序
小さい頃は意識せずともそう思っていた。
ボクは特別だ。
ボクは最高だ。
ボクは天才だ。
けれどもそれはその他大勢との比較される時の
『ユニーク』
という言葉に置き換えられて気付かされる。
薔薇とか、百合とか、あるいはラフレシアとかそういった花じゃない。
せいぜいかすみそうのように、
あ、そういえばあそこに何か咲いていた気がする。
と言われる程度の人間に過ぎない。
格好良く活躍して、皆から賞賛されて、ラッパの音が辺りに響く。彼等の為だけに。
ボクはそれを眺めているだけだ。
ボクは勇者になれない。
絶望的な事実は年を追う度に気付かされる。
本物の輝きにはかなわない。
ボクはその輝きに照らされていただけなんだ。
「人生にはその人が輝く瞬間がある」
なんて主人公のセリフだ。
象が蟻の気持ちを知らないように。
処女がビッチの官能を知らないように。
勇者が魔王の苦悩を知らないように。
主役には脇役の気持ちなんてわからない。
どんなに輝く才能があっても、どんなに恵まれた環境にいても、観客はそれに気付いている。
コイツが主人公だ。ボクじゃない。
けれど自己を投影して、憧れる。
もしも勇者ならば、と。
見てくれてありがとう。