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ホテルの向こうの異世界へ  作者: テイク
第0章プロローグ
4/94

0-3

これでプロローグは終了です。次回から本編始まります。


 ????年??月??日(?) ???【?????】


 気がつけば悠理は見知らぬ場所にいた。

 彼が知っているはずのない古風な高級ホテルである。こんな場所に来た覚えはない。自分は睡魔に負けて眠ったはずなのである。それがどうしてこのような場所に来たのだろうか。わからなかった。

 とりあえず周りを見てみる。

 天井は高く、細かい装飾がなされていた。その高い天井からは、豪華なシャンデリアがさがっており、床には金で刺繍の施された赤い絨毯が敷かれている。

 正面にあるフロントの左右には緩やかなカーブを描いた階段が1つずつ。その他、壁に掛けられた絵画や置かれた調度品からここが普通の場所ではないことははっきりとわかった。


「どこだ、ここは?」


 自室で寝たはずなのにどうしてこんな場所にいるのか。そんな疑問すら解消することはかなわなかった。

 予想として現実的なのは夢だが、このようにリアルな夢を悠理は見たことがない。それにほほをつねって痛みがあったことが夢ということを否定していた。

 ならば何なのか。心当たりは1つある。寝る直前までやっていたアレ。

 異世界の自分の設定。つまり、ここは異世界の何かということ。それ以外、悠理には考えつかない。というよりそれ以外があった方が問題である。

 異世界招待された以外であれば拉致誘拐くらいしかないからだ。と言っても悠理に拉致されたり誘拐されたりする理由はないので違うことはすぐにわかるのだが。

 それを考えればここが異世界であると考えた方がより現実的であった。このあまりに現実ばなれしたこれを現実的と言ってよいのであればだが。

 しかし、どんなことであったとしても、このような展開は悠理からすれば願ってもないことであった。


「ははっ、まさか、本当に異世界に行けるなんてな」


 思っていたのと大幅な違いはあるし、状況も把握できないが、悠理のテンションは上がっている。今まで叶うわけないと思っていた願いが叶ったのだから当たり前だ。

 心のズレという違和感も今やもまったくと言ってよいほど感じない。悠理は、本当に年甲斐もなく子供のようにワクワクしていた。あとで帰ったらあいつに話してやらないとなとか上機嫌で考えていた。

 とりあえず悠理は、人がいないかフロントのところに確認に行くことにし高級そうな絨毯の上を歩き始めた。

 エントランスに響く絨毯の足音が心地良いBGMとなる。このような場所は初めてだが、彼はなかなかに楽しんでいた。


「おや、お客様ですか。それも新規。シーズンでもないのに珍しいですねぇ(ニヤリ)。

 ……おや、いえ、なるほどお帰りということということでしょうか。これは面白いですねえ」


 そんな楽しんで歩いて受付に向かっているとコツンという音と共に、どこか浮つき人の神経を逆撫でするような男の声が上の方から響いて来た。

 珍しいと口では言っていたが、口調はまったく珍しいと思っていないようであった。

 そちらを見れば悠理から見て正面右手の階段を、コツン、コツンと高級そうなステッキをわざと絨毯の隙間につき、小気味の良い音を出しながら降りてくる男が1人。

 その男は奇妙奇天烈、奇々怪々という言葉が、非常に合う男であった。寧ろそれらが服を着て歩いているといって良いほどだ。悠理はその男をまじまじと観察してしまった。

 まず間違いなく日本人ではない。むしろ人かどうかも怪しいと悠理は思った。それほどまでに奇奇怪怪な男だった。

 身長はかなり高くすらりとている。しかし、体に肉は殆ど見られな。細い。細すぎると言うくらいに。まるで骨格にそのまま皮を貼り付けた骸骨のようにも見えた。

 髪は肩辺りまで伸ばされ、色は頭の中心で半分が黒色、残り半分が白色になっていた。奇抜も奇抜だ。

 さらに視線を下へ下げる。暗暖色系でカラフルな色をした、執事などが着るような燕尾服のようでもありながら、サーカスのピエロが着るような滑稽な衣装に見えなくもない奇妙奇天烈な服を着ている。

