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ホテルの向こうの異世界へ  作者: テイク
第1章旅の始まり編
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1-4

お待たせしました。


ポイントも感想もいただきました。ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

では続きをどうぞ。



 ????年??月??日(?) ホテル【ホライゾン】8811199号室


「ん? うぅ?」


 気がつけばそこはスニアの村の宿屋の一室ではなく、元の世界の悠理の部屋のような場所だった。そうホテル【ホライゾン】の8811199号室にユーリ、いや悠理はいた。

 服は旅人の服ではなく、ここに来た時と同じ悠理の私服だった。

 戻って来た。悠理がそう理解するのにそんなに時間はかからなかった。

 なぜなら、彼の目の前には、見たくもないものがニンマリと、イラッとくる笑みを浮かべていたからだ。


「おはようございます」


 ニヤニヤと上がり調子に、尚且つふざけたように言う、見たくもないものガイド。格好は相変わらずで、しかも悠理と平行になるように彼は宙に浮いていた。

 目覚めから嫌なものを見せられて今まで上がっていたテンションが大暴落だ。0どころかマイナスまで一気に落ちこんだといっても良い。


「…………」

「お楽しみだったようで何よりです。はい。

 今回は今後について話すことがありましたので、こちらから呼び戻させていただきました」


 ガイドの言い方からすれば自由に行き来ができるようである。そんなことより起き上がりたい悠理であったが、ガイドはニヤリとしたままで動かないため起きあがれない。

 下手に起き上がれば、ガイドとキスなんてことになりかねない状態なので動くに動けない。ガイドなどと絶対にキスなどしたくなかった。そうなれば自殺しかねない。

 それに対する悠理の反応をニヤニヤ楽しそうに見ながらガイドは今後の説明を始めた。


「さて、今後についてですが、次回からあなたが眠りにつけば、好きな時に来て、好きな時に帰ることができます。自由自在というわけです。帰る時間を指定もできますよ~。

 こちらは、まあ、あまりオススメはしませんねぇ。自由が利きませんので。まあ、全てあなたしだいですがねぇ。(使える時間があるかはわかりませんがねぇ)

 それとこちらが会員カードです。これがあれば当ホテルの施設は使い放題で御座います。追加課金も可能ですよ。はい。万一、紛失されても戻って来ますし、あなた以外には触れれませんので、ご安心を(まあ、いつまで使えるかはわかりませんがねえ)」


 渡されたのは艶のある漆黒のカード。クレジットカードほどの大きさと薄さで、そこには白文字で悠理の名前とユーリという名前、それから個人情報、あとは100という金額のような数字が刻まれていた。

 それを見ている間に、特に説明する気はないのかガイドはさっさと次に話を進める。


「ああ、お渡しした鍵ですがお帰りの際はフロントにお預けください。お預けしなくても構いませんが、どうなってもこちらは責任をもちません。はい。そして、また御来訪の際にお受け取り下さい。(いつまで預けられるかわかりませんがねぇ)

 ホテルの施設ですが、まあ、始めの内は情報交換の出来るサロンなどがオススメですよ。カジノは、まだあなたには早いかもしれませんねぇ。はいぃ。(まあ、あなたには関係ないかもしれませんがねぇ)

 それと、異世界とあなたの世界の時間ですが、まあ、自由自在です。好きな時に戻れますよ。今回は1分も進んでいません。夜寝るときに異世界に行き帰ったら朝、何てことも出来ますよ。また逆もです。はい。存分にお楽しみください。(せめてねぇ)

 では……」


 ようやく悠理の前からどいたガイド。そして片足を上げて、手を胸に置き、ふざけたように礼をして、そのままの姿勢でピョンと彼はジャンプする。するとガイドは跡形もなく、最初からそこにいなかったかのように消えた。どこまでもふざけた男である。

 さて、ようやく起き上がれた悠理であったが、また新たな人影が目の前に現れた。あのホテル【ホライゾン】に最初に来た時に悠理を混乱の中に叩き込んだ謎の美少女である。何やら何かを待ち望んだ犬のように目をキラキラさせてじっと悠理を見ていた。


