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到着

意志疎通は手振り身振りで行った。

柳吉は熊との会話スキルを発揮して大体の情報を引き出した。ぼくはそれをまとめてみる係り。

要するに馬車勢力はどこかのお姫様で名前はミソルト、その侍女ソーラと、護衛2人グジとムッス。

町かどこかへ移動中にあの黒衣達に襲われた。

奴らが何者かはわからないっぽい。








何故か銀色少女ミソルトが柳吉に懐いていた。柳吉の腕にぶら下がった彼女をほーれーと言いながらクルクル回している。それを見て叫びながら止めさせようと侍女ソーラはやっきになっていた。不動の姿勢でグジとムッスは辺りを警戒している。


ぼくはと言うと、クマの枝毛を探していた。

なかなか毛並みが良いなこいつ。あ、みっけ。


「さて、どーすっかな。俺達、町に、行きたい。OK?」


つうじてるっぽい。ミソルトはふんふん言いながら頷く。そして柳吉の手を取って馬車に入ろうとしてソーラに止められた。何か言っている。多分姫様と一緒の馬車なんてダメだー!とかそんな所かな。わからないけど。



グジとムッスもこっちに近づいてくる。グジは侍女とミソルトに話しかけた。侍女は少し考えていたけど、諦めたかのようにため息をついた。苦労人っぽい。結局同行を許したようだった。


「アイアイ、ここでお別れだ。だが出会い別れは表裏一体。悲しむ事はない」


アウッアウッ!と嫌がるクマ。流石に人の多い所ではクマを連れていると騒ぎになりそうだ。

少し可哀想だけど仕方ない。

グジが話しかけてきた。相変わらず何を言っているのかわからないけど、クマとぼくを指差している。


「ごめん、わからないや。柳吉通訳して」


「なんだ?あー横転した馬車起こしてほしいみたいだな」


よくわかるなー。••••••とりあえず手伝おう。

けど、馬は死んでいるみたいだし、どうするつもりなんだろう?重量感のある音を立てて馬車が立ち上がった。そして馬の死体から固定器具を外していく。


「なるほどそういう事ね」


柳吉が呟く。ぼくは疑問符が頭に浮かんだが、まぁいいかとスルーする事にした。


グジとムッスは死んだ馬に黙祷をした。大切だったんだろうな。2人は鬣を切り取って懐に大事そうに閉まった。クマは空気を読んで沈黙している、と思ったら口元からダラダラよだれを垂らしていた。しょせん熊か。


しかし、思いついたかのようにクマは馬車へと近づいて固定器具を付け始めた。まさ、か。

ぐっ!とこちらを向いて親指らしき指を立てる。柳吉の真似だろうか。すげえイケメン顔。熊のくせに。


「アイアイよ、そうまでして俺達について生きたいんだな••••••わかった!おまえの男気は受け取ったぜ!」


そして素晴らしい笑顔を見せる。

知ってるか?そいつ熊なんだぜ?


□□□



黒衣達は、気絶から覚めると全員自害した。

呻き声一つたてずに口から血を吐いて死んでいく。

柳吉は必死で叫んで止めようとしていたが、無駄だった。

示し合わせていたようだ。

黒衣の集団が全員座ったまま、血を吐いて頭を垂れてしんでいる。その光景が異様で気がつくと吐いていた。


「訳わかんねえ」


柳吉はそれきり黙ってしまった。

グジとムッスはそれぞれ死体の服の中を探っていたが、手掛かりはなかったようだ。



8人の護衛の遺体と黒衣達の遺体は木の下に埋めた。

しばしの黙祷と言葉。ミソルトもソーラも泣いてはいなかったれけど悲しそうだった。




町までは、ほんの数キロの所だったようだ。

クマ車の左右をグジとムッス、前後を柳吉とぼくが挟んで歩く。空が朝焼けに染まる頃には綺麗に舗装されている道に変わっていった。

そして、2つの丘を越えると、朝靄の中に巨大な石造外壁がそびえ建っていた。


「おー、すっげえ~でっけー••••••。初めて見た」


「ぼくも。感動するなぁ」


ミソルトが何か話しかけてきた。


「多分『あれが目的地だよー。ようこそ!』って言っている」


うん、表情で何となくわかった。ミソルトは歩きっぱなしの僕たちにずっと声をかけてくれていた。

落ち込んでいた気分が少しは晴れた気がする。

短い時間だけど、そのおかげで出会った当初より何が言いたいのか、分かるようにはなってきている。••••••気がする。



グジが巨大な外壁門の隣にある小さな扉を叩いた。

がしんがしんと朝もやの中で騒音が響く。



暫くして小さな扉の更に小さな小窓が開いた。

髭面の男がじろじろとこちらを伺った。

発した声にはどこか角があるような••••••?


「ん、なんかもめてるな?」


グジと髭面男の会話が言葉のぶつけ合いに変わっていく。終いには扉を壊す勢いで蹴りつけ始めた。ソーラが金切り声を上げてグジを止める。ムッスも胴体を抑えて扉前から引き剥がした。

••••••グジはあんまり怒らせないようにしよう。


門は暫く沈黙したままだった。

多分時間にならないと開けない決まりでもあったんだと思う。丘から五つ拳を空けた位まで太陽が昇った時にようやく門が開いた。

髭面男は当番が代わったのか出て来ない。けれど入場手続き中グジはずっと睨んでいたので、門番がビビっていた。可哀想に。


手続き後はあっさり入場できた。おかしい。何故違和感の塊である野獣がスルーされたのか。それともファンタジーなこの世界では当たり前なのか。


「きっとアイアイの心意気に皆胸を打たれたのさ」


な訳ない。


色々手直ししてます。

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