 頭にはやはり暗暖色系のシルクハットを被っている。それが更に服装の奇妙さを際立たせていた。

 一見していや、しなくてもふざけた格好だ。真面目に見えるようで不真面目。

 決して相手に好意的な印象を抱かせることができそうにない奇妙奇天烈な格好。そんな奇妙な奇妙な格好が、似合っていると思えてしまうあたり男の奇妙さ、奇天烈さが堂にいっているということの証明だろう。そんなもの証明されたところで意味はないのだが。

 だが、最も悠理の気を引いたのはそんなことではない。

 確かに多少、いや多かれ少なかれひかれはした。それ以上に彼の注意を引くものが、その男にはあった。

 まさしく奇妙奇天烈、奇々怪々。これに注目しないで何に注目するのかって言ってよいくらいのものであった。

 それは男の顔だ。

 確かに顔は人間が他人を見ると一番注目する。

 しかし、男の顔は悠理が生きた17年あまりの時の中で1度も見たことがない狂気に染まった顔だった。

 ギラギラという言葉が合いそうな白眼と黒眼が逆になり、白が黒、黒が白になった異様な狂気をたたえた目。

 それを際立たせる、けったいな服と手袋に覆われ顔しか見えないが、病的、死者的な、いや、最早色自体が消えてしまったかのような青白い肌。口が裂けてるんじゃないかという程につり上げられた口が男の異常さをより浮き彫りにしているようだった。

 異常も異常。それが回りまわって正常とすら感じさせた。異常だからこそ、これは正常なのだろうとすら思える。

 だが、悠理はどいうわけかデジャビュのようなそんな感覚を感じていた。

 ここに来た時も実は感じていたのだが、この男を見てはっきりと悠理はここに来たことがあるような、男に会ったことがあるようなそんなありえない感覚を感じていた。

 いや、それはない。悠理はそれを否定する。興奮で少しハイになっているだけだろうと。こんな場所に来た事があるのなら覚えているはずだ。

 男のことだってそう。こんなヤバイ男は早々忘れるわけがない。なので、その感覚を悠理は無視した。それがどういうことなのかも知らずに。

 階段を降りきった男は悠理の前までやって来ると恭しく深々と礼をした。

 されど、どこかそれはかなりふざけているように見えた。ふざけたように見えるのは男の格好のせいなのか、それとも気のせいなのかは悠理にはわからない。

 ただ、ニヤリと嫌らしい笑みを浮かべている顔を見ると気のせいではないようにも悠理は思えた。


「ようこそおいで下さいました。我らがホテル【ホライゾン】は、お客様の御来訪、心より歓迎致します。

 (わたくし)は、当ホテルの支配人を任されております、ガイドと申します。以後お見知りおきを」


 ガイドと名乗った男は先ほどと同じ礼をした。

 この男の発言でわかったことは、この場所がホテルと思った悠理の予想がただしかったこと。

 ホテル【ホライゾン】。

 それがこの場所の名前。ガイドが目の前の男の名前ということ。とりあえずは場所の名前だけははっきりした。


「ここはどこなんだ? お客様って、俺は気がついたらここにいただけなんだが」


 悠理はガイドに聞いた。

 それ以外にすることはない。答えてくれそうなのもこの男以外にいない。選り好みはできない。もし出来たとしてもこれ以上におかしなのが来ても困るだけなので我慢する以外に道はない。