「えっと、何だ?」

「ん!」


 じっと悠理を見たままの少女。まったくわからない。どうやら喋れないらしいので聞いても意味がない。というわけで悠理は何だろうかと考える。こういうことは悠理は苦手なのでわからない。

 しばらく考えた後、ようやく気がついた。


「ああ、名前か」

「ん!」


 コクコクと頷く少女。合っていたようである。というよりガイドの言葉を思い出しただけだ。確かにいつまでも名無しのままでは不便だ。


「名前、ね……」


 が、問題が一つ。悠理は名前なんぞ付けたことがない。まあ、ペットなどを飼った事がなければ当たり前である。それに動物と人に名前をつけるのとでは違う。その為どんな名前を付けてよいのかわからない。

 それにネーミングセンスは絶望的なレベルである。今はいない転校して行った幼馴染や、唯一親しくしている女子である後輩でもいればアドバイスや良い名前を考えてくれるのだが今はそれもない。自分で考えなければならない。


「…………」

「…………(キラッキラッ)」


 だが、付けないという選択肢をとることはできないようである。目の前の少女は目をキラッキラッさせて待っている。本当に大きな犬のようだ。きっと尻尾でもあればブンブン振り回してることだろう。悠理はそんな、しかも女の子を悲しませることなど出来ない。

 とにかく名前である。さっき、悲しませるとかできないとか言ってたのにもうテキトーにしようかとも思う悠理なのだが、キラッキラッした目を見たらそれも悪い気がする。仕方がないので悠理は本棚から本を一冊抜いてくる。別に現実逃避をするわけではない。本の中の単語やら登場人物やらの名前を付けるのだ。

 それなら特に問題もないだろうし、悠理のネーミングセンスで何か被害が起きるわけではない。名づけるだけで被害が起きるネーミングセンスってなんだという話だが。

 とにかく本を開く。そこに出て来た名前を付けることにした。

 しかし、あまり良い名前がない。というか登場人物が全て男だった。これでは付けようがない。そんな時、良いものを見つけた。


「よし、これで良いか。

 決めたぞ。お前はシィだ」


 シィ。ふと目に付いたCから。女の子に付ける名前なのかはともかくとして、少女改めてシィは気に入ったご様子だ。喜んだ様子でないやらパタパタと走り回っている。楽しそうにしているのがその証拠だろう。中々可愛らしい。


「ん~♪」

「さてと、とりあえず帰るか」


 一度帰ることにして悠理は部屋を出る。その際、シィが服を掴んできて、待って待って的な視線を送って来るのを不屈の精神(笑)で、振り切って彼は罪悪感バリバリでフロントにやって来た。フロントに鍵を預けて、ホテルの出口へ。扉を開けた瞬間、悠理は意識を失った。


*****


 西暦2112年7月19日(木) 夏 昼過ぎ 悠理自室


「ううぅ? 俺の部屋? またあの部屋……じゃ、ないか」


 気がつけば自分の部屋だった。ホテル【ホライゾン】の部屋ではない。あの部屋は微妙に歪んでいたりするが、この部屋は普通であった。

 それだけでなく、自分が寝た時のままパソコンもついたままである。パソコンの電源を切るついでに時間を確認する。眠ってからまったく時間が進んでいない。夢だったのかとも思ったが、手に持っていた漆黒のカードがそれを否定する。


