。

だから、直也と芹香の関係など、たとえあったとしてもこちら側に影響はないだろうと思った。


 一方、一人教室へ戻る直也は、教室棟に繋がるガラス張りの渡り廊下を歩いている途中で、今までいた屋上の階下、移動教室棟の廊下で向かい合わせで話をしている武士と芹香を見つけた。


 芹香は俯き、何かを話している。

武士もそれに応じて何か話しているようで、きちんと相談に乗れているようだった。

 直也ではなく、武士に。芹香は自分の悩みを話しているようだった。

 

直也ではなく、武士に。

胸に微かな痛みを、直也は感じる。


 命蒼刃も。

 芹香も。

 自分を選ばない。

 

そんなことを考えてはいけない。

 そんな風に捉えてはいけない。

 直也は自分の胸に去来した痛みを無視すると決める。

 そうだ。そんなことを考えている暇はない。

 自分には為すべきことがある。

 もう、残された時間は僅かなのだから。


「じゃ、早く追いかけようぜ」

「御堂ハジメ。気付かれないように注意するのよ?」


 ハジメと翠は言葉を交わすと、階段に向かう。


「何してるの?葵ちゃん。早く行くよ?」


 翠は立ったままの葵に声を掛けた。


「なに……どういうこと?」

「どういうことって、決まってんじゃん。武ちん追いかけて、こっそり話を聞くのよ」


 翠は早く早く、と葵に向かって手招きする。


「そんな。良くない、んじゃない、かな…」


 葵は尻込みするが、翠が戻ってきてその手を掴む。


「気にならないの?」

「だってあの子は、武士に相談がしたかったわけでしょ?盗み聞きなんて…」

「告白かも知れないじゃん!そうだったら、葵ちゃんピンチよ!」

「ピ、ピンチ?」

「あの子美人でグラマーだったし。もし武ちんがあの子のことを好きになっちゃったら、葵ちゃんとの魂の繋がりが薄くなっちゃうかもしれない!」

「え…そ、そういうものなの…?」


 翠の言葉の勢いに押される葵に、ハジメも追い打ちを掛ける。


「これは盗み聞きじゃねえ。武士とお前の魂の繋がりを守る為の、緊急ミッションだ」

「そうよ。決して色恋沙汰に疎そうな武ちんがグラマーパツキン美少女に迫られて困っているところを、冷やかし半分で覗いてやろうとかそんな浅はかな気持ちじゃないのよ!」


 畳み掛けるように言ってくる二人に、葵は顔を引きつらせた。


 武士は屋上から降りた芹香が、教室棟に続く渡り廊下とは反対の方向に角を曲がったのを見て、慌てて追いかけた。

 移動教室棟の廊下で追いついた武士は、芹香の背中に声を掛ける。


「待ってよ、芹香ちゃん」


 武士の声に振り返った芹香は、自分を追ってきたのが武士だけだということを確認すると、安堵するように息をついた。


「……九龍先輩は?」

「え?あの人は……わからない。僕だけ走ってきちゃったから…。屋上に残ってると思うけど、もう教室に戻ると思うよ」

「そう。……ごめんね?逃げるみたいに出てきちゃって」


 にこりと笑顔を見せる芹香。しかしその表情は、武士にはいつもとやはり違って見えた。


「何かあったの…?相談って…」

「なんでもないの。ごめんね、忘れて」

「…」


 俯き加減で言う芹香に無理に聞き出すのも気が引けて、武士は何も言えなくなる。

 気まずい空気の中で沈黙が続く。

 武士は頭の中で掛ける言葉を必死で探すが、見つからない。


そうしている内に、芹香が突然、頭を抱えて大声を上げた。


「あー!ごめん!そうだよね!」


 驚く武士に、顔の前で手の平を合わせ、ごめん、というゼスチャー。


「ごめんね!暗い顔してあんな風に飛び出してきて『忘れて』なんて、どこの世界の悲劇のヒロイン気取りだっつー話だよね!」


 芹香は喚くと、顔を上げて舌を出した。


「超☆恥ずかしい」


 戯ける芹香に、武士は思わず笑った。


「なんかまだ無理してる気がするけど……よかった。いつもの芹香ちゃんだ」

「へへ。笑ってくれて、ありがと」


 芹香は再び俯くが、すぐに顔を上げて、武士を見つめた。


「武士君。困ってることがあるんだ。相談に乗ってくれるかな」

「もちろん」


 武士は頷く。同時に、

 キーンコーンカーンコーン。

 午後の授業開始のベルが鳴った。


「あ…」


 武士はどうしよう、と芹香の顔を見る。

芹香は少し悩むように視線を落としたが、すぐに武士の顔を見る。


「ごめん武士君。困ってることって、今日の放課後のことなんだ。授業に出ないでこのまま、話を聞いてもらってもいいかな」


 武士はもちろん頷いた。



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