2 旅の始まる前
お題怪しいぬめぬめ。制限時間15分
俺はそこをじっと見つめた。
そこと言うのを詳しく言うと自宅のベッドの上だ。
そこには光を放つどろっとした何かがある。
色は毒々しい緑色。
朝、出てくるときにはなかったそれにどうすれば良いのか分からない。
何か溢しただろうか?
何を? こんなに大量に?
それは、バケツ一杯分くらいはあるのではないかと言う量だった。
自分の心情を整理しようと呟いた。
「どうすれば」
「やあ、帰ったんだね」
「わあ」
返事があるはずのない言葉に声がかかった。
この部屋には誰も居ない。
信じられないことに緑色のぬめぬめした気持ちの悪い物体から発せられた言葉のように聞こえた。
俺が思わず情けない声を上げ、尻餅をついても仕方がないだろう。
俺は、幽霊とか妖怪とかそういうものが大の苦手なのだ。
自身の体がふるふるするのは間違いなく恐怖からだった。
「そんなに喜んでもらえるなんて嬉しいな」
「ち、ちがっ……」
舌がもつれてうまく言葉が出ない。
しかし、明らかに緑色のぬめぬめした何かが話しているのは分かった。
「君はとてつもなく幸運だ。我らが神によって選ばれるなんて、百年に一度あるかないかって言う幸運なんだよ。泣くくらい喜んでくれるなんて、君は分かる人でよかったよ。この前の子はわからずやで怒ってばかりで僕に刃物なんて向けてきたから、殺されちゃったんだ。でも、君は喜んでくれた。だから、僕と一緒に異世界に行って勇者になろうよ」
その言葉を聞いて俺は意識を失った。
夢でありますように。