「異世界、行ったんだな俺……」


 何やら感慨深いが、とりあえず部屋をでる。もうすぐ晩御飯の時間だ。一食抜いていたので、腹がすいている。

 というわけで悠理は、同居人の麻理が料理しているであろうキッチンへと向かった。

 その途中のリビングに入れば悠理を芳しい香りが迎える。みんな大好きカレーの匂いだ。否応なく母親というものを連想させる匂いだ。

 キッチンを見れば、ワイシャツ1枚にエプロンという誠に物凄いいつもの格好の麻理が、陽気な鼻歌を歌いながらカレーをかき混ぜているところだった。


「~♪ ~♪ ~♪」

「うまそうだな」

「むおっ! 何だ悠君か。ちょうどできたとこよ。今、呼びに行こうとしたとこ」


 タイミングが良かったようだ。すぐに夕食となる。

 悠理は先に綺麗に磨かれ、鏡のようになったスプーンが置かれた食卓につく。すぐに麻理がカレーを運んで来て合掌、後に食べ始めた。

 悠理が一口すくって食べる。

 いつもの如くおいしい。肉は豚肉を使っているのかヘルシーだ。いつもよりも辛めで夏の熱気により減少していた食欲を刺激される。

 悠理は、これで性格と格好がまともならフラれることなどないだろうと思う。思うだけで口には出さない。出したら面倒臭いことこの上ない。

 食べている途中で、悠理が麻理の方を見ると、磨き上げられ、鏡のように澄んだスプーンにはニコニコとした彼女の顔が写っていた。何かを待っているようにも見える。悠理はすぐに気がついた。


「今日もおいしいな」

「ふふん、女の嗜みだからね!」


 自慢気に胸を張る麻理。そのせいで胸やら、胸やら、胸やらが格好のせいもありかな〜り、かな〜り強調されてしまっている。目の毒にしかならない。


「はいはい」


 が、何かホテル【ホライゾン】の混乱乗り越えたせいか、あまり動揺していない悠理。ほかにもガイドやら、ガイドやら、ガイドやらと付き合ってたこともあるだろう。

 ……ここはみっともなく動揺するところだろう。そして麻理にいろいろいじられるところだろ。常識的に考えて。どこの常識かはわからないが。


「む~」


 そんな反応を期待していた麻理は肩透かしをくらいむっとする。だが、すぐにニコニコ笑顔に戻った。まだ策はあるのだ。

 もとよりこれはジャブのようなもの、本命はこのあとだ。失恋の悲しみをこんな短時間で乗り越えるほど、麻理はイイ性格をしていない。こんな時は発散させるに限る。

 ……何を?。


「!?」


 悠理はぞわっとした悪寒感じた。嫌な感じがする主に麻理の方から。

 だが、表面上はニコニコしてカレーを食べている。だから気のせいだと思うことにした。きっと、先程まで命の取り合いをする世界にいたせいで神経が過敏になっているだけなのだ。きっとそうだと思うことにした。

 さて、夕食が終わったあと悠理は麻理に勧められるまま風呂へ。何も疑うことなく悠理は風呂場へと向かった。それを見送る麻理のニコニコ笑顔の中に隠されたニヤリとした笑みに気付かずに。

 脱衣所で服を脱ぎ、風呂場に入る。特にタオルなどは巻かない。別に自宅なのだから気にする必要はないのだ。まずは体をさっさと洗ってしまう。それから湯船に浸かる。


「はあ~」


 風呂は日本人の心である。やはり気持ちが良い。嬉しいことがあった今日は特にだ。


「しかし、色々あったな」


 湯船に浸かりながら今日あったことを考える。誰かに話しても到底信じてもらえないような話だ。こんなことがあるとは思っていなかったこと。こんな現実を知れるとは本当に運が良い。悠理はそう思う。そしてこれから異世界でどうするかを考える。

 とりあえずは村を出て、大きな街に行って見たいと思うのだが、生憎と異世界の常識も、資金も少ない。誰か助けになってくれそうな人間がいないか探すのが先か。そんな感じで段取りを決める。


「上がるか」


 段取りを適当に決めた所で風呂から上がる。悠理はそんなに長湯するタイプではない。どちらかと言えばカラスの行水派だ。それほど長く入ってしまうと上せるのだ。

 というわけで湯船から上がり、脱衣所脱衣所への扉を開くと、そこには一糸纏わぬ、生まれたままの姿の麻理が立っていた。


「へ?」


 さすが(?)の悠理もこれには思考停止。

 その隙を麻理は見逃しはしない。思考停止状態から復帰し、物が考えられるようになり、状況を把握したときには、背中には水で濡れた微妙に温かさをもった風呂場特有の床の感触。