「ほう、何も御存知ないと」

「あ、ああ」


 目をギラリと輝かせ、一際ニイィと口元をつり上げるガイド。悠理にはわけがわからなかったが、ガイドは楽しくて、愉しくて仕方ないという様子だった。


「では、此方へ。御説明致しましょう」

「ああ」


 ガイドはロビー右手にある扉を指し示し、そちらへと向かう。ガイドは床を滑るように移動していた。

 否、実際に滑っていた。まったく手足を動かしていなかったから確実だ。しかし、それを無理矢理意識の外に追い出して悠理もそれに続いく。

 ガイドが扉の前に行くと扉はひとりでに開き、二人を部屋の中に迎え入れる。

 扉の向こう側は小さな談話室のようになっていた。1つのテーブルと2つの赤いソファーが置いてあり、部屋の奥では暖炉の炎が煌々と燃えていた。

 夏なのに暖炉? と悠理は思ったが、談話室はまったく暑くはなかった。

 もとより、このホテル【ホライゾン】の室温は快適に設定されているのだ暑いわけも、寒いわけもない。暖炉などは完全に見た目重視のための調度品である。

 だが、そんなことを悠理は知るわけないので、異世界の技術か魔法的なものだろうということで済ませた。

 便利な言葉である、異世界、魔法とは。これら二つでたいていのことは乗り切れる。まったく凄い言葉である。

 ガイドに促されるままソファーに座った悠理。

 真面目そうにしっかり座った悠理と、足を組んで妙に偉そうに座ったガイド。対照的である。これはこれで面白い。


「さて、では何から説明いたしましょうか。そうですねえ……やはり当ホテルのことからにしましょうか」


 ホテル【ホライゾン】。

 界と界、階と階の全てのものの重なり合う夢幻の境界線上に存在する、特別な者たちの集うホテル。ありとあらゆる者が一度は訪れるであろう望みをかなえる場所。

 誰もが、通り過ぎてゆく場所。戻ってくる場所。そして、またどこかへ旅立つための場所。望むものを望むだけやることの出来る場所。中継所。


 そんな説明をガイドは悠理にした。


「とまあ、こんな感じでしょうかねえ。上の者が回してきたものですからねぇ」

「なるほどな。で、これからどうすれば良い?」


 だいたいここがどういう場所なのかは大雑把に悠理は把握した。というよりも大雑把、漠然にかあの説明では把握することができないだろう。それよりも問題なのは、そんな場所にいたこと。

 つまり、これからどうすれば良いのか、ということである。いや、それすらも問題ではない。その答えを悠理は持ち合わせている。


「おや、わかっていると思いましたが? 既に登録は済ませているはずですユーリ様。この名で、あなたはここを渡る契約をしたはずですが?」

「…………ああ、そうだったな」


 悠理の予想は当たったようだ。ここ、ホテル【ホライゾン】がどういう場所かを考えれば必然的にこれからどうするかがわかるだろう。むしろこれからが本番だ。


「さて、ご理解いただけた所で、さっそく出発なさいますか?」

「ああ、する」

「では、こちらへ」


 再び一人でに開いた扉を通り抜けてフロントへ。そこには先ほどはいなかった女がいた。ここのスタッフなのだろう。

 髪は漆黒で、長く伸ばされているが邪魔にならないようにしている。肌はガイドよりはまともで人よりも少し白い程度であった。

 どうやらガイドはここの中でも異常な存在と見ても良いようだった。

 それならば他の人を呼んだ方がよかったかもしれない。ただし、受け答えができるようならであるが、という注釈がつくが。

 その受付の女の漆黒の目には感情、生気すら何一つなかった。そこにあるのは完全な無、虚空。表情もなく、その顔立ちの作り物のような美しさから人形のような印象を受ける女であった。

 否、紛れもない人形である。ここで定められた仕事をするだけの人形である。

 それだけに定められた以外のことは何もしない。だから悠理が何かを聞こうと話しかけたところで、受け答えが出来るわけがないのである。


「これはメアリと呼ばれているものです。まあ、名前がないと不便ですからねぇ。一応は、ここの従業員ですよ。別に何かするわけでもないのでお気になさらず。あまり関わる時間もありませんし。