 そして、腹の辺りには人肌の温かさと物凄い柔らかな感触。目の前には妖艶な麻理の顔。どうなっているのかと言えば、裸の悠理は同じく裸の麻理に組み伏せられている。

 他人が見れば非常にうらやましい状況なのだろうが、悠理からしたら何が何だかわからない上に、非常に嫌な予感がかけめぐっててそれどころではない。

 予想通り(?)行き成り唇をふさがれた。しかも何かが口移しで流し込まれる。どうすることも出来ず悠理はそれを飲んでしまった。すぐに唇は離れた。


「な、何しやがる!?」

「ふふふ、い・い・こ・と」

「いやいやいや!! ここからどうする気だよおい!!」

「いいの、悠君は気にしなくても。記憶に残るようなことはしないから。一発で飛ばしてあ・げ・る」

「ちょっ! 待てエエエエエエエエエエエエェェェェェェ!!!」


 しかし、麻理が待つわけもなくことにおよぶ。いつの間にやら悠理は意識を失った。


********


「さてと……」


 麻理の下では悠理が気絶していた。

 起きる気配はない。いつものことなので問題はない。問題はこの絵図らの方なのだが、そんなやましいことなどするわけがないので、これも問題ない。

 いや、問題大有りだろうが問題なしということにしといてください。


「ついに始まっちゃったしそろそろ潮時なのかもしれないわね~」


 そうどこか悲しそうな顔でつぶやく。


「まあ、きちんとやっておかないと……」


 そうして麻理は悠理の体へと手を伸ばしたのであった。


********


「ん? うぅ……?」


 気がついた悠理はリビングのソファーで寝ていた。きちんと体を乾かされ、着替えまで済まされている。しかし、悠理には眠った記憶などなかった。

 というか、どうして自分はこんなところで寝ているのだろかとすら疑問に思った。風呂に入った、そこから先の記憶が一切ない。

 悠理には何があったのかわけがわからない。反対に、キッチンで片付けをしている麻理は妙にツヤツヤしていて機嫌が良いようにも見える。

 何かがあったのは一目瞭然なのだが、すっかり記憶が消し飛んでいる悠理は気がつかない。本当に麻理は何をしたのだろうか。気になるところである。

 身体に異常はない。むしろ、風呂に入る前以上に良い。今世紀最大、生涯最高と言えるくらい調子が良かった。

 寝ている間に何があったのか、どうして寝てしまったのか、前以上に気になった。


「……疲れてたのか?」


 わけがわからないなりに考えたがやっぱりわからないので、悠理は疲れていて眠ってしまったことにした。

 なぜだか彼にはわからなかったが、とにかくこのことは、忘れてしまった方がいいと判断したのだ。


「じゃあ、俺は寝るから」

「は~い♪」


 気持ち悪い位に機嫌が良い麻理。

 ちょっとした何かの片鱗を悠理は感じたのだが、一瞬でそれはどこかへ消えた。まあ、良いかと悠理は自室へ向かう。きちんと鍵をかけることを忘れない。何だかかけなければ危ない気がしたのだ。

 事実、もしかけなかったら悠理は確実に何かあったころだろう。誰にとは言わない。わかるだろう。


「さてと……もう一度行くか」


 悠理はもう一度異世界へ行くべく、何度目かになる眠りの中へと入って行った。その胸には期待以外にはなかった。


読んでいただきありがとうございます。

よろしければポイントや感想をお願いいたします。ポイントと感想は作者の励みになります。


あとこんなキャラ出してという案があれば申して下さい。出すかもしれません。男、女問いません。何でもござれ。

あ、男キャラなら言われたらいずれ絶対出します。


あと、すみませんが作者は豆腐メンタルなので批評はソフトにお願いします。


では、また次回も会えることを祈ってます。


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