 さて、これがあなたの部屋です。どうぞ」


 ガイドが悠理に鍵を渡す。部屋の番号は8811199。

 暗にこのホテルが八百万階建てだということを示すような数字だ。部屋数も尋常ではない。

 とにかく物凄い数字であるが、これに悠理はさして驚かない。これから異世界に行くというのにこれ以上驚いてどうなるんだろいう話である。

 だが、内心はかなり驚いていたというのはまた別の話。

 フロント横の階段を登り、その奥へと入る。

 番号を信じるならば八百万階。まさか階段で登るわけがなく、そこには古めかしいエレベーターがあった。

 途中で落ちないのかはなはだ心配であったが、乗らなければ先に進めないので、さっさと乗り込む。ガイドがエレベーターを操作するとゆっくりと上昇を始めた。

 そして、すぐに止まった。


「はい、着きました」

「早!?」


 さすがに悠理もこれには驚いた。

 ガイドを見れば彼は人を食ったようなニヤリ顔をしていた。してやられたと思うが、誰がこんなことを予想できようか。

 悠理はそれほど鋭い人間ではないので無理だ。どれだけかかるのかと心構えをしていた分一入である。

 階に着いてからもやはりというか何と言うかで、すぐに部屋の前についた。

 今度は予想していたのでそれほど驚きはしなかった。内心では結構驚いていたが。


「では、入りましょうか」


 ガイドから受け取った鍵でドアのロックを解除し、中に入る。

 世界が変わった(・・・・・・・)


「…………」


 悠理から言葉が消えた。

 その部屋の中はそれだけの驚きを彼に与えた。もう驚かないとか言っていられなかった。部屋の中には部屋など無かった。

 そこにあったのは無色。

 ひたすら何色にも染まっていない、どこまでも広い空間が広がっていた。何もない。そこには何も無い。

 あるのはガイドと悠理のみであった。

 後ろで扉が閉まりホテル【ホライゾン】との繋がりが消えた。


「さあて、では、あなたの神と御対面と行っきっましょう」

「はっ? ――なっ!?」


 その瞬間、驚く悠理の前に目の前から光を放つ少女が現れた。それが更に悠理を驚かし、そして、問題となった。

 とても美しい少女であった。

 悠理が見たことがある女の中ではおそらくダントツではなかろうかとも言えるほどの。髪は光り輝く、とても長い金髪でさらさらとした金糸のようである。その髪は、両サイドで二つにまとむられツインテールになっている。

 寝起きのように薄く開けられた目蓋から見える瞳は、悠理が寝る前まで散々、嫌になるほど見てきたあの夏空のような澄み切った青。見つめていれば吸い込まれてしまいそうになる。

 そんな容姿と反比例してか背はそれほど高くない。せいぜい小学生中学年と言ったぐらいだ。スタイルもその程度だが、成長するならば伸びしろは在るかもしれないことがわかる。

 だが、問題はそんなことではない。問題なのは彼女の格好だ。

 全裸である。そう全裸である。重要なので三度言うが全裸である。一糸纏わぬ生まれたままの姿である。そのうら若き乙女の柔肌を惜しげもなく晒してしまっているのである。

 さて、どうしてこれが問題なのかと言えば単純に、悠理が健全な男子高校生であるからだ。しかも、少女ではなるが一応女の裸なぞ見たことなどあるはずがない奥手のへたれ少年である。

 女以外の相手は出来るのだが、どうにも麻理ともう1人を除いた女の子の相手はうまくできないのだ。

 なので女の裸は未知の領域、でもないこともないのだが。それでも、そんなものが目の前にあればどうなるか。マジマジと見るなどありえない。混乱するだけである。そう、こんな感じに。


「な!? ななななあなーーー!!!!???」

「アハハハハハ! アハァ」


 そんな悠理の様子をガイドは腹を抱えて見ている。

 その笑い方も非常にいやらしいものであったが、混乱中の悠理はまったく気がつかない。そんな余裕など無いのだ。結局、悠理が混乱から戻ってきたのはそれから10分も経った時であった。


「さあて、どうぞ、彼女のお手をお取りください。クククク」

「あ、ああ」


 まだ笑いが収まらないガイドと目を逸らしながらそろりそろりと少女に手に振れる悠理であった。

 その瞬間、世界が変わった。

 一際、少女が光輝いたかと思えば、それはすぐさま収まった。収まった時には、そこは見慣れた悠理の部屋だった。


「俺の部屋?」


 戻ってきたのかと思ったが、細部に違いがある。

 パソコンなどの良く使うもの、よく見るものは現実以上に鮮明であったが、殆ど使わないものなどは非常におぼろげな感じになっていた。

 そんな変化がなくとも、ガイドがいるだけでここがまだ元の部屋でないことがわかる。

 それに空間だけでなく、少女の方にも変化があった。

 一番の変化はだぼだぼの魔法使いが着るようなローブを着ている点と、寝惚けた雰囲気が消えており、しっかりと目を開いている点だろう。

 落ちついてみるとどこかで見たことがあるような少女であった。どこで見たのかはわからない。ただ、記憶の彼方に彼女と似た少女とどこか古めかしい場所で会っているような気がした。

 これは否定しようとしても、どういうわけか否定する気にはなれなかった。


「ここはあなたの記憶を見た彼女が作りだした世界。彼女はこれから成長し、世界は拡張を続けます。はい。つまり、彼女の成長と、この世界の拡張はあなたしだいです。はい。(まあ、そんな時間がいつまであるかわかりませんが)

 さて、今回は私が仕切りましょうかねぇ。彼女は生まれたてですので帰りの際に名づけると良いでしょう。加護は最初ですので言語と文字にでもしましょうかねぇ」


 ポンッという音が少女が手を合わせた音だとわかった時には、何かが悠理の中に入り込んでいた。決して不快なものではなくむしろ好ましいものだった。


「さあ、めくるめく冒険の世界へ。どうぞ、いってらっしゃいませー」


 その瞬間、風が吹きぬけた。


**********


 場所は移り変わりホテル【ホライゾン】バックグラウンド。

 裏側。世界の裏側と言っても差し支えはない場所。

 その関係者専用の通路――もとよりガイド以外に使用者はいない――をガイドは歩いてゆく。

 その足取りは軽い。もとより軽い足取りが更に軽くなっている。まるではねているかのように、滑稽に見える歩き方で通路を最奥まで歩いてゆく。

 そして、最奥のドアを空けて中に入る。

 そこは漆黒の空間。そこに浮かぶは7つの球体。これは始まりの七世界(セブンオブセブンス)と呼ばれるもの。世界そのものとも言えるもの。

 それだけではない。もう1人。いや、それを人と言って良いのかどうかはわからないが。そこに立つは漆黒の何か。何かわからないが何かだ。混沌としていた判別がつかない。むしろ混沌その物と言ってもよい。

 ガイドはその存在に恭しく礼をした。そこに今までの滑稽な様子はない。

 ただ、表情は変わらない。今にも引き裂けそうなほど、口元を吊り上げたニヤリとした不気味な笑顔をしている。むしろ、前よりも酷いくらいだ。

 そして、心底楽しそうに言う。


「××××様、ついに規定人数まであともう少しとなりました。

 長かったですねぇ。はい。ああ、先ほどの方はここへ土足で上がりこんできた彼の息子ですよ。良く似ていらっしゃるようで。

 あの忌々しい眼がそっくりでしたよ。別世界のことを何一つ恐れていない不快極まりない眼がねぇ」

『××××××××』


 混沌とした存在が何かガイドに言うが、唸り声のようなもので何を言っているのかはわからない。だが、ガイドにはしっかりと聞こえたようで、内容もしっかりと把握しているようであった。


「はい。残りも即刻。はい」


 それだけ言ってガイドは部屋を出た。


「さぁて、忙しいですねぇ。はい。忙しくなりますねぇ」


 ククククと、そんなガイドの笑い声が嫌に通路に響き渡った。


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